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どんな友達やクラスメートが子どもの学力へ影響を与えるのか

「良い友人に恵まれて素晴らしい時間を過ごすことができました」

「あの学校は品の良い親子が集まるから自分の子どもを通わせたい」

「不良の子とは友達にならないでほしい」

こういった声はもはや通例とも言えるほどよく聞かれるのですが、本当なのでしょうか。

あくまで自分の実体験ですが、やはり友人から受けた影響は非常に大きいと思います。上記の3つに関しても、いずれも各人の実体験から出た本音であり、おそらく嘘はないでしょう。

ただし難しいのが、以下のような詳細な疑問にはなかなか答えられないことです。

・友達のうち、具体的にどんな子の影響が大きかったの?
・友達というのは個人?それともその場にいるみんな?

それゆえに、具体的に子どもの学習環境を整えたり友人関係を配慮する際に何に注力すべきなのかがシャープになりません。

そこで本記事では、「友人から受ける影響」について既に研究で判明している事実をまとめてご紹介できればと思います。親や育成に携わっている方々の、具体的なアクションに繋がることを願っております。


1. 自分のクラスの「平均的な学力」から受ける影響

結論からお伝えすると、学力の高い友達の中にいると、自分の学力にもプラスの影響があることが発見されています。さらに、特に学力の高い女子の比率が高くなると、全体の学力にプラスの影響があります

スタンフォード大学のホックスビィ教授の研究でアメリカの小学校3〜6年生のデータから分析したところ、同級生の国語の平均点が1点上がると、自分の点数が0.3〜0.5点程度上がる効果が見られました。また、数学においては同級生の平均点が1点上がると、自分の点数が1.7〜6.8点も上がるという大きな効果が見られています。

さらにこの結果はアメリカだけでなく、チリや中国、ヨーロッパ6カ国など他の地域においても同様に見られたそうです。

つまり、「(平均的に)ハイレベルな友達に囲まれて自己研鑽をすることで成長に繋がった」というのは本当なのです。「難関校への合格者を多数輩出している学校や塾に子どもを入学させる」という選択も正しいと言えますし、逆に塾や学校の運営側が優秀な学生を特待生として入学させることも、全体のレベルを引き上げることに一役買っているのです。

2. 優秀な同級生から受ける影響

こちらも結論からお伝えすると、優秀なクラスメート個人から影響を受けるのは、もともと学力が高かった上位層だけです中間層や学力の低い子どもは何ら影響を受けないことが明らかになりました。

それどころか、自分のクラスに優秀な同級生が入ってきた場合、もともと学力が低かった子どもにはマイナスの影響さえあることが分かりました。スウェーデンの高校生のデータを用いた研究によると、学力の低い学生にとっては優秀な学生の存在により自信をなくしてしまい、大学への進学意欲を低下させてしまうことが明らかになりました。この例からは、レベルの高すぎるグループに放り込んでしまうと逆効果になる可能性があることが分かります。

このことから、親や教師は優秀な学生が新たに加わる場合は特に学力の低い学生の学習や進学意欲が低下しないか、自信を喪失してしまわないか、一段とケアが必要であると言えるでしょう。

3. 問題児から受ける影響

問題児から受ける影響については、問題児の存在によって学級全体の学力にマイナスの影響があることが明らかになりました。

これはノースウェスタン大学のフィグリオ教授の研究により発見されましたが、この他の研究でも、親から虐待を受けている子どもの存在によって学級運営が難しくなり、結果的に学級全体の学力が低下することが分かっていたり、1人の問題児の存在によって他の児童が問題を起こす確率が17%も上昇することが分かったりと、いたるところで問題時から受ける影響が顕著であることが分かっています。

上述のとおり平均的な学力が高い環境に身を置くことが重要ではあるのですが、一方で「問題児がいない環境に身を置く」ことも重要になっています。とはいえ、入学する前から問題児が同じクラスにいないか、また転校してくる可能性がないかを確認する手段はほとんどありません。

対策としては問題児を放置せず速やかにケアすることができる先生に担当してもらうことはもちろんのこと、親同士が協力して自分の子どもやその周りが問題児にならないよう支えることが大切です。

4. 自分と同レベルの集団(習熟度別のクラス)から受ける影響

習熟度別クラスに関しては、特定の学力レベルの層に限らず、全体の学力を押し上げるのに有効な施策であることが判明しています。例としては大学受験予備校であれば「東大京大医学部コース / 旧帝大コース・・・」などとクラスを別に運営しているものが最もイメージに近いでしょう。

この結論は、マサチューセッツ工科大学のデュフロ教授がケニアの小学生を対象に、習熟度別クラスを実施した学校と通常クラスで運営した学校とで比較した研究により導き出されました。結果としては、「先生が習熟度に合わせて指導することができるならば、習熟度別のクラスは全ての学力レベルの学生にとって成績を上げる効果がある」ことが分かりました。

しかもこの研究では、特に学力向上が見られたのは学力レベルの低い学生であったことも分かりました。これは他者と比較して意欲を失うことなく学ぶ環境ができたためであると考えられています。

一方で懸念されていることとしては、格差拡大のリスクです。国単位のデータに基づいて研究を行ったスタンフォード大学のハヌシェク教授の研究によると、子どもの年齢が低いうちに習熟度別のクラスで学習を行うと格差が拡大し、長期的には全体の平均学力も下がってしまうことが指摘されています。

したがって、習熟度別の学習クラスについてはプラスとマイナス両面の側面があるため、ただやみくもにクラス分けを行うことには注意が必要です。マクロな視点で見て格差を生じさせない工夫が必要と言えます。

5. まとめ

「友人の存在が学生時代の充実さを左右する」というのは、良くも悪くも事実として正しいことがお分かりいただけたかと思います。

またこれは、自分の子どもを学校や学習塾に入れる場合にはもちろん、子どもから大人まであらゆる組織の採用活動やチームビルディングにおいても活用可能な人間の習性です。

親の大事な仕事は子どもを愛して可能性に投資することと、環境を整えること。本記事がその環境づくりに少しでも役に立つようなら幸いです。

■クラスの「平均的な学力」から受ける影響
・自分の学力にもプラスの影響がある
・特に学力の高い女子の比率が高くなると、全体の学力にプラスの影響がある
・ハイレベルな環境に身をおくことや、平均を引き上げる人材を組織内にスカウトすることは正しい選択

■優秀な同級生から受ける影響
・優秀な個人から影響を受けるのは、もともと学力が高かった上位層だけ
・中間層や学力の低い子どもは何ら影響を受けない
・クラス運営者は、学力の低い学生の学習や進学意欲や自信を喪失してしまわないか、一段とケアが必要

■問題児から受ける影響
・問題児の存在によって学級全体の学力にマイナスの影響がある
・親同士が協力して自分の子どもやその周りが問題児にならないよう支えるべき

■自分と同レベルの集団(習熟度別のクラス)から受ける影響
・特定の学力レベルの層に限らず、全体の学力を押し上げるのに有効な施策である
・特に学力レベルの低い学生において、学力向上が見られた
・格差拡大のリスクはある

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