津波受け船体腐食進む 復元船解体・市民反対の声
―県慶長使節船ミュージアム=石巻市渡波=の木造復元船「サン・ファン・バウティスタ号」の解体工事が進んでいる。市民団体は修理して保存することが可能だとし、係争中だが、これ以外にも市内では解体に反対する声が多い。これをどう受け止めるか。
村井嘉浩知事 解体に反対する声が上がっていることについては、それだけ復元船が多くの皆さんに愛され、支えられてきたということを改めて感じている。私も(解体は)非常にもったいないと思う。何とか復元できないか、今までと同じようにできないかと調べたが、東日本大震災の津波による影響が大きく、船そのものが腐食している。
係争中であるため詳細な回答は差し控えるが、慶長遣欧使節の偉業を継承していきたいという思いは、私たちも同じ。今の復元船が解体された後も、より多くの皆さんに愛され、魅力あふれる施設となるよう、ミュージアム全体のリニューアルに取り組んでいきたい。
―船内の様子を視察したと思うが。
私が見に行ったときに管理している方が工具でトントンとたたいたらぼこっと穴が開いた。手で触ってもベコベコしており、それだけ腐食が進んでいるのが確認できた。水を抜いてしまえば自重でつぶれる。水に浮かせた状態で直せればいいが、それだけの技術を持った船大工は見当たらない。
震災の津波による被害が大きく、本来、すぐに手をつければよかったが、あの時は命と生活再建が最優先。サン・ファンに目がいかず、2―3年後になってしまい、その間に腐食が進んだ。そこは理解をお願いしたい。
―近年はミュージアムの来館者数も芳しくなく、4分の1サイズの後継船で集客が見込めるのかは疑問の声もある。工事のスケジュールを含め、リニューアル後は何を目玉としていくのか。
まず復元船の解体工事は本年度中に完了する予定。今後は、令和4―5年度にかけて4分の1大の後継船及び展示物制作のほか、現ドック部分の埋め立て工事、建築整備改修工事などを実施し、6年度中のリニューアルオープンに向けて取り組んでいく。
―解体した復元船の部品なども展示していくのか。
当然考えており、見るだけでなく、体験も視野に入れる。具体的にはこれからだが、子どもたちが宮城の偉人と偉業を学べる場にしたい。リニューアル後はより分かりやすく慶長遣欧使節の歴史、海洋文化を紹介する施設として新たに制作する後継船や、現在のミュージアムにはない新たな展示方法を取り入れながら、何度も足を運んでもらえるような魅力ある施設にしていく。【外処健一】
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