逃避の散歩 34.西武多摩川線
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吉祥寺駅からJR中央線の線路沿いを歩き、解体が決まっている三鷹跨線人道橋に来ている。渡るのは初めてだ。
いつもJR中央線の車窓から見ていたが、よく90年以上も維持してきたなと思う。解体後も一部は残されるらしい。
そのまま電車庫通りを歩き、JR線の高架下を通る新武蔵境通りの横断歩道を渡ったところで武蔵野市に入る。そのまま線路沿いに歩いていく。
JR武蔵境駅の南口に来た。電車で降りたことはないが、この周辺までは何度か歩いたり、自転車で通ったりしている。
大きな白地の駅名が主張している出入口の奥に西武多摩川線の駅名板が控えめに見える。そういえば、この駅もJR中央線の車窓から見ているだけだが、西武多摩川線も乗ったことがないんだよな。
よし、歩いてみるか。
南口から左折して線路沿いに少し歩き、線名がさっきの駅名板よりも大きく記されているところに来た。ここをスタート地点にしよう。
今回は下調べをしていないので、困ったら容赦なくグーグルマップを使用する方針で行く。
まずはこのまま道なりに右側の線路を意識しながら歩く。6分経過したところで高架から左折し、線路の沿道が見えてきた。
単線の線路を眺めながら進むと、いきなり沿道が狭くなる。どのくらい狭いかというと、自転車が対向から来たら引き返さなければならないくらい。
その狭い沿道を抜けたところで最初の踏切に来た。早速グーグルマップを見て、踏切を越えるのを選択。最初の角を左折して二つ目の角を左折。線路と沿道が見えてきたのでそっちへ進む。
あ……
パンダさんどうも。
沿道に入ってほどなく、踏切に差し掛かる。ここでまたグーグルマップを見るが、ここで頭が混乱する。というのも、複雑な迷路のように見えてしまい、そこが最短ルートになるのか皆目見当がつかなくなる。ここで足を止めて悩み始める。
とりあえず、踏切は渡らずに右折し、信号付きの横断歩道がある6つ目の角を左折。そして都営の集合住宅(アパートらしい)が5軒並ぶ通りに出る。
4軒目の建物の角を入り、少し進んで横断歩道が見えたら左折する。すると踏切が見えてきた。今度は渡ってすぐに右折。徐々に線路から離れていくように見える。最初の十字路を右折すると線路が見えてきたのでそっちへ移動すると、電車が止まっているのが見える。
そのまま道なり進むと小さなロータリーと商店街に出たところで振り返ると踏切があることに気づく。視線の先に駅舎がある。通過の証拠として改札口前の撮影をしよう。
スタートから26分経過、最初の駅である新小金井駅に到着。迷って立ち往生したのは痛かった。それに、こっち側にしか改札口がないんだったら、2つ前の踏切を渡らなくてよかったじゃないか。
気を取り直して、グーグルマップで次の駅までの道のりを検索する。今度は道のりは楽そうだ。さっき渡った駅前の踏切を戻り商店街を抜けて連雀通りに出て、新小金井駅入口交差点の横断歩道を渡って右折、線路沿いに出る。そのまましばらくは線路沿いの住宅街を直進するだけでいいようだ。
そして、突き当たったところで右折すると線路の沿道に出てすぐの35分経過で車輪止めのついた下り坂の歩道に出る。
坂を下ると左側には「野川公園北門」と書かれた名称板のある都立野川公園の出入り門が見える。
当然だが、目の前の二枚橋の下を流れているのは野川。そしてグーグルマップによると、この橋を越えたあたりから調布市に入る。なぜそれがわかるのかというと、いま右側の線路がある土手側にある「調布クリーンセンター」という粗大ごみ処理場を通過したからだ。
そこに差し掛かるところまで緩やかな上りだったが、通過したところで少し下り、広い道路に出る。
この道、なぜか見覚えがある。もしかしたらと思い、信号待ちの間にグーグルマップで位置を確認すると、思った通りだった。東八道路である。
京王線上北沢駅の北側の甲州街道から接続していて、京王井の頭線久我山駅の前を通る人見街道と合流する幅の広い道路だ。2020年、最初の緊急事態宣言が発出したときのことだ。あまりに暇すぎて休みの日に自転車で立川まで走ったときにこの辺りを通過したことを思い出した。ということは、西部玉川線の線路下を通過していたのか。
さらに先の進路を確認していると、面白いことに気づく。この横断歩道を渡り公園に沿って進む道は調布市と府中市の境にある。いつものことながら、境を歩くと不思議と胸が躍る。
41分経過。境の道が左右に分岐している。線路のある方向に進むこともあり、ここで右側に入り、府中市へ。
線路の沿道に出ると、左側から線香の臭いでむせる。視線をそっちへ向けると寺の墓地だ。そういえば、線路を渡った少し先に多磨霊園があるはずだ。与謝野晶子、山本五十六、岡本太郎、長谷川町子、西村晃など有名人の墓があることで知られている。
そこから二つ目の踏切を越えたところで右側に駅舎が見えてきた。
50分経過、多磨駅の前を通過。
そのまま先へ進もう。最初の踏切を渡り、最初の角を左折。ときどき住宅の間や畑の先に見える線路の位置を確認しながら真っ直ぐ進み、ただ静かな時間が流れる。
1時間経過したところで高架下を潜り抜ける。グーグルマップによると、この上を通っているのは甲州街道だ。先に踏切が見える。
その踏切を渡るところで十数メートル先には次の踏切が、そしてその先には駅舎が見えている。次の信号を渡って線路沿いに進み、右に折れてすぐ左折する。
1時間6分経過したところで白糸台駅前を通過。
すでに路線の半分以上歩き、残るは2駅だ。再び、グーグルマップで進路を確認。線路に沿うようなルートを取れそうだが、最初の新小金井駅までの間で迷ってしまったことを思い出し、確実にわかりやすく行けるルートを模索する。
駅の横にある自転車駐車場の方へ曲がり、最初の踏切に差し掛かる。ここで電車の折り返し運転のため、遮断桿が上がるまで少し長めに待つ。
1時間10分が経過し、踏切を渡って見えてきたのは京王線の線路だ。この下を通り、先へ進む。
そういえば、年に数度は京王線に乗ってこの辺りを通過することがあるが、駅を降りたことはなかった。やっぱり、普段歩くことがない場所をあえて歩くのは楽しい。ガード下を抜けると蛇行した下り坂になり、下りたところで広めの道に出て、目測で200メートルほど右側に線路が見える。
特に案内がないので確認は取れていないが、この道はグーグルマップによると6中通りというらしい。
1時間18分経過したところで小柳小入口交差点から中央自動車道の高架が見える。かつて有料道路なのに「フリーウェイ」とは何事かと突っ込まれたことで有名な曲があったな。
そうボケつつ、中央自動車道の高架下と水防・防災ステーション角交差点を越えたところで妙に気になる案内板を見つける。
いい具合に寂れた案内板には「小柳散歩道」と書かれている。そばの案内図を見ると、この道をまっすぐに行けば多摩川ボートレース場の横に出られるようだ。行ってみるか。
住宅街の間を通り抜け、2分ほど歩いたところで少し離れていた西武多摩川線の線路とアンダーパスが見える。この手の道でアンダーパスになっているのは初めて見た。
通って先に進んでさらに3分後、多摩川ボートレース場の横に出る。この道を歩いている今日はレースが開催されていないため、人だかりや賑わいが感じられない。
左折して進むと駅らしきものが見えてきた。手前の横断歩道に交通整理の警備員がいる。開催日ではないのにいるのか。
1時間28分経過、競艇場前駅の前を通過。西武多摩川線は駅数こそ少ないが、各駅間の距離が長いことを今更気付いた。
これで残りは終点のみ。
ボートレース場の横を続けて歩きつつ、長い直線に入る。
現在はギャンブルを一切やらないので、ボートレース場を含めたギャンブルの施設にはそもそも足を運ぶ機会がない。なので、このように歩いている道の途中で偶然その前を通り過ぎるくらいだ。
そういえば、かなり昔のことだがここから北西のところにある東京競馬場は友人との付き合いで一度だけ行ったことがある。全レースが終わった後、電車の混雑から避けるために周辺を歩いていたはずだが、どの辺りを歩いていたのか記憶にない。
1時間38分、終点の是政駅に到着。
序盤はつまづいたけど、後は順調に進めたので良かった。
もう少し歩きたいところなので、グーグルマップで周辺を検索する。多摩川の向こうに稲城市か。稲城長沼駅が近いから久々にアレを見に行こうかな。そして調布に向かってアレを見て……ちょっと待てよ。すぐ近くの南多摩駅にアレのモニュメントがあるのか?
圧倒的に北側の競馬場を歩くより面白そうだ。
そうと決まったら是政橋を渡るしかない。
次回「稲城」。