Laputaのaki逝去によせて ~in the shape of wing, fly away~
また一人、この世界から偉大な人物が去ってしまった。
唯一無二の歌声を持ち、独自の世界観を形成するアーティスト。
それはヴィジュアル系という枠組みで異彩を放ち
非常に限られた界隈ではあるが確固たる地位を確立した。
名古屋系。ROUAGEと二分するその勢力はLaputaと云う。
ダーク&ハード&メロディアスを掲げ、業界に鮮烈に爪痕を残した。
活動開始から解散までリーダーを務めたaki。
解散後、今なおソロとして精力的に活動し、
未来にツアーの予定も組まれていた。その矢先の出来事。
長年愛したボーカリストが亡くなるという体験に、言葉が紡げない。
先人はこの喪失感をどう乗り越えてきたのだろう。
とりあえず今は、悼む以外の感情を表せない。
Laputaとの出会い
私が初めてLaputaの音楽に触れたのは
たぶんLaputa好きの大多数と同じで【金田一少年の事件簿】でした。
そして初めて聴いた時のリアクションも大多数の人と同じだと思います。
なんだこの声は!? え、なんか気持ち悪い……
一般人がヴィジュアル系に抱く感想そのままですね。苦笑
でも2,3回聴いてるうちに慣れてきます。
いつの間にか、なんか知らないけど不気味でかっこええやんけ
と思うようになってました。
当時はまだ中学生。CDを手軽に買える年齢でも環境でもなかったので
レンタル落ちした8cmCDを入手して後生大事に抱えているだけでした。
まだ好きなバンドを集めるというアクションにまでは至っていなかった感じです。
というのも、私の実家は田舎も田舎なので
そういった大型タイアップがないと存在すら知らないんですよね。
というわけで、この時は”天空の城”じゃない方の
Laputaというよくわからないバンドの
アニメのタイアップによく似合った怪しいけどかっこいい曲歌う人たち
という認識で数年過ごします。
次に彼らと相まみえるのは2000年。高校生の時です。
爆笑問題が大好きだったのもあり
「号外!!爆笑大問題」という番組にはまります。
そのエンディングテーマがなんだかやけにかっこいい……
誰だ?Laputa……、なんだか聴いたことあるぞ。
というかこの歌声、聴き間違えるはずがない。
この特徴すぎる艶やかで怪しくてでもかっこいい声は!?
というわけでここで再会。まさにmeet again。
またもやタイアップでLaputaというバンドを捕捉します。
追い風になったのがスカパーの「JeeJeeTRAP」という番組。
大阪心斎橋にかつてあったヴィジュアル系専門店が主催していた番組で
当時JanneDaArcにハマりたての自分が
動くジャンヌを見たいがために登録していて
ヴィジュアル系というものにどんどんハマりだしていたころなのです。
そしてこれは後から気づくのですが
『meet again』も『shape』もボーカルのakiが作曲。
基本的にLaputa楽曲はギターのKouichi先生の
独特なコード進行とメロディ運びが評価されがちになる傾向があるのですが
結局二つしか存在しないaki作曲のシングルで私は耳を持ってかれてるのです。
そして『Silent on-looker』発売時に
上述の「JeeJeeTRAP」でLaputa特集が組まれます。
そこでがっつりプロモーションビデオを堪能!
過去作品も存分に紹介されそのあまりのかっこよさに心打たれます。
そんな期待感を膨らませられて迎えたフルアルバム「楽~ヘブン~園」。
これがまた素晴らしかった。
「楽~ヘブン~園」簡易レビュー
ジャケット通りのブラウン管の砂嵐を彷彿とさせる
ノイジーでデジタライズされたVoicesとバンドサウンドが煽り立てるSE
『Blast-Off Time』。
そこから続く機械化世界ディストピア感たっぷり『Programized Heaven』でこのアルバムの世界観を演出。サンプリング音源も駆使しつつ
単調なサビが逆に不気味にされどメロディアスに展開。
シングル曲『Silent on-looker』はかなり内省的な歌詞で
この世界の住人の立ち位置を明確化。
ロングトーンが多用されKouichiお得意のオシャレコード進行で
意図的に賑やかす鐘の音とキャッチーなメロディで盛り立てます。
それと対峙する『Devil's Waiting』。
全部サビみたいなメロディ小節はさすがボーカルaki作曲。
恨み辛みをハードにメロディアスに皮肉に笑う、
アッパーな雰囲気でアップテンポな曲が続きます。
懐古と哀愁の『Sapless Heart』。
自然の不自然さに嘆き公平の不公平さに陥る
乾いた心と向き合うバラード。
プログラマイズされた社会と大自然の差異に悩み苦しみ、
その世界観を共有したまま憂鬱を浮き彫りにする『Dazzling Sun』。
存在価値を求めさまよう自分の居場所はどこだろう。
そこに一筋の光明を照らすシングル曲『shape』。
疲れた肩を癒す自己啓発にも似た内省。
形に捕らわれずただ自由を求めるこの歌は私の座右の銘となります。
目的のためなら手段なんて選んでいられない。
絶望に満ちた世界に浸されながらも瞳孔に光を宿していけ。
この曲は私にとって希望の歌です。
閑話休題的な『I Cry "Dance"』
ここで初めてこのアルバムで明確な第二人称が出てきます。
(Devil's~の"君"は第三人称と認識しています)
どうです?こんなにも自己完結型なアルバム珍しくないですか?
ラブソングに共感しない自分にはこのアルバムがぶっ刺さりました。
吹っ切れたように加速しだすアッパーな『Borderline』
Laputa特有のしゃくり上げシャウトも繰り出すロックサウンド。
軽快だけどヘヴィで無骨な男勝りな一曲。
縦に横に揺らしてきます。
さらに勢いを増して『Blindman's Buff』。
スリリングなコード展開と爆発するテンションマックスなサビが特徴。
シャウトも多用しまさに最高潮。
――かと思ったら更に疾走してラストの『Black Sheep』へ
こんなアルバム聴いたことない!
最後か最後から2番目はしっとりするのが定説でしょう!?
そんでポップな曲でお茶を濁すのが通例でしょう!?
そんなのお構いなしに
まさにLaputaの提唱するダーク・ハード・メロディアスをぶつけてきます。
3曲連続でハードな曲を持ってきてアルバムを締める作品なんて
他に知りませんよ。
お得意のピンポイントシャウトも多用し実にLaputaらしい楽曲。
それでいて下手したらアルバムで最もメロディアス。
だけどシャウトもいっぱい。廃人ガッツポーズではないかい?
私は「Laputaで一番好きな楽曲は?」という質問には
『shape』か『Black Sheep』と答えています。
そんな感じで、私は「楽~ヘブン~園」が一番好きなアルバムです。
これはコンセプトアルバムと捉えて差し支えないでしょう。
初期のダーク路線と後期のデジタル路線のちょうど中間に位置する
個人的に最も適した曲調群。
この時期の楽曲が私にはツボなのです。
akiソロ活動開始
SNS見てても思うのですが
さすがに初期のLaputaが好きだった人にとっては
後期のデジタルトランスロック路線が受け入れられなかったようで
おそらく売り上げにも顕著に出てしまったからか
Laputaは解散を発表します。
個人的には初期のいかにもヴィジュアル系って感じのダークさも
中期のメロディアス路線も後期のデジタル路線も
それはそれで好きな曲も多かったのですが
まぁ確かに音楽性はかなり変化していきました。
しかし、各メンバー(主にaki, kouichi, junji)のソロワークスは
いずれもデジタル路線だったことを考えると
戦略とかではなく単純に好きで変化していったと見るべきです。
一応一通りソロワークスには触れているのですが
やはり積極的に集めたものはボーカルのakiになりました。
好きな曲がaki作曲なので当然と言えば当然です。
(べた褒めしている『Black Sheep』もaki作曲)
ですがやはり一番の要因は声質。akiの歌声は唯一無二です。
誰に聞いても、
Laputaの曲を聴かせれば声質に言及せざるを得ないでしょう。
それくらい特徴のある声。
クセが強いため拒否反応も多いでしょうけど
それゆえにハマればこれでしか満たされない特別な代物なのです。
歌詞はLaputa時代と比べると現実的になってる気はします。
でもシャウトは健在だしメロディアスさも失われていません。
デジタルサウンドに傾倒はしていてますが
ベースが黒夢の人時、ドラムがDEATH-Oということもあり
ハードさは増していますね。
特に私はソロワークス一発目のアルバムがお気に入りで
一度それについて熱く語っている記事があります。
熱量が伝導しているのかなんだかアクセス数が多い記事でもありますね。
実はこの記事を偶然読んで友人が数年ぶりに連絡くれたという出来事が
一昨日ありまして、そして昨日の訃報に触れたという経緯がありました。
虫の知らせってあるんだな、と思わずにいられなかったです。
akiが与えた影響
Laputaは、贔屓目に見ても
一般層までは浸透しなかったヴィジュアル系バンドです。
しかし、少しでもヴィジュアル系を掘れば
必ずぶち当たるとても大きな影響力を持ったバンドでもあります。
名古屋系といえばLaputaかROUAGEの2台巨頭ですし
そのフロントマンともなれば憧れられた存在で間違いないのです。
というわけで、個人的にですが
akiの訃報に言及しているものを集めてみました。
これにてこの記事の終わりとしたいと思います。
Afterword
特別好きだったバンドマンの訃報、となると何人か思い浮かびますが
短命だったゆえにまだファン歴が浅かったため
そこまでのダメージは負いませんでした。
しかし、Laputaのakiとなるとそれこそ25年くらい聴いてきたわけで
しかもソロワークスも積極的に集めるほど好きだったので
かなりショックが大きいです。
今は、とにかくお悔やみを申し上げるばかり。
私はこれからもakiさんの遺した作品を愛し続けます。
間違いなく、私の青春の一つでした。
ずっと、大好きです。