新卒一括採用の是非と、全員有期雇用化
10月になりますが、MXテレビでやっているモーニングCROSSに出演させていただいた際に、政府が経済団体に対して「卒業後3年以内は新卒扱いに」という依頼をしたニュースを扱いました。
番組内でTwitterなどを使いオピニオンをとってみると、「新卒一括採用なんて古いやり方廃止したほうがいい」みたいな意見が多数。
まぁ確かに新卒一括採用は令和でもやるのかよ、と思う部分もありますが、人材会社を経営したり、元新卒採用の人事経験者として考えてることをつらつらとしたためてみます。
新卒一括採用について僕の意見
僕個人は、日本の新卒一括採用制度は賛成の立場だったりします。
「新卒でしか」その会社に入れない、新卒の時の就活で失敗するとなかなか転職市場でも厳しい、、となってしまうのには反対ですが、それは新卒一括採用が悪いのではなく、「一回新卒で正社員としてどこかの会社に入れない人はダメ」といった判断を下してしまう中途採用基準の問題かな、と。中途なのに必要なスキルや経験以外の要素がふんだんに入ってしまっていることの問題だと思います。
正直、毎年4月に「一括」で採用する必要性はわかりませんが、新卒採用があることは少なくともいいことではないかと思っています。
新卒採用という未経験だけど、今後のポテンシャルに期待して採用する、という制度がなくなり、完全に中途と何も就業経験のない新卒が同じ土壌で比較された場合、わざわざ未経験者を好むという会社は多くないのではないか?と。(一部のエンジニアやデザイナーなどは関係ないかもですが、一部の話かな、と)
そうなると、シンプルに若者の失業率上がると思うんですよね。
実際に、新卒採用という概念がない国では若者の失業率は高かったりします。(軽く調べた感じ、韓国 26.8%、フランス 20% 、アメリカ 11%とか)
日本はコロナ禍でも失業率3.1%とかなり抑えられているのですが、その中で一番失業率高いのは15-24歳の若者です。次が25-34歳。
つまり景気が悪くなっている今のような状況では、経験/スキルのない若者から職を失っていくのです。
ロスジェネと呼ばれる世代が日本には存在するわけですが、
やはり不景気になると企業は採用を抑制します。その時に真っ先に採用がストップするのは「未経験者」の採用です。
実際に、弊社では常時100社くらいのベンチャー、スタートアップの採用業務を請け負ってますが、緊急事態宣言中でも「経験者、即戦力採用」はそこまで影響を受けず、「未経験、若手層」の採用は真っ先にストップしました。
新卒一括採用というのがなくなった場合、この若者が就職に苦戦するという状況がずーっと続いてしまうのではないかと思うのです。
確かに、時代に合うか合わないかと言われれば微妙ですが、経験やスキルがなくてもまず仕事につけて、入った会社で仕事をしていき経験やスキルが身についていく「新卒採用」は有益な制度ではないかと思っています。
(今のような正規、非正規で有利不利が変わってしまう雇用形態が残っている社会のままであれば、ですが)
正規と非正規の問題
もう1つ。ずっと言われている正規と非正規の問題についてです。
何が問題なんだっけ?というと「正社員優遇されすぎ」ということではないかなと。もう少し具体的にいうと、日本型雇用と言われる「終身雇用、年功序列」ですね。結局前からいた人に比べてどんなに優秀な若手が入ってもなかなか順番が回ってこない仕組みですし。
正社員のメリットとして
辞めさせられない、給与上がり続ける、一度あげた給与は下げにくい、非正規より福利厚生など待遇も良い
などが存在します。だからみんなこれに飛びついて離さないわけですよね。
例えば、正社員でずっと会社にいてくれていいです、でも一生年収は新卒の時のまま増えません、年収増やしたいなら契約社員になって1年契約で成果に基づいた給与制度の方に移行してください、といったら正社員を選ばない人は増えるのではないかな、と。
ただ、それでも安定した正社員でいたい人は一定数いるでしょうね。そのくらい、正社員(無期雇用)は個人にとってみると安心なんですよね。
「何かあった時にクビにできないから正社員なんか雇えない」という意見をおっしゃる経済学者の人もいます。
自分も不安定なスタートアップの経営者をやっていますが、全くそんなことは思いません。むしろ長くこの会社で安心して働きたいと思われるのはとても嬉しいことです。
「何かあった時にクビにできないから雇えない」などと真剣に思っている経営者がいたら、ただ無能なだけです。そういう会社は退場してもらって、そうじゃない事業が成長していて安心して働ける会社に移ったほうが社会のためです。
ちょっと話が飛びましたが、正社員(無期雇用)は非常に法律上強い立場にあります。
不安定な時代で、会社がどうなるかわからない時代だからこそ「解雇の規制緩和」を声高に叫ぶ人が多いわけですが、今の社会で解雇の規制緩和をやったら結局辞めさせられる順は「非正規」の人からになるんじゃないかな。
あとは、よくある40代とか50代以上の早期退職ですよね。
でも40-50代がなぜ早期退職の対象になるかというと、年齢とともに役職や給与が自動的に上がっていって、それを簡単に下げられないからです。パフォーマンスに対して支払っている金額が超えてしまうからですよね。とすると、先にやるべきは「解雇の規制緩和」ではなく「長く働いたら給与が増える、そしてそれは減らない」という謎の制度を変えられるようにすることではないですかね。(現実的になかなか難しいんでしょうが)
個人的な必要な策としては、法律上雇用形態を撤廃し、全員有期雇用に一本化することじゃないかなーと思ったりしています。
これをやると、
どうせ給与が上がることが保証されないなら、次の期間は今の会社と契約更新せずに、よりよい会社に行こうというインセンティブが個人に対して働くことになります。だから企業として優秀な人材を確保するためには、条件(給与など)を上げざるを得なくなるのでは?
今給与が低くても、長くいれば給与も上がるし、昇進もするという期待があるからその会社に留まる人もいるわけで、企業としてはそれを利用して賃金を低めに抑えた制度設計が成立してしまいます。ただ、全員有期雇用化するとこれが通用しなくはなります。
全員有期雇用化すると、契約期間ごとに会社を移るなども普通になってくるので、上述したような新卒の時に就活で失敗したとしても何度でもチャンスが巡ってきやすくなる可能性もある。
会社としては、
自分の会社に次も残ってもらうために環境の整備や適正給与の設定、仕事内容や事業自体の魅力を向上させないといけなくなる。それができない会社からは人が離れていく。
それでも全員が有期雇用だからこそ、一定期間を経て職場を移っていくのが当たり前なので常に新しい仕事は見つけやすい状態が作れるのではないか。
プロ野球選手は、
12球団しかない、つまり職場の数が限られているので成績を常に維持していないとどこにも属せない社会になりますが、僕たち一般人の仕事は違います。新しい会社や仕事は生まれていくし、これから仕事に対して人がたらない状態がずっと続きます。その中であれば、逆に雇用形態を撤廃し、正社員である特権をなくしてしまったほうが、多くの人が自分のやりたい仕事やチャレンジしたいこと、待遇の良い仕事に就けるチャンスが回ってくるのではないかなーと思ったりしています。
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