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【日々是食日】#5 ニシン漬けと祖母との距離

発酵ライフ推進協会さん主催の北海道の伝統発酵食「 ニシン漬け作り」講座に参加しました

…場所が、め、目黒区!金持ちしかいない場所じゃん。そんなところにユニクロのワッフルカットソーしか持っていない私が、挙げ句の果てには諸事情によりリュックの私が降り立つ日が来るとは。

しかし、講座があることを知った瞬間に無心でクレカ決済を終えていた私。当日は緊張の汗をかきながら(私の体は感情表現が汗)場違いの目黒区へ。
マンションの一室。受け入れてくれたスタッフさんはとてもやさしい、温かい人たちで安心した。一緒に講座を受けたお二方も温かい方で安心した。高層マンションのようなドライで冷たくてお高い感じだったらどうしようと思ったけれど、皆さんフランクな方々で、わいわいほのぼのと輪に入れてくださいました。

実習の前に、まずは歴史を学ぶ

ニシン漬け。見たことがない人は想像がつかないと思うのですが、簡単に言うと「キャベツにんじん大根とショウガと麹の浅漬け、味付けは塩。最後に身欠ニシンを入れて風味を足したもの」です。北海道の伝統発酵食です。
北海道教室とオンラインで結んでまずは座学。私は東京校ですが、名古屋校と福岡校も結び受講しました。

歴史を知った上でする料理は心も想いもこもりますね

ニシンはその昔、真冬の北海道民の重要なたんぱく源でした。と同時に、北前船に乗って本州各地の文化や食と交換され、北海道に繫栄と文化をもたらしました。京都のニシンそばのニシンもそれです。ニシンの漁獲高が多かったころは、ニシン御殿もたくさんあったそう。1つの屋敷のような家に、ニシンを漁から加工まで、多くの従業員を住み込みで雇えるほど繁栄をもたらしたニシンの歴史を学びました。実際にツアーで行かれたスタッフさんの話を伺って行きたくなりました。


ニシン御殿に思いを馳せ、いざ実習

身欠ニシンは戻してくれていました(まあ戻さないと米のとぎ汁に漬けただけで解散になってしまうからね汗)。バットにそれぞれ、1人分の量が分けられています。おお…いわゆる料理教室だ!と心の中で興奮(初めて)。難しいと思うでしょ?

切ってちぎって混ぜるだけです。

はいこれで出来上がり。簡単だわ。1日で浅漬け、3日くらいでしっかり。米のとぎ汁でニシンを戻しているので、生臭くないんですよ。米麴とショウガ、鷹の爪も入れているので 意 外 と 美味しいんですよ。ほんとに!
みんなでわいわい話しながらの実習は楽しかったです。

ジップロックに入れて、お持ち帰り~。


そして試食という名の食事会!アレンジレシピも美味しい🥰

さて、試食…だったのですが、素敵な食事会になりました。
途中、炊飯器がきらきら星のメロディを奏でていたので「ん?」と思っていましたが、まさかごはんまで頂けるとは…。

①ニシン漬け(ノーマル、アレンジなし)
確か3日くらい漬けたものとのこと。キャベツの歯ごたえ、大根も水が抜けていい嚙み心地。にんじんの風味もいいし、何よりも「噛むほどに麹とニシンの滋味が広がる」のが幸せ。そこにまた金山寺みそをちょっとのせたほかほかの炊き立て白米をひとくち。分かる人が分かればいい、お金で買えない贅沢の味。
②ニシン漬け+クリームチーズ
和えただけ。いぶりがっこ+クリームチーズを知っているかたは想像がつきやすいのではないでしょうか?発酵×発酵の相性の良さ。これにまた発酵のお酒が合いますよね。そりゃあ合いますよね、という正解の味です。
③ニシン鍋
お味噌ベースの鍋に、最後にニシン漬けを入れてひと煮たちもしないくらいで出来上がり。初めての味。私ははまりました。実は酒粕汁の飲んだ瞬間の圧の強さが少しだけ苦手な私でも、寝起きでも頂ける麹の優しい味。頂いたのは白味噌ベースなのがさらに良かったのかもしれません。ちなみに全くニシンの香りはしません。でも出汁にはしっかりうま味が移って美味しかったです。
家でも作ろう。

美味しかった!そしてぬくたなべの話でも盛り上がりました!欲しい…


祖母との距離

ニシン漬け、昔は祖母が作っていました。30キロくらい入る大きな樽を何個も。夕方5時過ぎの冬の八戸。氷点下の中、家の外に置いてある樽のふたをとり、麹と塩の働きで野菜から出た冷たすぎて痛い水の中から手探りで野菜を見つけてボールに取る。ばあちゃんの腕はその瞬間だけだけど、毎日どこまでつけ汁に浸かったか分かるほど真っ赤になっていた。

子どものころ、あんまりばあちゃんと話した記憶はない。すぐに「女のくせに喋るな」「うるさい」としか言われなかったからだ。でも共働きで父母がいない私はじいちゃんばあちゃんに育てられたから、子ども心に少しでも機嫌は取っておきたかった。

ばあちゃんに怒られなかったのは「おいしい」という時だけだった。味の感想だけは喋ることが許された。あとは健康の話。40代の今なら健康の話はついていけるが、当時私が持っているカードは「味の感想」からの「料理関係」だけだった。「ばあちゃん腕冷たそうだね」「冬だもの(どうしようもないことを言うな)」の会話だけだったけど。大学で家を離れるまで、味付けや料理の仕方を聞いてもいい顔はされなかった。

ニシン漬け、大人になって本当は作り方を知りたかったけど、当時大学生の私は実家帰省禁止のまあ相当なモラハラのクズ男と付き合っていたため実家に帰れなかった。とは言っているけど、きっと帰るたびに「女のくせに大学なんか」「家を出るなんて」と小言を言われることが嫌だったからだと分かっている。でもそうこうしているうちにばあちゃんは呆けて、弱くなり、小さくなり、天国に行った。


作り方を聞いておけばよかった料理、たくさんある。

きっと、「郷土料理をたくさん知っておかなければ」と私を突き動かすものは、ばあちゃんへの懺悔なんだと思う。一生拭えないし、拭うつもりはないけど。

そして今、夫と結婚し、自分では選ぶことのない地域をいくつか転々として暮らしている。そして現地で、当時のばあちゃんくらいの年齢の人の料理を教えてもらったり、調べて作ってみたりしている。もともと好きなんだろうな、と思う。呼ばれているんだろうな、とも思う。

郷土料理、気分的にちょっと酸っぱいと感じるのは、その味を繋いできた過程を思ってしまうからなのかな。でもやめられないし、やめたくない。これからもいろいろ覚えて、自己満足したい。
そしていつの日か、自己満足が昇華すればいいな。
そしたら天国で普通に話ができるかなー。

こんどはいしる教室に出よ♪


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