80才爺、肩の痛みについて語る、若い鍼灸師に伝言。
先週、肩が痛くて苦しんでいる人を診療したので、紹介します。
肩の痛みには、種類がいろいろあります。
今日の患者は、ゴルフのし過ぎで肩が1年以上痛い人でした。
62才で、負けず嫌いで、いつも勝ちたい性格です。
すでに、じっとしていても肩が痛く、腕を持ち上げられない人でした。
いつも勝ちたい性格は、怪我しやすいですよね〜
アメリカの病院では、肩が痛いといっても最初は痛み止めの薬だけです。
それで何週間も治らないと言うと、検査しましょうと言われます。
MRI検査をするにためには、保険会社が定めた順序を経なければなりません。
MRIだけで10万円以上かかります。
それで、痛む箇所が特定されると、硬膜外注射(Epidural steroid injection)をする場合があります。費用は、日本円に換算すると一回の注射で10万から20万円かかります。しかし、その間、医師は、一度も患者を触りません。
お金にならないことは、まず、しませんね。
昔、私がサンフランシスコにいた頃、セントメアリー病院の循環器科の部長にギャレットリーという器用な医師がいました。彼は、痛みを治すのが趣味みたいな人で、肩が痛い人が来ると、細い針の注射で麻酔剤をちょこっと打って、はい完了という医師がいました。心臓循環器の患者じゃないので、病院の正規の窓口を通さずに、彼個人の事務室に患者を連れて行くと、パッと見てパッと注射をして、1万円でやっていました。
簡単に痛みを止めるだけなら、これで十分です。
鍼灸師の場合、どこが痛いですかと聞いて、軽い症状の場合、痛い場所に鍼を打つて済む場合もあります。
何ヶ月も、または、何年も痛くて、肩が上がらないという患者もいます。この場合は、そう簡単ではありません。
でも、軽傷の人も、肩が上がらない重症の人も、同じように、ここが痛いと、肩の1箇所を示すだけですが、
人間は、柔軟に痛みを軽減するように自動修正しています。
でも、痛む時には、その修正が間に合わない状態なんです。
故に痛みの原因は、いくつも、何箇所もあります。
でも、患者は1箇所が痛いとだけ言うのです。
重症の場合、痛い箇所だけに鍼をすると、再び痛くなります。
根本原因が取り除かれていないからです。
アメリカにAnatomy of Movementと言う素晴らしい本があります。身体を動かした場合の関連する筋肉の関連、流れを解説した本です。著者は、ダンスの動きを研究して、その筋肉と筋の関連を研究した人です。
例えば、ゴルファーが左肩が痛いと言う場合、左肩、左肩甲骨、左背筋、右の腰筋、右足の筋肉と繋がっています。左上半身から右下半身への関連があります。
ゴルフの場合、回転しながら打つので、当然そうなります。
その流れの筋肉をつまんだり、押したりして、痛む箇所、押すと全体の痛みが消える所を確認して、軽く鍼を打って、全体の緊張状態を見ます。
そして、決定的に痛みと関連している箇所に皮内鍼(置き針)をします。
東洋医学では、常に全体像や体質を見ながら治療するのですが、このAnatomy of Movementと言う本には、違った観点から見る方法を学びました。
と言うわけで、このゴルファーの治療をしたのですが、その後日談があります。
急に、肩の調子が良くなったので、腕立て伏せを30回連続してやったぞ、と言うわけです。
当然、また痛くなります。
負けず嫌いは、待てないのですね〜。
肩の治療はできますが、性格の治療は難しいですね〜。