『エレファントカシマシ 35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO』@有明アリーナを観てきた
いつだったかアホみたいな記事を書いたが、俺はエレファントカシマシのファンである。
しかし、これまでライブを観たことが無かった。
同じファンの方と話をしても、生で観たエレカシの魅力に触れられず、忸怩たる思いをいつも抱えていた。
これまで映像作品では何度もライブを観ていて「いつの日か!」というか
「ミヤジが元気なうちに!」
ライブを観たいと思っていた。
その熱く、激しいバンドサウンド、
ミヤジの奇天烈なパフォーマンス、
一方でオーディエンスを鼓舞し、優しい曲で涙を誘う懐の深さ。
彼らの生の音に一度は抱かれてみたい、と思っていたのである。
そして、念願が叶った。
ダメ元で応募したチケット、しかもアニバーサリーツアーだった。
これでようやくエレファントカシマシに会える、と。
場所は有明アリーナ。
初めて訪れる会場である。
初めてのことには不安が付き纏う。特に俺は不安神経症だ。
デカい会場で一人ぼっち。
何故かトイレを探して右往左往して見当たらず、社会的な危機を迎える画が浮かんできては胃の辺りが黒々としてくる。
しかし、だ。何しろエレカシだ。
行けばなんとかなる!
っていうかミヤジが何とかしてくれる!
根拠は無いが、そう思った。
当日、というか昨日(3/18)。
有明までの道のりはなかなか険しかった。
会場までの交通手段にバスを選択したのが裏目に出てしまった。
会場へ向かうバスはどれも満員で、2本ほどバスを見送り、やっとこさ会場に到着したのは開演の15分前。
そこから俺は
光のような速さでグッズを選び、買い、トイレを済ませ、そして指定席の4階までダッシュし、双眼鏡をステージに合わせて調整した。
どうにか間に合った。
こちらはもうドーンと構えているだけだ。
18時を少し過ぎた辺りに客電が落ち、ステージのバックスクリーンにエレカシの35年の歩みをまとめた映像が流れ始めた。
デビュー間際のギラついていたチンピラのような姿を映した映像もあれば、数々のヒット曲のPVの断片が矢継ぎ早に流れた。
「あぁ、あのPV。お、このPVも知っている」
と、彼らの長い歩みを追ってきた感慨で、この時点で身体中に泡が浮くような感覚に包まれた。
いよいよ、である。
そして、メンバーが登場。
おもむろにミヤジが一人、スライドギターを弾き出した。
一曲目は、アルバム『登れる太陽』から出足を飾るに相応しいあの曲だ。
第一部開幕、である。
序盤はファーストから『ココロに花を』辺りの名曲が続く。
唐突に鳴らされた「悲しみの果て」のイントロにゾクゾクした。
「奴隷天国」の攻撃的な歌詞は令和の今でも鮮烈な鋭さを持っている。
ミヤジの声もよく出ている。というか、下手したらCDよりも若々しい歌声じゃないか。
「あぁ、今日は来てよかった」と思った。
もう第一部だけで元は取れた、そう思った。
第二部。
このコンサートのような構成、ベテランになった彼ら自身のためか、それとも高くなったファン層の年齢を慮ってか、そんな野暮なことを考えていると、「この曲が出来た時、本当に嬉しかった。素敵な曲です」というミヤジのMC、そして鳴らされたのは、俺も大好きな「彼女は買い物の帰り道」である。
ユニバーサルに移ってから、こういう優しい曲が増えたのは、ミヤジも歳を重ねたからだろうか、しみじみと聴き入った。
ピアノをメインとしたアレンジになった「風に吹かれて」には、改めて曲の良さを気づかされ、某ユーミンのカバーにはミヤジの”昭和歌謡愛”が溢れていた。
第二部で圧巻だったのは、後半の「rainbow」、「悪魔メフィスト」と激しい曲が連発された場面だ。
ロックバンドらしい激しさに震えながらも、よく歌声が持つなぁ、と思った。
泣く子も黙る第三部。
ここからは、アンストッパブルな名曲のオンパレードである。
演奏中、ミヤジが実によく駆け回っていた。
にもかかわらず歌はきっちりと歌い切る。
やはりミヤジは歌手として恐ろしくポテンシャルが高い。
個人的には「ズレてる方がいい」の「漢」感に満ちた曲世界を生で観られたことが実に嬉しかった。
終盤で鳴らされたエレカシとしての新曲は、彼らのらしさを湛えつつ、歳を重ねた年輪が垣間見えるような渋い名曲だった。
そして本編ラストはデビュー曲「ファイティングマン」である。
きっと、ミヤジは幾つになっても「ファイティングマン」を歌い、そして「ファイティングマン」であり続ける、そう思わされるパフォーマンスだった。
本編が終わり、アンコール。
それにしても、ハケてから再度出てくるまでが実に早い。
第一部、二部、三部と重ねる度に思う。
なんて律儀なバンドなんだ。
アンコール前だから、と席を外してトイレに行こうかと思ったら、もう彼らが出てきてしまい、慌てて席に戻った。
やはりあの曲である。定番の奴だ。
これだけでもネタバレになろうが、わかる人はわかるだろう。
凡そ2時間半。名曲、名曲、また名曲。
もうお腹一杯である。
にしても、10代から始まったバンドが35年である。
その間、浮き沈みもあったろう。ロックバンドならではの破天荒故にメンバーが身体を壊すことも十分にあり得る年数だ。
それが今だに一人のメンバーも欠ける事無く精力的な活動を続けている。
これはとんでもないことである、と改めて思った。
またチャンスがあれば、ライブを観たい。
そんで帰り路。
会場を出、他の観客たちに揉まれながら、じっくりと今宵の感慨に浸った。
空は生憎の曇り空だったが、きっと周りの人たちには月が見えているだろう、「今宵の月」が。
かく言う俺も見た、ような気がした。