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宝塚花組「はいからさんが通る」の楽曲のDTMによる再現

昨年、宝塚歌劇団花組で「はいからさんが通る」が公演されました。
同名の漫画を原作としたミュージカルでしたが、内容の素晴らしさはもちろん、特に音楽が印象的でした。

今回、その中でも気に入っている「My Dear」を耳コピで再現してみましたので、ご紹介します。

演奏動画

今回作成した楽曲「My Dear」の動画はこちらです。
宝塚花組「はいからさんが通る」より「MyDear」

2020年の公演を元に、聴き取れる音をすべて再現したつもりです。

作曲ソフトはABILITY3.0、音源は付属のものとSample Tank 4.0 MAXを組み合わせました。演奏画面はMIDITrailで作成したものを合成しています。

前回の記事の通り、私はDAWの初心者なので、初めに購入する音源として、ひとまずSample Tankを購入しました。
Sample Tank、多くの楽器を手軽に利用できるという評判通りでしたが、作っているうちにもっと高音質でリアルな音を求めてしまうのは世の常……。
ソフトウェア音源の沼も相当に深そうですので、いったんこの辺りで公開することにします。

「はいからさんが通る」My Dear

宝塚の「はいからさんが通る」は、2017年と2020年の2回、公演されました。
「My Dear」は、2017年の初演では鳳月 杏さんが、2020年の第2回公演では瀬戸かずやさんが物語のクライマックスシーンで歌っています。
どちらも同じ曲ですが、第2回公演では曲名が「冬星の歌」から「My Dear」となって、曲の存在感が高まっているあたり、興味深いところです。

原曲は音楽配信サイトで購入できます。
・2017年 初演(moramusic.jp) Blu-ray(amazon
・2020年 第2回公演(moramusic.jp) DVD/Blu-ray(amazon

「はいからさんが通る」の本編は2020年のオンライン配信で観劇しましたが、この曲には本当に感動しました。

クライマックスで高まった感情を舞台袖で歌っている間に、舞台中央のセットがラストシーンのものに入れ替わり、そのまま曲の後奏部分をBGMとしながら舞台中央で物語のエピローグが展開されます。
演者さん、曲、演出、舞台セットなど、すべての要素が一体となったミュージカルの凄さを教えてくれたのがこの曲でした。

曲の詳細を楽しむ

耳コピをするには曲の隅々まで何十回、何百回と聴く必要があります。
私は音楽の素人ですが、それでも、詳しく聴けば聴くほど色々な仕掛けが見えてきます。

例えば、初演「冬星の歌」から第2回公演「My Dear」で様々な変更が加えられていることに気づきます。
調が変更されていたり(歌い手さんの得意な音域に合わせた?)、歌の最後の伴奏がピアノと弦楽器中心から、木管楽器を次々と切り替える構成に変更されていたり(雰囲気の壮大さよりも、様々な想いを複数の楽器に託した表現にした?)、ウィンドチャイムのタイミングが転調前主体から転調後主体に変更されていたり(このほうがより盛り上がる?)……。
初演と第2回公演が同じ曲であっても、万全の状態にしたことがうかがえます。

これらは、意図的に聴き比べたのではなく、「My Dear」を隅々まで再現した後に「冬星の歌」を聴いて気づいた「違和感」からです。
気づいたときは採譜ミスかとドキドキしますが、比べるとやっぱり違う……ような気がするのは音響設定のせいではないですよね!?

曲の違い以外にも、複雑な音を奏でる中音域のストリングスや、動画の57秒付近からかすかに聞こえるアコースティックギターなど(このギターも左チャンネルから右チャンネル主体に変更されている)、聴いていて癖になりそうな仕掛けも次々と見つかります。

耳コピによる全パートの採譜、時間はかかりますが、好きな曲をより深く知るのには最適です。

私の推し

宝塚ファンの間では特定の演者さんやキャラクターを贔屓として推す文化があるようです。

もちろん、今回の曲を歌っている編集長、瀬戸かずやさんも素敵ですが(生で観劇する前に退団されたのが残念)、私の推しは作曲者の藤間仁さんなのかもしれません。

JASRACのデータベース(J-WID)によると、はいからさんでは「My Dear」のほか、オープニング曲「大正浪漫恋歌」とパレード(編曲)も担当されています。

これらの曲も好きで、車の運転中にも聴いています。
手動でリピートしなくてもよいよう、大正浪漫恋歌とパレードともに、初演と第2回公演をそれぞれ5回ずつリピート……。事実上、同じ曲が20回連続で流れる変態仕様なので、同乗者がいるときには決して流せません。

ならばと、作曲者で宝塚の作曲例を調べると、月組「アリスの恋人」と、雪組「Shall we ダンス?」などの曲が見つかりました。
これらの作品は舞台の概要も把握していませんが、美しく軽快な曲調ははいからさんにも通じるところがあり、お気に入りの1つになりました。

宝塚歌劇での作曲者は、演者や脚本家の存在感に比べると、意識する機会が少ない印象ですが、JASRACのデータベースで調べてみると新しい発見があるかもしれません。

JASRACとYouTubeの利用許諾契約

今回、耳コピに至ったのは、YouTubeの利用許諾契約の情報にたどり着いたことによります。

これはJASRACが管理している楽曲に対して、「自ら演奏または製作した」動画を、一定の条件で、特別な手続きなしで公開できるというものです。使用料はYouTubeから権利者に支払われるとのことです。

YouTubeで有名曲を演奏している動画を見かけた際、著作権的に大丈夫かと思っていたのですが、このルールに基づくのかと、納得できたのでした。

動画の公開条件には「演奏」のほか「製作」が含まれていることから、DTMに関しても問題ないと解釈していますが、もし何か指摘事項がありましたらコメントいただけると助かります。

最後に

今回、久しぶりに本格的な耳コピにチャレンジしました。
細かな音を重ねていくにつれて曲が重厚になっていく様子や、できあがった部分が再生画面を伴って演奏される様子は何度経験しても良いものです。
他のジャンルの曲にはない良さがある宝塚楽曲を、このような形で存分に楽しめたのも良かったと思います。

YouTubeの包括利用許諾契約と良い曲との出会いに感謝しつつ、次回も何か作ってみたいところです。