文化財保存専門家、日塔さん 「第五福竜丸」修復保存現場責任者
今春、サン・ファン号を視察
今年4月に復元船サン・ファン・バウティスタ号を視察した文化財保存の専門家、日塔和彦さん(75)が「サン・ファン号船体修理の基本構想」の改訂版を作成した。A4判6ページだった文書は、視察結果を反映させて約12㌻に増量。改めて保存の可能性を示している。【本庄雅之】
日塔さんは、1954年3月に米国の水爆実験で被ばくした木造マグロ漁船「第五福竜丸」の修復保存に伴う現場責任者を務めたほか、文化財建造物修理技術者として多くの文化遺産などの修復保存に携わってきた。
今回は「サンファン号保存を求める世界ネットワーク」(白田正樹会長)の招きで、船体の老朽化で解体が計画されているサン・ファン号の船内を見学。管理責任者から説明を受けながら、傾いたマスト、水漏れ箇所、カビの付着箇所などをつぶさに見て回った。
ドライドッグ工法提案
修理にあたってドッグ内の海水を輩出するドライドッグ方法を用い、3本のマストをはずすこと、船全体を仮設小屋で覆うこと、文化財建造物修理の手法であたることなど冒頭の提案概要はほぼそのまま。
船体の破損状況については、降雨や波浪など水分による腐朽、海水が原因の腐朽などをあげて詳しく説明。害虫による被害は見られないとした。外板、甲板、マストなど具体的な各部の状況を記述してある。
また、日塔さん自身が7年前に調査した時の破損状況との比較も新たに添えた。
参考に日本船舶海洋工学会提案のドライドッグ工法を付記。ドッグ内で船体に補強を施したうえで排水を開始し、ドッグ内に砂を流し込んで固定させる。その後、雨を避けるため船体を覆う屋根を着ける。船体を内部から補強した後は、砂を排除するといった具体的手順を示した。
覆屋(展示・収納建物)の項では、サン・ファン号を覆うには梁間30㍍、桁行60㍍程度が必要で、建築面積は1800平方メートルと具体的な数字をあげた。
「世界ネット」では今回の改訂版も今後の検討材料にするという。
また、世界ネット代表者らは、県に解体に伴う予算の執行停止などを求めて23日に仙台地裁に提訴する。
・3本のマストは大地震後の突風で折れ、その後の修理で取替えられている。
・しかし、舳先に迫り出すバウスブリットは折損を免れ、そのまま使用されているが、片持ち梁(カンティレバ)のために前方へ抜け出しており、さらに腐朽も加わって折れそうになっている。ちょっとした衝撃で落下する可能性があり、危険な状態となっている。
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