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『Ten』車の中で繰り広げられる10の会話がイラン人女性の置かれた立場を映し出す

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車の運転席と助手席に取り付けられた2台のカメラで撮影された映像だけで構成されている。最初の同乗者は運転手の女性の小学生の息子。息子が少し口答えしたところから母親の怒りはヒートアップ。二人のやりとりから母親は離婚していることが読み取れる。どうやら両親が離婚したことを息子は受け止めきれていないようだ。ヒステリックな母親の勢いに息子は業を煮やして車から降りてしまう。突然場面が転換し運転手には先程の女性、助手席には女性の姉?。二人の会話から家族や息子の状況が明らかになる。この調子で車内で撮られた10の場面が何の説明もなく続いていく。助手席には息子・姉・たまたま拾った見知らぬ老婆・勘違いで乗せてしまった売春婦・友人と思われる女性など。車内での会話はごくごく個人的なものなのに、後半に向かうにつれてイラン人女性が抱える生きづらさのようなものが浮かび上がってくる。あくまでも車内の出来事に終始しているのに最後にはわりとショッキングな展開も待ち受けている。「メッセージ性が強いホン・サンス映画」と説明すれば伝わる人もいるかもしれない。個人的には冒頭の母親と息子の口論が私の幼少期の体験にリンクして見ているのが辛くなった。私の両親は離婚はしていないが、あの母親の口調・子供を追い詰める論法が全く同じで怖くなった。MUBIでは「DVシーンが含まれる」と注意書きがあったが、恐らく冒頭のシーンがそれにあたるのだろう。キアロスタミ作品を少なくとも2,3本観ている方にはおすすめです。

●2002年公開 監督:アッバス・キアロスタミ 上映時間:93分

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