生まれて初めて救急車を呼ぶことになった話
まさに昨日のことである。
今、これが書けているということはそこまで大事に至らなかったということではあるけれども、あの時の俺は自らに起きた変調に大きく戸惑っていた。
その経緯をざっと綴ってみる。
土曜日。休日である。
朝は適当なカップ麺で済ませ、午前中は豪快に昼寝をし、午後、起きてからさらにメシを食う、という典型的なダラダラした休日を過ごしていた。
食後はベッドでゴロゴロしながら、撮り貯めたテレビ番組を垂れ流し、ドラクエウォーク内のカジノで「ツモるんです」に文字通り打ち込んでいた。
そんな
まさに「チル」な時間に身体の変調が起こった。
妙に鼻の中が痒い。くしゃみがやたらと出る。
少し時間が経つと、今度は頭の先から顔にかけて、異様に火照り出した。
身体中の血が顔付近に集まって、顔が膨らむような感覚になった。
例えば、熱を出した時の火照り方、あれを強烈にした感じだ。
慌てて枕元の体温計で熱を測る。
「36.3℃」
熱は出ていない。
だが、顔が異様に火照り、頭がグラグラし始めた。
この辺から少しパニックになった。
熱は無いのだから、風邪じゃない。
「顔 火照り」で検索しても「自律神経失調症」とかしか出ない。
その上、俺は通っているメンタルクリニックで「自律神経失調症」の診断を受けたことはない。
じゃあ、なんだ。と思っていると、どんどん火照りが強くなってくる。
息苦しささえ出てくるようになった。
終いには、身体中が鳥肌のように粟立ち始め、異様な痒みを伴うようになった。
なんだ、なんだ。
この辺りから、「俺、急性の何かになっているのでは?」
という恐怖に襲われた。
と、よろけながら洗面所で自分の顔を見てみた。
顔は真っ赤、目元は殴られたように腫れあがっていた。
「何!?何事!?」
自分の身体に何かが起こっているのだが、原因が判然としない。
それが最も恐ろしかった。
「このまま原因不明の病気か何かで恐ろしいことになるのでは」
そんな不安がよぎり始め、やむにやまれず、母に電話した。
困った時は「おかん」である。
「おかん」はすぐに電話に出てくれた。
「あんた、凄い体調悪そうな声してるね。大丈夫?」
「それがさ…」と、ここまで出ている症状を伝える。
すると、おかん曰く「おかんもそれなったことあるよ。5日は腫れや湿疹が出た。帯状疱疹かと思って、病院行ったら違ったんだよ~」
と、過去の自身に起こった症例を教えてくれたのだが、おかん、今はそれやない。
そこで「俺は病院に急患で駆け込むか悩んでいるんだ」と伝えると、
「ホントにヤバいなら救急車を呼びなさい」と背中を押してくれた。
おかん「あ、そうだ。救急車を呼ぶかどうか、困った時の相談窓口があるわよ」
と、俺が知らなかった主婦の知恵を授けてくれた。
いきなり救急車を呼ぶな、まずは救急車を呼ぶべき状況か確認せい、というおかんの冷静さに救われたが、同時に、事を大きくしないようにという謙虚さ、あるいは「余計に金もかかるだろうから」というおかんらしいコスパの考慮も見て取れた。
それで、俺は早速その救急ダイヤルに電話した。
救急ダイヤルは案外すんなりと出てくれた。そうでなきゃ困るのだが。
「救急の相談ですか?」担当者は女性であった。
「すみません、救急車を呼ぶかご判断をお願いします。かくかくしかじかの症状が出ておりまして…」と、救急車を呼ぶか、プロ目線の判断を仰いだ。
「そうですね。救急車を手配しましょう」
Oh…やはり救急車を呼ばねばならん状態なのか。
「このまま救急隊員に繋ぎますね」
やはりこういう人の生死に関わる仕事は繋ぎもスムーズだ。
そして救急隊員へと引き継がれ、「救急隊員です。お名前を…」という感じで、名前、生年月日、住所、症状を確認され、他に思い当たる節はないか等々、確認された。
「それでは向かいますねー」
さすがは救急隊員だ。動じていない。
そして、その体調の中、万が一入院となった場合に備え、よろけながらもリュックに下着の替えやスマホの充電器を詰め、簡単な荷造りだけしてベッドに倒れた。
10分ほどで家に救急隊員が来てくれた。
幸い、自力で歩行できるので、住んでいるアパートを自力で出て、待ち構えていたストレッチャーに乗せられた。
改めて症状を確認され、一日の食事の内容など、細かく聞かれた。
でもなんだろう。
あとは医者の下まで運んでもらえる、という安心感で身体が楽になってきてしまった。
「こんなんで救急車を呼んで、すみません!」
という思いで一杯になってきた。
が、乗り掛かった舟、もとい救急車だ。
あとは流れに従おう、とじっと病院までの道のりに耐えた。
余談だが、救急車に乗っている社内には、サイレンの音ってあまり響かないのである。
中は割合静かで、少しウトウトしてしまったことをここに白状する。
普段は外で聞いている、あのけたたましいサイレンで自分が運ばれているのだ、という不思議な感覚があった。
そして、総合病院に俺を乗せた救急車が到着した。
総合病院に到着し、自力で歩いて診療室へ入った。
担当医師曰く、「典型的なアレルギー症状です」とのこと。
この時は思い当たる節がなかった。
実は通っているメンタルクリニックでは定期的に血液検査をやってくれて、ある時にアレルギーの検査もしてもらい、特にアレルゲン物質はない、というお墨付きをもらっていたのである。
では、なんのアレルギーだ。
と訝しんでいると、医師はサクサクと準備を進め
「アレルギー反応を抑える点滴を打ちますからね。これで楽になりますよ」
と説明してくれた。
そして、度々の入院で慣れ親しんだ、点滴をまたしても投入することになった。
ローラー付きの点滴掛けも最早自分の一部のように感じた。
それで、点滴を入れ始めて15分ほど。
ホントにびっくりするくらい症状が引いていったのである。
終いには座っているベンチで寝そうなほどに、身体が楽になっていったのである。
あのしんどさは何だったのだ、というレベルで俺は回復していった。
そして、最後の最後で「節」を思い出した。
あまりに鼻の痒みが酷いので、諸々の症状が出る前に鼻炎に利く抗生物質を飲んでいたのをすっかり忘れていたのだ。
やっと思い当たる節が出てきた。
早速「あの…そういえば」と、内容を医師に話すと
「あぁ~。あの薬はアレルギー反応出やすいんですよ」
と、さもありなん、納得したような顔をした。
そして「もう飲まない方がいいです」と念押しされた。
俺は歩いて病院を後にした。
結局、救急車で病院に運ばれてから、滞在僅か1時間半ほどで自宅への帰路に着くことができた。すぐ帰ることができてよかった。
帰る前、病院のトイレに備え付けてある鏡で自分の顔を見た。
ちゃんと腫れが引いていて、元の自分の顔になっていた。
なんでしょう、
「お騒がせしました!」という思いで一杯になった。
恐らく救急隊員の方々も症状から解っていたのだろう、そこまで焦りもなく、穏やかな対応だったのを覚えている。
こんなんで救急車を呼んで、すみません!
でも、あの時はマジで自分が死ぬのかもしれん、と本気で身体の震えが止まらなかったのだ、ご容赦願いたい。
この経験から伝えれれることがあるとすれば。
世の中、救急車で運ばれる経験というのは、なかなかあるものではない。
あったとしたら一大事なわけで、そんなに頻繁に乗るような人生は、流石の俺も御免蒙りたいが、もし将来、急激な体調の悪化で病院に行くか、はたまた救急車を呼ぶか、迷った方は、まず以下のサイトを見ましょう。
ブックマークしておけば、何かあった時に安心である。
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu-adv/soudan-center.htm
(東京消防庁 公式ホームページ)
ちなみにだが、このサイトに大きく掲示されている「#7119」は、話し中で度々掛けても電話を掛けられなかった。
同サイトに掲載の「03-3212-2323」(都内限定)にはすんなりと繋がった。ご参考までに。
そして、救急車を呼ぶかの判断はできるだけプロの方に意見を仰ぎしましょう。
俺は今日、救急隊員という方々のお仕事に心から敬意を払おう、と誓い、
そして、出来ればお世話にならないよう、体調を慮って生活しよう、そう思った。
家に帰ってから、母には礼を言い、「ご心配をおかけしました」とメッセージを送った。
皆様もご自愛ください。
それでは。