目隠しで、トリケラトプスを想像した日~前編~
11月25日26日の2日間、株式会社mitsukiが主催する、視覚障害者の同行援護従業者(ガイドヘルパー)養成研修に参加してきました。
視覚障害者の方がお出かけをする際に、適切なアテンドをするための資格です。
私には、ママ友として知り合って、もう7年の付き合いになる梓さんという全盲のお友達がいます。
当時は6歳の、よく一緒に遊んだお互いの子どもは、もう中学1年生。
男女だし、通う幼稚園も小学校も違ったし、多分お互い道ですれ違ってももう気が付かないんじゃなかろうか(あんなに遊んだのに寂しいw)と思うけど、私と梓さんはなんだかすごく気があって、こまめに連絡を取り合ってずっと変わらぬ距離感で仲良くしています。
その梓さんのススメもあって、取得することになったこの資格。
取得しようと思った経緯や、講習を受けて感じたことを、しっかり記録しておこうと思います。
1 講習を受けるまで
梓さんと、ランチする、飲みに行く、買い物に行く。その楽しさは、折り紙付きで保証されているわけですが。
やっぱり、見える友達と一緒にいる時以上に、私が見ておかなきゃいけないこと、やらなきゃいけないことは結構あるわけです。
梓さんの目の代わりになるっていうか。
こっちだよーとか。
ここ危ないよーとか。
ここにこれあるよーとか。
これはこういう感じだよーとか。
お出かけにまつわる、そういう色々を、梓さんに伝えてあげたい。
ただね、私、うっすら気がついてた。
。。。多分、私ぜんぜん、梓さんの目の代わりになってない笑
基本、おしゃべりに夢中になっていてw
エスカレーターがあるの伝え忘れて、梓さんが「エスカレーター近いんちゃう?音するわ」って先に気づくとか。
レストランで、水が来たのを伝え忘れて、私だけ先に飲んじゃってるとか。
梓さんの洋服を買いに入ったお店で、私の好みで「ここは可愛いのないや」って、決めつけちゃうとかね。
梓さんは優しいし、困ったことをなんでもはっきり口に出してくれるから、そんなふうに粗忽で自分勝手な私とのお出かけも、いつもすごく喜んでくれる。
とゆうか、この失礼なガイドは、友達だから許されてるとこがあるw
梓さんがたまに利用しているから、同行援護従業者っていうお仕事があるのはもちろん知っていたし、正しいガイドの仕方を学んでみたいなという気持ちはあったものの、忙しくて時間もなかなか取れないし。タイミングも合わないし。それに、友情があるから、梓さんとのお出かけは楽しく成立しちゃうんだもの。
なので、同行援護従業者の資格を取ろうなんて思わずに、日々を過ごしていました。
さてさて、そんなある日のこと。
私は色々あって、期間限定の無職になってしまいました。ガーン。
しばらくの間、アルバイトで食い繋がないといけない、ガーーンw
どうしよ、どうしよ、なにしよう。
と梓さんに相談したところ。
「ゆかさん、同行援護の資格をとりなよ!ゆかさんみたいな人と買い物したいなって視覚障害者きっといっぱいおるで!喜んでくれる人たくさんおるで!指名客がついてくれるようになるまで、私のお出かけでいっぱいしごいてあげるw!すぐ仕事にも繋がるし、頑張ってみなよ!」って励ましてもらったのです。
単純なので、あっという間にやる気になってしまう私w
「同行援護の研修やってる事業所のリンクだよ」って送ってくれた梓さんのそのlineから、直近のスケジュールで参加でき、かつ講習費もお手頃だった株式会社mitsukiさんの講習会にすぐ申し込みました。梓さんも「はやっw」って、感心半分呆れ半分に喜んでくれたのでした。
申し込みして、講習費を振り込んで、さて来週は講習かぁ、という頃。
我が家に、なんだか大きく厚めの、テキストが届きました。講習前日の17時までにこのテキストを読んで、「事前課題」に取り組むべし!とのメールも同時期に届き、おそれおののく私w
ここから講習当日まで1週間、学生時代に戻ったように、テキストと睨めっこの夜を過ごすことになりました。
頑張ったけど、事前課題のテストは65点。渋っw
でも、基本的なことは頭に入ったし、復習もしたし、いざ実地研修へ〜!
2 1日目の座学
池袋の貸し会議室の一室で講習会が行われます。
なんとなく勝手な想像で、受講者の年齢やスタッフさんの年齢層を、私と同年代か私より上、と思っていた私。
当日は同じビルの同じフロアにて、いくつかの講習会やイベントが行われていたのですが、おーここかここか、と入室しようとしたらそこは小型船舶免許の講習会のお部屋でしたw
タモリみたいなオジサンいたw
通り過ぎたけど、若くておしゃれなお兄さんが座っていた入口が、mitsukiの講習会場だったのでした。嬉しい誤算!w
そして、入室してみてまたびっくり。
私の娘か息子かくらいの、どうみても、20前後のキラキラした若者たちが受講者席に並んでいたのでした。
自分が20歳の頃の土曜日の朝なんて、ほぼ2日酔いか徹夜カラオケ明けで、起きてもなかったよ涙
ましてや、視覚障害者のための同行援護を学ぼうだなんて、考えたこともなかったよ涙
母親になって、地域の活動や、こういった年齢性別関係のない勉強会などによく参加するようになりました。
そこで若い人達に出会うたび、なんて素敵なんだろうって本当に感心してしまいます。
若い時にこそたくさん学んで、学んだことを活かしていける人生だったらよかったのに。
バカばか、私のばか笑。
でもちょっと遅いけど、いつからだって学びに遅いなんてことはない。
頑張ろう。
この講習会も頑張ろう。
そんなふうに思いました。
その他の受講者さんも、ほとんどがみなさん私より年下の方ばかり。
お仕事や生活の中で視覚障害の方と接する経験がある方がほとんどだし、パラスポーツのインストラクターさんや、カメラマンさん、養蜂家さんなど、色々学ばせて頂きたいな!って皆さんの自己紹介で感じて、とっても嬉しくなりました。
講習は、まず座学から。事前課題のテストの答え合わせと解説からスタートしました。
障がい者に関する法整備の歴史やその成り立ち。
介護給付制度、福祉サービスについて。
同行援護制度とその業務内容について。
視覚障害と疾病の理解。
情報支援と情報提供の方法についての基礎知識。
などなど。
この事前課題テスト、実は梓さんにも受けてもらったんです。
「私にも全然わからん問題あるよ〜。こんなに体系的に、詳しく学ぶんだね。頑張って!」と梓さん。
とくに、情報支援と情報提供の項目は、身近な梓さんと、自己流でお出かけしてきてしまった私にとっては、かえって難しく、迷ってしまう問題ばかりで。
「少し先に階段があります。」と事前に伝える。この伝え方は正しいか。
あるある。私はたまに忘れちゃうけど。伝えなきゃダメなやつ。でもね、これはバツ。
何メートルくらい先にあるか。上りか。下りか。何段くらいあるか。
そういうことをしっかり伝えなければいけないの。私、そんなに丁寧に梓さんに伝えてあげたことなかったよ。。。しゅーん。
次は例えば、「情報の取捨をせず、可能な限り多くの情報を届ける。◯かバツか。」という問題。
いやいや、取捨するでしょw
だってそんなことしてたら、お出かけの時間、全部状況説明で終わってしまうよw
でも答えは◯。
講師の方が、「できる限り多くの」ということを、こんな風に説明してくださいました。
「例えば、パスタを食べに行ったとします。カルボナーラが食べたいカルボナーラだけでいい、とハッキリ要望があったとします。そんな場合に、メニューの全部を読むことは、大抵の場合しなくていい。でもそれでも、『期間限定できのこのクリームがあるみたいですよ』とか、『◯◯セットにするとお得みたいですよ』というような情報は、私は必ずお伝えするようにしています」と。
私の場合、梓さんが「この店やったら、◯◯がいいなぁ。おすすめがあったらそれだけ教えて」とか、「この店初めてだから、申し訳ないけど、メニュー読んでくれる?」とか、先に伝えてくれていたの。
「えーかなりの量あるよ!」とか答えると「じゃぁ、見出しだけまず読んで」とか、「こういう感じの食べたいんだけど、ありそう?」とか。どんな情報が欲しいかを伝えてくれるのが当たり前で。
そっか、見えるもの同士でも初めましてだったら、メニュー選びってなんかちょっと気を遣いあってしまったり、お互いの出方を見ちゃったりするよね。見えない人が、楽しく、気負わず、私に気を遣わず食べたいものにたどり着けるように。適切に要望を引き出してしてあげられるように頑張ろう、って思いました。
また応用編で、お会計の時どうする?っていう問題があったんだけど。
梓さんは、大抵、Suicaで買い物してるの。最近はPaypayもよく使ってる。私は、ポイントの還元率がいいからかなぁって思っていたんだよね笑
でも、SuicaやPaypayって、そうか見せるだけでいいから梓さんにとって支払いがしやすいんだ!って講習を受けて初めて気がついたの。
しかも、モバイルだから、ボイスオーバー(iPhoneのテキスト読み上げ機能)が使える。
クレジットカードの暗証番号は、ボタン式ならボタンを押せばいいんだけど。最近はタッチパネルや、入力するたびに番号がランダムに並び変わってしまうものが増えてしまって、それだと、見えない人達にとってはハードルになる。サインを書ける方もいるみたいだけど、やっぱり、ピッの便利さにはかなわない。
なので、支払い方法は何を選択できるのか、しっかり伝えてあげることが大切。
そういうことの一つ一つ、自分の想像力のなさとか、梓さんの優しさや器用さを、噛み締めながらの座学となりました。
3 1日目座学後半 グループワーク
近くの席の方達とペアやグループを組んで、ディスカッションとワークを行いました。
いくつかの事例について「これは、障害者差別にあたるかどうか」をディスカッションします。
①視覚障害者1人での入店を断る飲食店
②盲導犬の入店おことわりの飲食店
③文字の読み書きができることを条件にした試験
④視覚障害者1人での乗車を禁止しているジェットコースター
こういうこと本当によく耳にします。
視覚障害がなくても、一見さんお断りとか、子連れお断りとか、やたら威張ってる頑固なマスターに嫌われて、とか入店できない時あるしなぁとか。すごい親切な店員さんでも、目がまわるようなランチタイムでワンオペで、そんな時にメニューが読めない、レジの場所がわからない視覚障害者が来ちゃったら、うううごめんなさい、ってなっちゃうんじゃなかろうか。
盲導犬は、人間が入れるとこなら、入れなきゃおかしい。
文字の読み書きができないことが条件の試験て例えばなんだろう?運転手?パイロット?見えない人がどうしてもつけない職業に関わることや、見える見えない関係なく能力が足らないなら、それは差別じゃなくない?とか。
ジェットコースターは、乗り場まで誰かがいたら、そして降りるところに誰かがいたら、乗るのは一人で乗っても良くない?とか。
私はそんなふうに考えていたわけですが。
答えは、④以外、法的に差別なんだって。
ジェットコースターは、緊急停止の時に、補助できる人がそばにいないと、命に関わるからだそうです。うん、そうかそうか。
私が考えていたことは、全部見える側の言い訳で。本人がやりたいって思ってることが、目が見えないから、できない。この世の多くのこういう類のことって、目が見えない人が悪いとか、能力が足らないからってことじゃないですよね。
むしろ見える人達に、もう少しの想像力とか思いやりとか、お互いに支えあうための時間やお金の余裕があれば、解決することばかりで。
見えてる側の問題だって思うんです。
でも現実に、今、そうじゃないから解決できないことばかり。
いや、まって。まってまって。でも、試験はさぁ、例えば運転免許の試験とかはさ、無理なんじゃないかな。ちょっとさすがに、いやいや受けるのやめとけば?!って、止めると思う笑
(追記、ここでいう試験とは、筆記だけで完結するようなタイプの試験のことだそうです。)
その他に、ロービジョンや、視野欠損の見え方を体験できるメガネをかけて、文字を読んだり書いたり。
目隠しをした状態で、ペアの相手のかたの持っているものがどんなものかを、情報をもらって、イラストに描いてみるっていうワークもしました。
「子ども用の15cmの靴下で、カーキ色です。甲の部分に恐竜の上半身のイラストが描いてあって、その上半身の下のところに、アルファベットで、トリケラトプスって書いてあります。」
と説明していただいて、概ね、正解していたのですが。
触れさせてください、って言えばよかったなぁとか。(くるぶしまでの丈感がちょっと違った)
そもそも、カーキ色って、先天的の方はわからないよね。
恐竜の上半身だって、どんな生き物かわからないよね。
私は、それを見たことがあるから、想像できるんだよなぁ。
って、改めて思ったのでした。
あと、トリケラトプスの綴りわかんなかったわ、、、という、己の新たな問題にも直面したのでしたw
いよいよ、次は、1日目の実習後半です。
目隠しをして白状を持ったペアと、まずは室内で歩き回ります。
自分が目隠しをして歩き回るターンもやってきます!
そして、1日目の終わりには、なんと池袋駅の空いてるエリアの階段を、実際に上り下りとな!!
早すぎん??涙
進み、早すぎんかね??!涙
でも、頑張って、ぶじ資格取りたい。
緊張するけど、、、、いざ!!!
。。。後編に続く。