加速する高齢化と人口減 雄勝・牡鹿地区 産業、観光絡めた対策で
雄勝、牡鹿地区はともに東日本大震災で各浜が甚大な被害を受けた。復興事業や住宅の高台移転で地域の形が変わる中、人口減少や少子高齢化の加速でそこに住む人が減っている。基幹産業である水産も若手の人材不足とリタイアする高齢者が重なり、予断を許さない状況。災害公営住宅も空き室が目立っており、産業の維持と定住化が課題の波として押し寄せている。
探る地域 課題⑤
■災害公営住宅に空き
雄勝、牡鹿地区は震災から11年が過ぎ、津波から地域を守る防潮堤や人が集う観光交流拠点施設などが整うも人口は減り続け、石巻市でも高い高齢化率となっている。
雄勝は震災前の平成22年で人口4435人、65歳以上の高齢化率は39.03%、牡鹿は同年で4611人(高齢化率40.27%)となっていた。令和4年現在、雄勝が1090人(同59.08%)、牡鹿は2193人(同52.03%)と人口減少が進み、市内で50%を超す高齢化率はこの2地区となっている。
両地区の基幹産業である水産業も震災から復興し、多くの漁業者が海に戻ったが、高齢で廃業を決めた人もいる。世代交代も進んでいるとは言えず、近い将来、漁業者の激減も危ぐされる。
立候補を予定する現職は「水産物のブランド化、ネット販売の強化など付加価値と販路拡大で収入を見出すことが必要。漁協組合員の条件を緩和するなど入りやすい環境も整えたい」と話す。
一方、震災後に整備された災害公営住宅では空き室が増加。時間の経過とともに入居者が亡くなったり、高齢者施設に移ったりするケースが目立つ。市は民間アパートがない半島沿岸部で入居者の所得上限などを緩和する「みなし特定公共賃貸住宅制度」を導入し、若い世代の入居や地域への定着を図るなど対策に乗り出している。
雄勝地区では、公営住宅に入居する移住者もいるが、新居を建てて定住したいと思っても、海際の低地は災害危険区域で家を建てることができず、造成された高台も埋まっており、土地を求めることができないという。
現職市議は「家を建てる場所がないのは大きな問題。すぐに答えは出ないが、各浜を結ぶ県道の拡幅も含めて市全体で考え、解決していくことが重要」と語るが、明確な対応は見当たらない。
■資源活用を模索
地域特有の資源を活用した観光施設は関心度も高い。雄勝地区の道の駅硯上の里おがつは、昨年4月とコロナ禍での開所となったが、行動制限が追い風となり、〝安近短〟で県内から人が訪れた。令和元年に開所した鮎川浜の観光拠点施設「ホエールタウンおしか」も牡鹿半島を巡る人たちでにぎわっている。
立候補の準備を進める新人は「水産業を絡め、観光のまちとしてさらに人を呼び込む手段が必要」と話す。その上で「震災前は地区のコミュニティーが機能していたが、今は移転などで分散し、一体感に欠く。振興策も含めて対応しなければ過疎化はさらに進んでしまう」と危機感を抱く。
地域資源の活用と魅力を伝え、浜に人を呼び込みながらにぎわい創出につなげていけるかどうか。同じ市内でも公共交通機関を含めた環境整備も進んでおらず、まだまだテコ入れが必要な地域に変わりはない。【渡邊裕紀】