青年よ!人生の土台を作り、根を深く張れ!
西の国に一人の大金持ちがいました。その家は二階建ての立派な邸でその豪華さは他に並ぶものがありませんでした。
ある時、その大金持ちに東の国の大金持ちから招待があり、邸に招かれました。するとどうでしょう。東の国の大金持ちの邸は四階建ての立派な邸で、その豪華さは自分の邸をはるかに上回っていました。西の国の大金持ちはあのような立派な邸を造れる大工はいないかと探しました。すると国一番の腕前といわれる大工が邸に連れてこられました。西の国の金持ちは「お金はいくらでも出すから、私の邸をあのような立派な邸にしてくれ」と頼みました。大工は「わかりました」とさっそく工事にとりかかりました。
西の国の大金持ちは、4~5日たって様子を見に行きました。すると大工たちは、一生懸命に地面を掘っていました。「お前たちは一体何をしているんだ。わたしは、邸を四階建てにしてほしいと言ったが地面を掘ってくれとは頼んでいない。今ある二階建ての上に三階と四階を作ればいいんだ!!」
大工は答えました。「四階建ての建物には、それに見合った土台が必要です。あなたがおっしゃるような建物は、地震や強風には耐えられず、わたしは後の世まで笑いものになるでしょう。」そういって大工は立ち去ってしまいました。
ともすれば、私たちは眼に見えるところだけに心を奪われがちですが、高いビルを建てるには、それに見合った基礎工事が必要なように、目には見えないところでしっかりと土台を作ることこそ大切なのです。
ロシアは、国土の約65%が永久凍土で、世界有数の寒冷地であるロシア・シベリア東部の人口約30万人のヤクーツクでは、地球温暖化の影響を受けて永久凍土が危険なレベルにまで解け始めています。
古い建物の建設時は、温暖化については全く考慮されておらず、1960年代の建築基準では、支柱は永久凍土層の6メートルの深さまで掘ることが定められていました。しかし、温暖化が進んだ今では、この深さでは不十分となり、ひびだらけの建物や、既に取り壊された建物もあります。
アパートを支える梁が沈下し、建物全体が不安定になっているのです。地面が凍っているのを前提に建物をたてたため、解けてしまえば道路も建物も沈んでしまうでしょう。「砂上の楼閣」ならぬ「氷上の楼閣」です。
皿の上に乗った豆腐を思い浮かべてみてください。その上に、水の入ったグラスを置いても、豆腐はグラスの重さに耐えきれず、崩れてしまいます。しかし、豆腐に皿まで届くように垂直に4本の竹ぐしを刺して、その上に水の入ったグラスを置くと、豆腐は崩れることなく、グラスを支えることができます。シベリアでも、この皿のような固い地盤まで、強固な杭基礎を打ち込んでいればよかったのです。
原点回帰というのは、時間の経過とともに、最初の目的や志をもう一度そこに立ち返って見直すことですが、基礎というのは、完成した建物からは見えなくても、いつ如何なる時も基礎は働き機能しているのです。これなしでは、如何なる成長もスキルアップも望めません。
南アフリカにアカシアの一種で「スウィート・ソーン」という木があります。この木は乾燥した砂漠に緑いっぱいに隆々と育つ不思議な木です。なぜなのでしょうか。それは「根を深く張っている」からなのです。水の乏しい砂漠にあって、少しでも地下水を吸い上げようとして、どんどん根を伸ばしていったのです。その根の長さは、何と50~65メートルに及ぶというのです。目に見えないところで、深く根を張っていくからこそ、砂漠のような苛酷な環境の中でもたくましく成長していけるのです。人間もまた同じです。誰もみていないところで、今この瞬間に、どれだけ土台を鍛えられるか、根を深く張れるか。そこにその人の真価が問われているといっていいでしょう。
私たちを行動に駆り立てるのは、確かに現在の関心事です。しかし、計画は未来の関心事です。怠け者は「いつかやる」といいながら、今、計画の一歩も実行しようとしません。今実行に移さないための言い訳ばかり考えていると知らず知らずのうちに、自分の未来の居場所は定まってしまうのです。中国唐代の大乗本生心地観経(だいじょうほんじょうしんじかんぎょう)に曰く「過去の因を知らんと欲せば其の現在の果を見よ 未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」と。
未来の建設は「今やる」べきなのです。今を犠牲にするのではありません。未来の建設に通じる生き方とは、目標を定め、それに向かって今精一杯基礎工事をやることなのです。たとえそれが棘の道であったとしても。青年期は、まさに人生の土台を作る時であり、最も大切な時期です。誰が見ていようといまいと、後5分、後5分と努力を惜しまなかった者の土台は、強固なものになっていくのです。
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