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未来に進むために

Netflix『伝説の映画監督 -ハリウッドと第二次世界大戦-』(英題:Five Came Back, 2017年)全3話。

5人のアメリカ人映画監督が戦地の記録映画を制作するきっかけ、従軍の際のエピソード、そして戦後の活動に焦点を合わせている。

ナレーションをメリル・ストリープ。現代の映画監督としてポール・グリーングラス、スティーヴン・スピルバーグ、フランシス・フォード・コッポラ、ギレルモ・デル・トロ、ローレンス・カスダンが解説を務める。

戦争とプロパガンダは切っても切れない関係にある。第二次大戦中に連合国と枢軸国が映画を用いた宣伝を行ったことは広く知られている。

第二次大戦の戦火がヨーロッパを中心に広がる中、アメリカは当初参戦に消極的だった。同盟国である英国は直接ドイツ軍の空爆を経験していた反面、アメリカは戦争の脅威にさらされていなかったことが大きく関係している。ある意味他人事だったのだ。そのためハリウッドの映画監督たちが戦争の危機を国民に知らしめる映画を作ろうとしても、政治が介入して思うように作らせてもらえない。

潮目が変わるのは日本軍による真珠湾攻撃。直接攻撃を前にしてルーズベルト大統領は日本への宣戦布告を行う。そこから5人の映画監督たちはそれぞれ違うアプローチで戦争を題材にした映画を撮影する。

最初はのんきなアメリカ国民に危機感を持たせることを目的としていたが、戦火が長引くにつれて国威高揚、兵士への教育、そして報道としての役割が強みを帯びていく。

興味深いことに軍の上層部に評判がよくても興行的には失敗した作品が多数あるようだ。

戦争が終盤に向かうにつれて対日本のプロパガンダ映画も製作される。

1945年製作 フランク・キャプラ監督『汝の敵 日本を知れ』

広島への原爆投下から3日後に戦線にこの映画のフィルムが届く。しかしマッカーサーは兵士にこれを見せることを禁じ、一般公開もしないよう提案している。ギレルモ・デル・トロ監督はこの判断は正しかったと語っている。

戦争が終わると5人の映画監督たちはハリウッドに帰ってくる。しかし戦地に行っている間に業界の様子は様変わりして誰も自分たちのことを知らない。戦前はコメディー映画を撮っていたのに戦後は重い雰囲気のものしか撮れなくなった者もいる。

印象的だったのはジョン・ヒューストン監督の『光あれ』(英題:Let There Be Light , 1946 年)。当時まだ知られていなかった帰還兵のPTSDにスポットを当てた作品。外傷だけでなく心に深い傷を負った兵士たちの治療の過程にカメラがむけられている。

しかし残念なことにこの映画は公開直前に憲兵隊によって没収されることになる。

スティーブン・スピルバーグは当時のことを次のように語っている。

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第二次世界大戦の戦線を撮影した5人の映画監督たちはのちに映画史に残るような作品を残すことになる。『シェーン』『ジャイアンツ』『素晴らしき哉、人生!』『ベン・ハー』等など。もはや教科書レベルの作品ばかりだ。

Netflixに多くの第二次大戦中の記録映画やプロパガンダ映画がラインナップされているは、このドキュメンタリー作品が理由のようだ。

5人の伝説の映画監督の歩みを振り返ると戦中・戦後(非常事態も含む)における映画、ひいては映像作品の役割について考えさせられる。特にスピルバーグが語った言葉は示唆に富んでいる。

「戦争の恐るべき真実はアメリカ文化から排除されてきた。未来に向けて気持ちを切り替え、前進できるようにするためだ。だが過去を正しく理解することなしに、未来に進むことなんて絶対に不可能だ。」

振り返るための過去さえも塗り変えられてしまうことがないように願っている。

おやすみなさい。


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