リモートワークでのオンボーディングノウハウ
2度目の緊急事態宣言が発出しましたね。
なかなかコロナウィルスの感染拡大が止まらないわけですが、前回の緊急事態宣言をきっかけにリモート中心になった会社もあるでしょうし、今回の件でやはりリモートでも働けるようにしておかなければ、と思った会社もあるのでないかと思います。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
僕が取締役をしている株式会社キャスターは創業以来、フルリモートワークで会社を運営してきました。2014年に創業して現在7期目ですが、現在は46都道府県16ヶ国で700名強のメンバーが働いています。(もちろん今もフルリモートです)
基本的に入社〜退職まで一回も対面で会わないことも珍しくなく、僕自身も対面で会ったことある社員は30名くらいです。
そんな「会わない」中で新しく入社したメンバーにどうやって馴染んでもらうか、どうやって早く立ち上がってもらうか、どうやって会社の文化を理解してもらうか、の試行錯誤をしてきました。
まだまだ改善すべきところはあるのですが、だいぶ確立してきたので、オンボーディングのノウハウをお伝えしようと思います。
まずオンボーディングには何があるか?
オンボーディングといってもさまざまなことを考えないといけません。ただ、新しく入社した人に対してやるべきオンボーディングは大きく分けると2つです。
1、業務のオンボーディング
2、文化/カルチャーのオンボーディング
この2つですね。
業務のオンボーディングとは、その人が配属された部署の仕事やその人に任された仕事を早くできるようにしてもらうため、より活躍してもらうためにするものです。
もう1つの文化/カルチャーのオンボーディングは、会社の文化に馴染んでもらったり孤独感を感じなかったり、会社の方向性やビジョンの理解などを通じて会社の一員として感じてもらうためのものだと思ってください。
業務のオンボーディング
業務のオンボーディングにおいて必要なこと。これは特段オフラインの時と変わりません。つまり業務のオンボーディングに課題を抱えている会社があるとすると、おそらく今までオフィスで対面で働いていた時もオンボーディングに失敗している可能性があるので改めてこの機会に見直してみるのがいいと思います。
業務のオンボーディングにおいてのポイントは「プログラム」と「責任者(メンター)の設定」の2つです。
入社1週間目ではここまでできるようになってもらう、
入社1ヶ月だとここ、入社3ヶ月目には...のようにできていて欲しいこととそれができているかどうかの判断基準を明文化しましょう。
そしてその達成と育成に責任を持つ人を明確に定めましょう、というある意味当たり前の話ですね。
社内のことなので詳しくは言えませんが、弊社では「入社3ヶ月で1人前になってもらう」という目標とその一人前の基準が事業ごと、ポジションごとに定められています。そして入社した1人1人に対してメンターがついており、メンターが設計されたプログラムに基づいて1つずつ課題をクリアしていってもらう、そして一人前になったかどうかをメンターが責任をもって判断するという仕組みです。
具体的に準備するものとして以下のようなものがあります
- 1人前の基準を決める(測定可能な目標にする)
- 入社して1週間でのGOAL、1ヶ月でのGOAL、3ヶ月でのGOALなど明確に「いつまで」に「何ができているべきか」を設定する(測定可能な目標にする)
- GOALを達成するために、いつ、何の業務を引き継ぐかなどどのタイミングでその業務に着手してもらうかを設定する
- 入社した人に対しての育成の責任者を決める
- その上で、わからないことで躓かないようにしたり、なかなか発言しにくいなどがないように以下を準備する
- 徹底的なドキュメント化
- 会社で働く上での心構え、考え方、組織図、ミッションなど
- 業務に必要なツールの使い方、チャットツールの使い方
- 業務で必要な知識やノウハウ
- 業務フローや業務上のルール
- 過去の検討事項や背景など「経過」も見えるようにしておく
- 1on1の実施
- 小さな躓きや戸惑い、不明点を解消するために実施
- 入社1週間は毎日、その後は週1など短時間でいいので頻度高く
- リモート環境ならではのマインドセット
- 入社初日のオリエンテーションで「察すること」
「察してもらう」ことを諦めてもらう
- 5分考えてわからなかったらすぐに言う、何でも言う、言ってはいけないことはないと伝える
- 情報はどこまでもオープンにすることを伝える
こう書くと細かいことまで含めてたくさんありますが、
多くの方と話すと抜け落ちてしまっているのは「リモート環境で働く上でのマインドセット」を最初にやるということ。
リモートワークでは物理的な姿が見えません。
なので、新しく入ってきた人が困っていても疲れていても業務過多でも気づかない可能性があります。それを解消するには本人に言ってもらわないといけません。
つまり、「大変なのに会社は察してくれない」は通用しないんです。だって見えないので。
だからこそ察してもらうことを期待するのはやめて、必ず発信すること、そして思っていること、考えていること、うまく伝えられなくてもいいので全部言ってもらうことをお願いしています。
またその発信がクローズドなところで行われていたら周りは気づけないかもしれませんし、必要な人に結局状況が届かないかもしれません。またリモートワークになった際の最大の敵は「疑心暗鬼」。
だからこそ、オープンな場所で言う。それをみんなが徹底することで「自分だけ知らない情報があるのでは?」「陰で何か行われているのでは?」という無駄な疑心暗鬼をなくすことが前提として大事になります。
もちろん、何でも言っても平気、困っていることを言っても怒られない、、などの「心理的安全性がある」ことは大前提です。
これがないのであれば、そもそもの会社組織やコミュニケーションのあり方自体を見直さないといけない、となります。
文化/カルチャーのオンボーディング
さて、業務のオンボーディングは基本的なことをしっかりやりましょう+リモートならではのマインドセットを初期にお伝えしましょう、なのですが、リモートならではで難しいのがこちらではないでしょうか。
会社の雰囲気やカルチャー、文化などが伝えきれない、
新しく入った人がそれを感じられずになかなかエンゲージメントが上がらない、、そんな課題を聞くこともあります。
僕自身もいろいろな会社から相談受けて、Slackなどに入らせてもらってたくさんの事例を見てきました。
そこから出ている結論は
「どの会社も圧倒的にコミュニケーションが少ない(特に仕事以外のコミュニケーションが少ない)」
「コミュニケーションが後から入った人から見えない」
もうこの2点につきます。
オフィスの中では、
①仕事の話(業務の指示など)
②ちょっとした壁打ちや相談など
③プライベートな雑談
というこの3つの要素の会話が入り乱れて行われていました。
なのでデスクで仕事をしていても周囲の会話は入ってくるし、仕事に関係ない話も頻度高くやっているので人となりを理解したり、話しかけやすい環境が作れたり、といったことができます。
ただ、今までお手伝いしたどの会社もそうなのですが、①の話はするんです。仕事をする上で必要なので。
ただ②とか③の会話が圧倒的に少ないんですよね。
正直、こんなに会話せずにどうやって仕事しているんだろう、と思ってしまうほどです。
例えば弊社の1つの事業本部内のSlackのアナリティクスを見ると
49名のアクティブメンバーで30日間のポスト数が30000はゆうに超えています。(今回年末年始休暇もあったので本来ならもう少し多いはず)
これでもZoomやdiscord使って会議しているものは含まれないので、もっともっとコミュニケーションはとっているだろうなと思います。
そして、もう1つ大事なこと。
それは会話やコミュニケーションが「見えること」そして「高頻度である」です。
オンボーディングの施策としてよくシャッフルランチをやってます!とか月1回の全社mtgやってます!とか、週1のメンタリングデーを入れてます!みたいな話を聞きます。
それはそれですごく大事なことですし、良い施策なので続けたほうがいいのですが、それだけではもったいないです。
なぜもったいないのか?
1つ目。
シャッフルランチをしたり、さまざまな部署の人との交流や普段話さない雑談やプライベートな会話をしていく機会はすごく大事です。
ただ、Zoom繋いでのランチ、とかオフラインで集まっての集会、だとせっかく話してた会話が「見えない」「残らない」んですよね。
せっかくいろいろな人の人となりが見えたり、楽しい会話やカルチャーがわかるような行事をしているのに、それがみんなの頭の中にあるだけで「見えるようになってない」「残っていない」。
だからあとから来る人は毎回その会がくるまでキャッチアップできないんです。
オフィスにいるときになんで文化やカルチャー、その会社らしさが伝わりやすかったかというと(それも本当なのか疑問ですがw)、物理的な姿が見えていたり声が聞こえていたので感じることができてたからです。
ただ、リモートではそれが「感じられません」。
だからこそどれだけ多くの会話、コミュニケーションが「見える」「残る」ようにする必要があります。
具体的にいうと、チャットでもっと雑談含めて会話しましょう、ですね。
2つ目。
単純に仕事以外の話をする頻度が少なすぎます。
月1のランチなどだと全然足らない。そういった「特別な」タイミングをどう作るか?ではなく、日頃仕事をしている中でどれだけ頻度高く②や③の会話ができるか、それがチャットなど見えるところで行われているか、がとても大事です。
よくリモートになると「横のつながりができにくい」と話されることが多いですが、これも結局Slack等のチャットでオープンな場で複数部署の人が話したり、雑談などが行われていれば改善できることも多いです。
つまりせっかく仕事以外の話をして、
人となりや会社のこと、他部署のこと、どんな雰囲気なのか、などがわかる絶好の機会なのに、その頻度が少なく、かつZoomなどで実施している。
後から入ってきた人が「見えない」ようにしてしまっているんですよね。同じような話ですが、どれだけチャットでもそのような会話量ができているかは大きなポイントだと思います。
そういったことを促進するためにやっていることを一部ご紹介します。
- 5分迷ったら話す、なんでも伝える、などマインドセット
- チャンネルの作り方
- 人事や経営上でまずいもの以外は基本オープンチャット
- 会話が起きる仕組み
- 雑談チャンネルを作る
- 全体での雑談用の #cafeteria チャンネル
- テーマごとのチャンネル(#papamama #fitness #book #cats など)
- current_XX(名前)を全員持って、自分専用チャンネルとして好きな
こと呟く
- bot系
- geekbot使って簡単な日報かけるように
- Collaで普段話さないような質問への回答を楽しむ
- 日報書いている文化の会社は、日報の頭に「今のお気持ち」から書く
- 誰かが話したら気軽に反応する、スタンプ押す(これ大事!)
- スタンプ職人が出現するので、どんどん新しいスタンプ作ってもらう
- mtg前の10分を雑談に使う
- help othersといってその週に頑張ってた人にありがとうの言葉を送る
などなど、
とにかく会話が発生する、誰かが勇気を持って呟いても無視されない、反応があるような仕掛けを細かくたくさんしていくことがポイントです。
ここに書ききれなかったポイントもありますし、
会社によって浸透のさせ方、課題なども違うと思いますので、リモートでのオンボーディングやカルチャー浸透に課題があるなーと思った方はぜひお気軽にTwitterのDMもしくはFacebookのメッセンジャーでご連絡ください!
(弊社のノウハウを元に一緒にオンボーディングプログラムを作って、実行まで支援するサービスもやっております。)
また最後に宣伝ですが、僕が書いた本「会社にはいかない」にもリモートワーク のコミュニケーションについて話してますのでよければご一読ください!
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