浅井という男④
しばらくは初期研修医の活動を1ヶ月ほどこなすだけの日々が続いた。
どうしたら良いか分からなくなっていた。
浅井自身も、
「しばらく海辺に住むわ」と言って2週間ほど帰ってこなかった。
あとあと聞いた話だが、千葉県のどこかの海岸沿いに木で小屋を立てて、サーファーと住んでいたとか、いなかったとか。
この時期、自分は地域医療を学ぶローテートをしており、ほぼ1ヶ月の間、外部の医療機関に出向くことができた。
とりあえず身近な東京都の中で、終末期患者を診るあるいは人を看取る仕事をするプロフェッショナルのもとで学んでみたかった。
色々調べていると、頻繁に目にするキーワードが浮上した。
「ケアタウン小平クリニック」である。
山崎 章郞先生が院長を務められる在宅緩和ケアを行うクリニックだ。
山崎先生は在宅医療界では大変著名な方で、日本の在宅医療の基盤を作られた方である。
数多くの書籍も出されており、在宅医療の巨匠であり、あまりに有名だ。
ちなみに「在宅医療」とは文字通り、単に自宅で実践される医療を指すが、扱う疾患は多岐に渡る。癌患者はもちろん、心不全、慢性肺疾患、認知症、寝たきりなどなどなど。
「賢く死ぬ」ことができる世の中を作ろう、と目標を掲げたからには是非 山崎先生のもとで勉強をしたいと思った。
次の日にはアポイントを取り、2週間という短い期間であったが研修をさせて頂けることとなった。
(続)
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