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共感する。子どもとの対話はここから
入試直前から家庭教師をしたある生徒さんとの会話です。
「高校受験って、すごいプレッシャーだよね。
模擬テストで合格圏に入っている高校を選んで、倍率が1.1倍程度だから大丈夫って親や先生はいうけど、それって逆にプレッシャーだよね。
もし、そのなかに入ってしまったらどうしよう?友だちのなかで、もし自分だけ受からなかったら…ぼくは中学生の頃、そう思ってたよ。
大学受験は3倍、5倍って世界だけど、そっちの方がよっぽど気が楽だった」
それまで、勉強のこと以外ではあまり話に乗ってこなかったその生徒さんが、
「そうなんですよ」
とパッと視線を向けてきました。何だか急に気持ちが通じた感じがしました。
そして、それ以来、いろいろ話してくれるようになりました。わからないことは、わからないといえるようになりました。
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合格圏に入っているから、倍率が低いから…といわれても心配なものは心配です。お父さん、お母さんも受験に限らずこんな経験、あると思います。
こんなとき、いくら論理的に説明しても、正論的に説明しても通じないもの。
こんなときは共感することくらいしかできません。
人はわかってもらえたとき、うれしいものです。受け入れられた気持ちがしてほっとします。
そして、オープン・マインドになります。
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「共感」トークはいろいろな場面で使えます(テクニックというより、コミュニケーションの基本だと思います)
例えば、部活から帰って疲れて寝ている子どもに対して、
「そんなんじゃ、成績下がるよ!」
「行ける高校なくなるよ!」
「将来、どうなっても…」
なんて脅したり、お説教しても通じないものです。話せる雰囲気があるときに(ここ大事。寝ちゃってるときに言ってもダメ)、
「お母さんも中学生の頃、部活で疲れてよく寝ちゃってたよ。勉強しなくちゃ!って思うんだよね。でも、体がいうこときかない」
こんな会話をすると、
「お母さんもそうだったんだあ」
と親近感がわいてきます。そして、言える雰囲気が出てきたら(少し先のことかもしれませんが)、
「お母さんも部活で疲れて寝てばかりいたんだけど、成績が下がり過ぎてさすがにヤバいって思ったんだよ。
でも、取りあえず机に向かえば何とかなるもんだね。5分もしたら眠気も覚めて勉強できたよ」
こんな話ができる状況になれば、アドバイスに聞く耳を持つようになります(ただ、常に言いすぎに注意。また、こうなるのは時間がかかると思っておいてください)
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もちろん、
「お父さんが子どもの頃は…」みたいな自慢話はダメです。
最初は共感から入ったのに、気がついたら自慢話をしてしまった。お説教っぽくなってしまった。なんてこと、よくあります。
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とはいえ「共感する」も最初からうまくいくと思わないでください。状態によっては共感すら受け入れられないこともあります。
軽く試して響いたら話を続ける。でも、響いてないなと思ったらすぐにやめます。
その場をそっと離れてもいいですし(「何で聴かないんだ」という雰囲気を出さない)、連絡事項的な別の話題にしてもいいです(「ごはんだよ」みたいな)
何とかして響かせようと、しつくこくしないようにしてください。じっくり、じわじわやっていくしかありません。
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今回は「共感する」というお話でした。最後まで読んでくださってありがとうございました。