日本製紙石巻が逆転勝ち|第95回都市対抗野球大会
11年ぶり 初戦突破 5―4でKMG(福岡市)下す
社会人野球の最高峰、第95回都市対抗野球大会(19―30日、東京ドーム)は23日、一回戦3試合が行われた。4年ぶり6回目の本戦出場となった東北第2代表の日本製紙石巻(石巻市)は、九州第1代表のKMGホールディングス(福岡市)に5―4で逆転勝利し、11年ぶりに白星を飾った。石巻市民や日本製紙関係者などで作る約5千人の大応援団が一塁スタンドを埋め、大声援を届けた。次戦は25日午後6時からNTT西日本(大阪市)戦に挑む。
【山口紘史】
日本製紙バッテリーは共に新人の生長蓮投手と坂口雅哉捕手が先発。生長は多彩な変化球と低めに集める制球がさえ、5回3被安打9奪三振1失点と流れを作った。
打線は、プロ注目右腕の木下里都に対し二回まで三者凡退だったが、三回表に先頭佐藤晃一の二塁打でチーム初安打。1死二、三塁として小林俊輔の適時打で逆転した。続く四回も先頭水野隼翔の三塁打などで2死一、三塁とし、佐藤晃一の一振りで1点追加した。
しかし七回、3番手で補強投手の佐藤亜蓮(TDK)と4番手の相内康佑が打ち込まれ、この回3失点し、逆転を許した。KMGに1点リードされたまま最終回に突入するが、本当のドラマはここからだった。
日本製紙は最年長の代打小野悠介(33)から宮川将平、補強の石井信次郎(七十七銀行)の3連打で1点返し、なおも無死二、三塁から佐藤晃一の左犠飛で1点を加えて再び逆転。八回から登板した6番手秋田稜吾は九回に味方の失策などで1死一、三塁の窮地に陥るも最後は左飛に打ち取った。
伊藤大造監督(57)は「11年ぶり初戦突破。非常にうれしいが、2次予選からこんな試合ばかりで足が震える。選手が粘り強く戦ってくれた」と称賛。生長投手(22)は「変化球で抑える自信があった。勝利に貢献できてうれしい」。坂口捕手(22)は一塁スタンドの応援団に感謝し、「東京ドームでこんな景色の中で勝てたことは幸せ」と笑顔を見せた。
2打数2安打2打点と活躍した指名打者の佐藤晃一選手(24)は次戦のNTT西日本戦について「相手は一回戦をコールド勝ちしている強敵だが、引いたら負け。粘りと勢いでまた良い試合を見せたい」と話した。
歓喜に沸く5千人応援団
石巻市を背負う選手後押し
石巻市の代表として戦う選手たちを後押ししようと、東京ドームの一塁側スタンドには石巻市民や圏域の野球ファン、日本製紙本社社員、関連企業などから約5千人が駆け付け、大応援団を編成。日本製紙石巻工場勤務の社員で構成する応援団を中心に、シンボルカラーの青いマフラータオルを掲げて熱い声援を送り、チアリーディングや吹奏楽の演奏も花を添えた。
イニング間の応援合戦では石巻市の観光PRキャラクター・いしぴょんが登場。石巻工場の応援団が大漁踊りを披露したほか、日本製紙石巻のダイヤモンドサポーターを務めた萌江さん(いしのまき観光大使)は選手と一緒にベンチに入り、笑顔と元気で盛り上げた。
ドーム中央のスクリーンに「石巻市」の文字や市章が映し出されると、客席の石巻市民は感慨深そうな表情で眺め、写真や動画で残す姿もあった。応援団は好プレーが飛び出すたびにドームが揺れるほど歓喜に沸き、窮地でも声を枯らしてパワーを送った。
また日本製紙石巻工場が主催した、石巻市民や野球部後援会など対象の応援ツアーには約300人が参加。一行は新幹線を貸し切るなどし、石巻と東京ドームを日帰り往復した。
「いつか僕も」球児夢描く
両親と参加した阿部禄さん(石巻小6年)は少年野球の石巻小レッドベンチャーズの投手。「日本製紙の野球教室で教えてくれた佐藤晃一選手が大活躍していてうれしかった。いつか僕も東京ドームのマウンドに立ってみたい」と夢を描いた。
石巻野球協会の森山行輝会長(76)は「石巻市の看板を背負って戦い、勝ちを手繰り寄せた選手の頑張りは地域に勇気と感動を与えた。本当に素晴らしい試合で、ナインの気持ちの強さを感じた」と語った。