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福田平八郎の回顧展

これまで書いてこなかったが僕は大分県に住んでいる。
別府湾や佐賀関、豊後水道などの豊かな海と、由布岳、鶴見岳などの山、天領・日田や耶馬渓などの河川も充実した豊かな県だ。日本一の湧出量を誇る温泉に関しては語るまでもないだろう。

そんな大分県出身の画家に福田平八郎という人がいる。

福田は1892年2月28日に大分市に生まれ、18歳で京都に出るとそれからは1974年3月22日に急性肺炎で亡くなるまでを京都で過ごした画家で京都名誉市民にもなっている。
詳しいことはこちらの 東京文化財研究所 のサイトまで。


没後50年を迎えた今年、『没後50年 福田平八郎』という回顧展が大阪中之島美術館(3月9日~5月6日)と地元・大分の大分県立美術館(5月18日~7月15日)で開催され、僕は大分県立美術館の後期展示に行ってきた。

回顧展の開催を知ってからずっと楽しみにしていて大分県立美術館のインスタグラムを見たりしていたので、本当は前期・後期ともに行って展示される作品をすべて鑑賞したかったのだが、前期の間はタイミングが合わず出掛けられず、後期も終わりかけになってようやく行くことができた。

そもそも美術に詳しいわけではない僕がはじめに福田平八郎(そして宇治山哲平)の作品を知ったきっかけ自体が別の展覧会のついでにコレクション展を鑑賞したことで、そこから大分出身の画家たちに興味を持ったのでこの展覧会はとてもありがたいものだった。

展覧会は5章だての構成で、

  1. 手探りの時代

  2. 写実の探求

  3. 鮮やかな転換

  4. 新たな造形表現への挑戦

  5. 自由で豊かな美の世界へ

という風に年代を追って進み、基本的にはその時々の時代に描かれた作品が展示され、所々に素描や写生帖なども展示されていた。

この中でも僕はやはり2から3の時代、写実的な絵を極めていく過程を見せられてからの転換、「漣」に代表されるような対象物に対する視点の持ち方というか、ある種の本質ともいえるものを抜き取る画に魅力を感じ面白く鑑賞した。
福田の絵は色使いが美しく、魚や鳥などの生き物の表情もどこか間が抜けたようなところがあるので見ていて非常に楽しい。
鯉のような題材は各年代で描かれているので、その比較をするのも面白かった。


今回は午前中は図書館へ行き、美術館では同時に開催されていたコレクション展も見て、そのあとは喫茶店に行ってカレーを食べたので、かなり充実した一日を過ごせた。
情報が溢れ、時間だけでなく言葉にならないような謎の圧力に苛まれて毎日を生きる僕たちにとって美術館などの何かに向き合うためだけの空間は貴重なものだ。

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