サウナ 56 120℃のサウナ
いつも行っている「余熱館ささおか」は、サウナの温度が120℃です。
おそらく設定が120℃なのですが、人の出入りで熱気が漏れ、いつも温度計の針は115℃から118℃辺りをうろついています。
しかし先日はじめて120℃をしっかりと指す針を見ることができました。
その日は平日のお昼で人が少なく、サウナ室へ入った瞬間に温度計は119℃を示していました。120℃への期待が湧き上がり、意味もなく息をひそめ、ボイラーの頑張りの邪魔をしないようにしていました。
浴室全体には合計5人ほどのお客さん。サウナ室には私ひとりです。
温度計を眺めつつじっと待っていると、扉の前でマットを手に取るおじさんの姿が見えます。「おじさん、扉を開けないで!」祈る間もなくおじさんは入室です。
多少のガッカリ感を持ちつつも、何も悪くないおじさんの気を悪くさせないように、表情には出さず心の中で小さくがっかりしていました。
しかし、温度計はその思いとは逆に動き始めたのです。おそらく119.5℃付近。おじさんは部屋の熱気をかき混ぜてくれたのでしょうか。これは動いたほうが良いのか、じっとしていたほうが良いのかよくわかりません。
温度計の針は120℃の目盛りに限りなく近付いています。しかし、針が目盛りの真ん中にピッタリ合っているかと言われたら、少しだけ、ほんの少しだけ足らないような位置です。
このままで「今日のサウナは120℃だった!」とは言いたくありません。もうほとんど120℃なのですが、いいところまできて妥協したくないのです。
動いているような、動いていないような針を眺めていると熱気にやられ、残念ながら身体を水風呂へ沈めました。
サウナの中でもおそらく高めであろうこの温度設定は、115℃に下がっている時でも充分に熱く、他のサウナ施設に行ったときは、その温度に物足りなさを感じてしまっています。ほぼ120℃の今日はさらに熱く感じています。
休憩もほどほどに再びサウナインです。中には先客が2人。上段に腰掛け頭が熱でやられないようにタオルを巻き付けます。
私はとても目が悪いのですが、サウナ用のメガネをかけているのでテレビも12分計も温度計もよく見えます。
さて、今の温度は。と、温度計を見ると。
120℃!!
確実に120℃の目盛りの真ん中に針があります。むしろ少し通り越しています。
ここにいるおじさん3人の連携プレーで120℃まで温度を上げたのです。(おそらく)
一人目のおじさんは絶妙なタイミングで扉を開けて入室し、熱気の撹拌を行い、その後はじっと座り次のおじさんへバトンタッチです。(役割分担)
次のおじさんも完璧な撹拌を行い、座った場所も自分が障害物になることを意識し、熱気の循環を計算しつくされた位置です。(おじさんたちはそこにいなければならない)
そこへ私の登場です。すでにお膳立ては出来上がっています。
扉を開け、程よく仕上げの撹拌を行います。
室温全体を均一にかき混ぜるルートで歩きながらゆっくりと座り、タオルを頭に巻く動作で最終仕上げです。(この時点で120℃超え)
おじさん3人のそれぞれの役割りがうまく機能しなければ、おそらく120℃にはならなかったでしょう。今回はうまく機能しすぎて少し超えてしまったくらいです。
その後、この素敵なチームメイトは1人、2人と部屋から出ていき、私ひとりの時間を作ってくれました。「今日の主役は私なのね。ありがとう」と感謝の想いを持ちつつ120℃のサウナをひとりで楽しむことが出来ました。
サウナから帰った夜には、何故かいつも顔にだけ軽いヤケドをしたような感覚があるのですが、その心地よい思い出ヒリヒリを感じながらこの文章を書き始めてみました。