第十二話 雪解け

家族で楽しく過ごすお正月が終わると、僕が苦手なスキー大会がある。
平日は毎日放課後に練習をして、甘い紅茶を飲む。
そして、大会が近づくとスキーのワックスがけが本格的になる。このワックスがとても高いし、種類がたくさんあるので僕は家にあるろうそくを使っていた。案外これが一番滑ると思う。

ついに、スキー大会本番がやってきた。僕は一番遅かったのでいつもスタートは前走者の先輩の後の、一番スタートだった。

いつものようにタイムなど全く気にせず、景色を見ながら滑っていく。前走者の先輩が、

「もっと体を大きく使って、頑張れ~~!!」

と声をかけてくれるが、僕は気にせず滑っていた。途中で最大の難所の急で長い下り坂がある。僕は高いところがとっても怖いので、ここが一番嫌だった。クロスカントリーはコースがついているから、外れずに坂を滑るのがとっても怖かった。だからいつも、スキー板に座り込みお尻で滑り降りていた。コースが壊れるので、みんな迷惑していたと思う。

僕はこの頃は、ぽっちゃり体型でスポーツが得意じゃなく水泳大会や運動会、スキー大会などの競争はとっても苦手だった。

苦手なスキー大会が終わると、少しずつ雪が解け始める。この雪解けシーズンは、川魚を捕るのも最高だし、山菜も出始めるのでとっても楽しみにしていた。

冬の間は雪で探検に行けないので、僕は探検クラブの代わりに先生と将棋を毎日休み時間に打っていた。その先生は、機嫌が良かったり悪かったりが激しくて悪い日はとっても怖い男の先生だった。でもいくら機嫌が悪い日でも、僕が休み時間に将棋盤を持って行くといつでも相手になってくれた。
しかも強くて僕は一度も勝てずにいた。


ある日、先生が将棋大会のパンフレットを持ってきて出てみないかと誘われた。僕は、先生には勝てなかったが友達の中では誰にも負けなかったので出場することにした。大会に一人で行き、最初の相手はなんと自分よりずっと小さい小学1年生の子だった。
しかし僕は、まったく歯が立たずに完敗した。聞くとその子は、将棋の教室でずっと教わっているそうだった。そこで僕は初めて悔しさを知った。
それ以来僕は、何でも全力でやってみようと思えるようになった。

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