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そんな破廉恥な格好でバレンヌ皇帝が務まると思っているのか。私は許そう。だが令和が許すかな。
昨今のラノベ並みに長いタイトルになってしまいました。申し訳ありません。「ロマンシングサガ2 リベンジオブザセブン」を裏ボスを含めてクリアしました。
え、30 年前のゲーム? マジで? そりゃあ、発売直後にプレイしていた訳ではないけど、幼い頃にプレイしていた身としては感慨深いというか、よくこんな昔のゲームをリメイクしたなというか。
昨今のスクエニ
昨今のスクエニはリメイクの調子がいいですね。本作と同じ制作チームが手掛けた「聖剣伝説3」のリメイク「TRIALS of MANA」も、
オープンワールド
リースのえっちな衣装
リアレンジされたBGM
アンジェラのえっちな衣装
ポップな3D
とにかくえっちな衣装
などが印象的な好リメイクでした。
正直な感想を申し上げると、TRIALS of MANA のプレイ動画を見て思ったのは「とことん懐古層を狙い撃ちにしてるな!」ということ。BGMひとつをとっても、いかに原曲のニュアンスを崩さないままリバイバルするかという気合が伺える。原曲が素晴らしいというのもあるのでしょうけど、そこには、「ユーザーの思い出を絶対に裏切ってはいけない!」という、ある種の目配せを強く感じずにはいられないものでした。
さて、「聖剣伝説3」で最も重要なクラスは何でしょう。フェンリルナイトですね(即答)。衣装がえっちだからです。3D化したら歩く姿は痴女の花。追加クラスもドスケベ! ソシャゲみてえな露出度インフレしやがって。嬉しいって? そりゃ嬉しいよ。もうおっさんだもん。プライドなんかないよ。
でも、こういうのが苦手なユーザーも当然いると思われます。私も少年の頃は、露出度の高い女キャラを見ても、恥ずかしさ半分で「べ、べ、べつに好きじゃねーし!」って感じで、あえて男性キャラを入れるようなムーブを良くしていた記憶があります。おっさんになったらもう(以下略
すいません、このゲームの話をする前に聖剣伝説の話を 1,000 文字近くしてしまいました。要は、最近のスクエニのリメイクは懐古層を狙い打ちにしているということです。あと、ちょっとえっちが過ぎるということです。まさにメインターゲットである私にとっては嬉しいことなのですが。
忠実なリメイク、しかし
さて、ロマサガ2のリメイクである本作の話題に移ります。
本作は「ゲームの操作感に関して古い部分を改善すること」にかけてはかなりの作り込みが見られます。不親切な要素、テンポを悪くする要素が徹底的にオミットされている。快適なゲームに慣れきった現代のユーザーがこのゲームを遊んでもストレスなく遊べるでしょう。
しかし、そのリバイバルの方向性は懐古層のプレイヤーに強く向けられており、それがゲームの雰囲気と一種のチグハグさを生んでいる箇所も見受けられます。つまり、ストレスなく遊べるゲームのはずなのに(だからこそ)、なんかノリが合わない……?って思わせかねない危うさを感じます。
シュールを超えて軽薄
「サガシリーズの面白さは何か?」
これに対する答えは色々あると思いますが、戦闘以外の要素だと、一種の突き放したようなシュールな世界観やセリフをそのひとつにあげる人は多いと思います。有名どころだと、
流し斬りが完全に入ったのに
アリーだ!
等等。ロマサガ2ではないですが「殺してでもうばいとる」とかも有名ですね。
これらに共通する要素を言語化すると、意外な展開や選択肢を、脈絡なく提示することによって得られる驚きやシュールさ、といったことになるでしょうか。本作はこういった要素に多大なリスペクトを払っており、ほとんどのセリフを一字一句違わず完全に再現しています。
また、単なる完全コピーに留まらず、メインストーリーであるにも関わらず明らかに説明不足だった七英雄まわりについてはストーリーを補完していたり等、オリジナルをリスペクトしたままブラッシュアップしています。
しかし、こういう突拍子もないセリフや選択肢って、提示できる情報が限られていたSFC時代だからこそ成り立っていた部分が大きいです。当時は、大量のセリフを考えることも、そしてそれをROMに詰め込むことも現実的ではありませんでした。その分、プレイヤーは限られたセリフから、想像力を働かせて行間を補足する、という暗黙の協力関係が存在していました。これはサガシリーズに限ったことではなく、過去のエンタメを現代から見るとそうだった、という話ですが。
さて、時は流れて技術は発展し、キャラクターは3D化し、フルボイスになりました。しかし、セリフはSFC時代と一言一句変わらないまま。この状況、綺麗な高校の校舎で小学校時代の教科書を読んでいるかのような落ち着かなさを感じるのは私だけでしょうか。
本作のストーリーって、本筋以外は全部、
モンスターが出る→退治する→帝国に従う
これなんですよ。
別に、個別の領土開拓のストーリーがそこまで凝っている必要はないとは思いますが、あまりにもおつかいが過ぎます。人魚薬を手にいれるイベントとかで強く思いましたが、シュールを超えて軽薄なレベルになっているような……。昔は「まあ、これぐらいしか情報を載せられないし」というエクスキューズがありましたが、現代にはそれが存在しない。
オリジナルへのリスペクトか、純粋に作業が大変なのか、懐古ユーザーへの目配せか、原因はわかりませんが、とにかく、グラやボイスが進化した中でそこだけがそのままだと、結果的にそこが浮き彫りになってしまうなあという話でした。
大神官、要る?
七英雄周りのストーリーは大きく変化、というか補完されました。そもそも、英雄であったはずの彼らがなぜ人々を害する存在に……というのが本作のストーリーのキモです。この補完の仕方にについて、周りでは「うまく補完した!」という声が聞かれますが、個人的にはここはあまり評価できないです。
端的に言うと、大神官というキャラが追加されて、そいつが七英雄たちをハメたから七英雄たちは古代人達を憎むようになった、という方向に変わりました。
これは私の好みですが、最初は善意であったはずの行動がいつの間にかそうでなくなってしまったり、何かを犠牲にした結果、助けたかった相手からも恨まれる、みたいな「誰も悪くないはずなのにどこかで決定的に間違ってしまった話」ってエモいですよね? そういう話かと思ってたんです。ロマサガ2を。私は。
そもそも、大神官、別に悪人である必要はなくない? 彼が悪役じゃなくても、七英雄が堕ちてしまう悲劇は作れた気がします。むしろ、その方がより悲劇性が際立ったと思います。それなのに、勧善懲悪的な悪役を設定したことによって、オリジナルのストーリーにあったエモみがなくなってしまった印象です。また、グラやボイスが進化した分、ストーリーの進行が相対的に軽薄に見えてしまうということを先に述べましたが、その点も悪く作用している感があります。
VTuber と化したキャラたち
今作はキャラデザも大きく変わりました。
最高!
なんだあこのケツは
— hibit (@hibit_at) October 31, 2024
こんな尻でバレンヌ皇帝が務まると思っているのか#ロマサガ2R pic.twitter.com/0mYzKX39SI
そんなケツを丸出しにしてバレンヌ皇帝が務まると思っているのか!?
私は許そう。ここは評価します。ポリコレが叫ばれる世の中で、よくぞこれだけの「火力」を維持してくれました。これは個人的には良いポリコレ否定です。男はイケメンで女はかわいい。ゲームなんてそれでいいんだよ!
ロマサガ2リメイク、女性キャラの衣装がいちいちえっちなんだが
— hibit (@hibit_at) September 19, 2024
これじゃあリベンジオブザセブンじゃなくてハレンチオブザセブンだよぉ…… pic.twitter.com/bdvwEdaIgS
今作は、言ってしまえば VTuber みたいなキャラデザしてます。「ファイアーエムブレム エンゲージ」をプレイした時にも似たようなことを思いました。このスタイルが、現状のオタク・カルチャーの最前線ということでしょう。
男女ともにホロライブにいそうな3Dモデルが動いている様子は、SFC時代とは大きく隔たりがあるように見えます。誰かの感想で「アマゾネスがキャバ嬢みたいだ」という意見を見ましたが、概ね同意できます。当時のドット絵から想像していた世界観(小林さんの絵柄)とはかなり乖離がありますが……まあ、これはもう純粋な老害の感想ですね……。現状の3D技術で表現できる限界ではあるのでしょうが。
仮に(実現するとしてもだいぶ後になると思いますが)、もし「サガフロンティア2」(水彩の世界観がとても美しい)をリメイクするとしても、こういうポップでVTuberライクな世界観でリメイクされたら、反発してしまうかもしれません。
そこは男女平等で良いだろ
さきほど良いポリコレ否定と書きましたが、個人的に思う悪いポリコレ否定もあります。
まず一点、男女の区別があるクラスとそうでないクラスがあり、その境界が曖昧なことです。宮廷魔術師には男と女がいるのに、例えば軍師はいません。オリジナルがそうだから、とは言っても、ゲーム体験を再現する上で絶対保存しなければいけないことか? と言われたら、そうではないと思います。むしろ女軍師とか使ってみたいよ。
いいじゃないですか、多様性の時代だから。ガチムチのサイゴ族(女)がいたり、海女(男)がいたり、踊り子(女)と女性皇帝が恋に落ちたりしても。手間はすごいと思いますが、ゲームのインターフェースが徹底的に改善されているのを見ると、労力の問題よりも、「原作の設定に極力手を加えない」という判断の問題だったのかなと感じます。あと女キャラの方が明らかにデザインに力が入ってるよね?
良くも悪くもクラスの設定をそのまま引き継いだこと、そして、そのキャラデザが VTuber ライク(主に女性キャラ)に特化しているせいで、青年~中年男性向け特化の香りを強く感じさせます。
歌舞伎となりつつある家庭用RPG
このゲーム、七英雄(及び一部のボス)とのバトルの開始には古参泣かせの演出があります。3Dモデルの七英雄が動いて、緩急をつけた後に、SFC時代のドット絵と同じ構図でポーズをドーン!
これはリアルタイム世代の涙腺に特攻ダメージ。しかし、リアルタイムでプレイしていない人にとってはどうなんだろう。
この演出、動画でまとめてくださっている方がいるので、見ていない(かつネタバレを厭わない)方は見ていただくとわかりますが、完全に歌舞伎の見得です。掛け声をかけたくなります。よっ、ワグナス屋! しかし、我々がアガるのは元ネタを知っているからであって、初めてプレイする人に刺さるかどうかはわかりません。
ちなみに、リアル歌舞伎の方の話をしますと、私自身はあんまり観たことないですが、かろうじて勧進帳ぐらいは知っています。そこで弁慶の見得を観ても、まあ正直そこまでアガらないのが率直な感覚です。もちろん、かつては多くの人間が歌舞伎の見得にリアルなカッコよさを感じ、そのような積み重ねの結果、歌舞伎という伝統文化が出来上がったのは確かです。しかし、実情、現代の多くの人間にはあまりにも馴染みがない。
しかし、このような視線は、現代のプレイヤーがこのRPGに向ける視線と同じなのかもしれないという危惧があります。歌舞伎なのは七英雄の見得だけでなく、このゲームの立ち位置そのもの、ひいては正統派家庭用RPGというジャンルそのものなのかもしれません。古参のプレイヤーに向けられて丁寧に保存され洗練されたサービス。もし、その影で、それ以外のプレイヤーを置き去りにしていて、文化としては収束の一途を辿っているとしたら……?
スクエニと XEEN は素晴らしい仕事をしました。私はこのゲームを 100 %楽しめたと思いますし、この座組でロマサガ3もサガフロも(現状の方向性だとやや不安もありますが)サガフロ2もリメイクして欲しいです。発売されれば買うでしょう。
それらリメイクが、私のような(メインターゲットと思われる)プレイヤーが快適に楽しめるように十分な配慮をしてくださることは、もう間違いないと思われます。
ただ、その方向性が、古参プレイヤーのみが楽しめて、他のターゲットを置き去りにするようなものだとしたら少し不安になります。まあ、他人の考え、ましてや性別や世代の違う人の考えなんて全くわからないので、私の危惧が全く的外れであるという可能性もあります。
もしかしたら、最近の女性はソシャゲ痴女みたいなキャラデザも全然いけたり、小学生のキッズも七英雄のポーズにハマッてマネしていたりするのかもしれません。そうでないかもしれません。
できれば、前者であればいいなと願います。