見出し画像

逃避の散歩 14.日暮里・舎人ライナー

そういえば、生まれてこの方、日暮里・舎人ライナーに乗ったことがない。

思い立って検索をしてみた。

全13駅で運行距離が9.7キロメートル、道のりはほぼ直線。

うん、端から端まで歩いてみるか。2時間以内でいけるだろう。

そんなわけで、自分は始発駅である日暮里駅の下にいる。

画像2

さっそく、線路が右折する西日暮里二丁目交差点を渡り、線路沿いに尾久橋通りを歩いていく。道路案内標識もあるので、まず間違えることはない。

おっと、脳内BGMを忘れてたな。

スタートは『トゥルー・ロマンス』の『You’re So Cool』で。序盤で主人公が彼女を連れて映画館へデートに行き、『激突! 殺人拳』を観てサニー・チバ(千葉真一)の素晴らしさを力説するシーンが好き。

画像2

まずはJR常磐線の高架下を抜けていく。

こういう歩道よりも掘り下げられたアンダーパスを見ると、台風などの大雨が発生する状況で冠水したときは大変そうだなといつも思う。

常磐線って、いままで指で数え切れるほどしか乗ったことがないな。

画像7

そして、京成線の高架下を潜り抜ける。

そういえば、京成線も滅多に乗らないなあ。何年か前に柴又行った時に初めて使ったくらいだ。

画像4

スタートから6分、西日暮里五丁目交差点にある西日暮里駅南口前に着き、ここで早速長い信号待ちの洗礼を受ける。

ここから『ダークナイト』より『A Watchful Gurdian』に切り替える。この辺りの雰囲気はかなり美化して見れば『バットマン ビギンズ』のゴッサムだが、ノーランの『バットマン』3部作は『ダークナイト』がダントツで好きなので。

横断歩道を渡り、東口を通過するとその先にはJRの貨物線路が架かった陸橋が見える。だが、手前にアンダーパスへ行ける横断歩道を発見。

画像5

ちなみに、くぐる陸橋の名前は片瀬南陸橋という。

これから、自分の好きな越境区域に突入だ。

西日暮里六丁目交差点を越え、都営バスの西日暮里六丁目停留所すぐの角のあたりから、田端新町一丁目交差点あたりまで、北区を通り抜ける。

画像6

西日暮里六丁目停留所を通り抜け、北区へ越境する。気持ちが昂る。

北区に入ってすぐ、おもむろに見た道路案内標識の文字を見て自分は戦慄を覚える。

画像7

明治通り、だと?

かつて都電荒川線を通ったときに何度も遭遇した道じゃないか。別に明治通りに対して恨みがあるわけではないが、「またお前か」感が今の自分を支配している。

画像8

田端新町一丁目交差点で信号待ちをしている時に、ちょっと傾いた案内板を見る。この目の前を通っているのが明治通りで、今いる位置から右が三ノ輪なので、左へずっと進むと都電荒川線の梶原停留所になるわけか。

信号が青に変わり、横断歩道を越えれば再び荒川区に戻る。

短い間だったがあばよ、北区。

穏やかな曲に切り替えるか。『Hidden Figures(邦題:ドリーム)』より『Katherine』。アメリカの「マーキュリー計画」の頃の話なので、『ライトスタッフ』が好きな人にはお勧め。原作を読むと更に面白さが増す。

画像9

スタートから21分経過、あか小学校前駅を通過。

読み仮名がなければ、「『あかつち』小学校」とうっかり言い出しそうな駅名だ。

信号待ちもあるが、距離のわりに結構時間が掛かったなという印象だ。

信号が変わり、横断歩道を越えたあたりで『バックドラフト』より『Show Me Your Firetruck』に。某TV番組でオープニング曲に使われていたのを覚えている人はもう年寄りになったことを自覚していい。

画像10

スタートから27分経過、熊野前駅を通過。

この駅名ということは……

画像11

熊野前停留所! 都電荒川線の熊野前停留所じゃないか!

都電荒川線全線を歩いて以来の再会だ。

画像12

熊野前交差点を渡り、5分進んだところで待ち構えていたのは自転車用斜路と歩行者用階段だった。

画像13

「おぐばししゃろかいだん」と書かれた名称板がついた階段を上ると、そこは隅田川を渡る尾久橋だった。

この橋で足立区へ越境するのだ。

ここから同じく『バックドラフト』より『Buen It All』に変更。この曲もいろんなTV番組で使われていたよな。余計な話だけど、昔ハリウッドのユニバーサル・スタジオに行ってこの作品のアトラクションを見たことがあって、行った時期が春先だったけど、中が夏並みに暑かった。

画像15

右側に見える日暮里・舎人ライナーの線路と隅田川を眺めながら歩を進める。よく歩く浅草から築地あたりまでの建物や高速道路がひしめく川沿いもいいが、この飾り気のない隅田川の風景も新鮮で良い。

短い付き合いだったな荒川区。ちょいとお邪魔させてもらうぜ足立区。

画像14

スタートから35分経過、足立だい駅を通過。

最初の交差点で信号待ちしている間、のどかな風景が目に入った。

荒川だ。足立区を流れているけど一級河川の荒川だ。

画像16

そして、道に視線を戻すと先には橋がある。

横断歩道を渡ってすぐ、橋名板が目に入った。

画像17

さっき渡った横断歩道のある交差点の名前は扇大橋南。

これから荒川を越えて(自分にとって)未知の領域へと踏み込んでいく。

ここで『レインマン』のメインテーマに切り替えよう。自分はジャンルとしてロードムービーは好きなほうで、そのきっかけは多分この作品。

画像18

河川敷に「日暮里・舎人ライナー」って書かれているけど、何に対して自己主張しようとしているのか。

画像19

扇大橋の端に来た。首都高速中央環状線が見える。

先に見える横断歩道を渡って陸橋を下り、先へ進む。

画像20

スタートから46分経過、扇大橋駅を通過。

ひらがな含めて、この日「扇大橋」の字を5回見ている。

なんか、選挙の候補が名前を連呼しているかのような自己主張にも似たようなくどさを感じた。

扇大橋を越えてからは、ひたすら特徴のない直線をひたすら進んでいる。つまらない道だと思う人もいるだろうが、自分みたいにただ歩く方に主眼を置いている者にはこういう道の方がありがたい。

画像21

スタートから52分経過、こう駅を通過。

この時点で、全路線半分以上の駅までたどり着いたことになる。

また、地元でもない者にとって、読み仮名を振らなければ別の読み方をされてもおかしくない駅名だ。

画像22

スタートから58分経過、こうほく駅を通過。

本当に別の読み方をされそうな駅名が連続している。

そういえば、尾久橋を通過したので、道路案内標識が「草加 舎人」に変わっている。もう埼玉県との境まで近づいているのか。そして、「環七通り」の文字。

ここらで脳内BGMを『ダンケルク』より『Supermaline』に。いわずもがな、イギリスの戦闘機スピットファイアがドイツの戦闘機メッサーシュミットと爆撃機スツーカにドッグファイトを仕掛けるシーンの曲。IMAXフルサイズ版で観るこのシーンは本当に迫力があった。

画像30

先に見える陸橋が通っているのが環状七号線か。

環状七号線は、せいぜい北は練馬の小竹から南は目黒の碑文谷あたりまでしか歩いたことがないので、こんな機会でもないと、この辺りまで通っている実感がわかない。

それに、左右の「神谷」と「梅島」という見慣れない地名で軽く戸惑う。都内を歩いているだけなのに、非日常の世界に来てしまったような気分だ。

この交差点を越えたあたりで、おもむろに時計を見ると、スタートから1時間が経過していた。

画像24

スタートから1時間7分、西新井薬師西駅を通過。

左右の「西」がかっのように「新井薬師」を閉じているような、駅名の字面が妙に面白いなと思いながら先を進む。

画像25

スタートから1時間16分、ざい駅を通過。

また読み方がわかりづらい駅名だなと思いながら先へ進む。

それから6分後のこと。

画像26

いままで羅列していた建物が消え、その先と道路を隔てた左側には木々が見える。それに対し右側の金網の柵から無造作に雑草が生えていて、一見ただの手付かずな更地なのかと思ってしまうが、奥を見ると整備はされているようだ。

たぶん、ここが舎人公園だろう。

ここで脳内BGMを『インターステラー』より『Cornfield Chase』に。作品の序盤、偶然見つけたインド空軍のドローンを追跡するシーンの曲だ。

舎人公園交差点で信号待ちの間に、背後にある案内図を見て、さっきの金網の更地はまだ整備中の区画なのを知る。

画像27

スタートから1時間25分、舎人公園交差点の横断歩道を渡り、舎人公園駅を通過。

残りは2駅。

7分くらい歩いて舎人公園を抜けると、辺りは建物が羅列している風景に戻った。

画像28

スタートから1時間36分舎人駅を通過。

遂に、次は終点だ。

ここで追い込みの脳内BGMとして『ラッシュ/プライドと友情』より『Lost but Won』。クライマックスの「F1世界選手権イン・ジャパン(日本グランプリ)」で流れる曲だ。

画像30

スタートから1時間47分、終点のぬまだいしんすい公園に到着。

締めくくり曲は『グラディエーター』より『Now We Are Free』にしよう。作品の最後に流れる曲で、とにかくやり遂げた感は出る。

念のため、先に線路がないかを確認する。

画像30

よかった、先にはもうない。

一応検索してみると、あと300メートルほどで埼玉県だ。行かないけど。

さあ、帰りは日暮里・舎人ライナーの初搭乗を楽しむとするか。

おまけ

画像31

日暮里に着いたら、少し物足りなさを感じたので、駒込まで歩いた。

画像32
画像33