石巻市蛇田の横山酒店 51年の歴史に幕
昭和48年創業の「横山酒店」(横山隆子店主)=石巻市蛇田=が、51年の歴史に幕を下ろした。15日には長年の感謝を伝えようと常連や地域住民を招き、店に残った酒を手料理とともにお振舞い。思い出を語り合う店内には楽しげな笑い声がこだました。
蛇田バイパス沿いの自宅兼店舗で隆子さん(76)の夫、初夫さん(享年55)が創業。初夫さんが亡くなってからは20年以上1人で切り盛りし、日曜以外は毎日、店を開けた。
「お父さんがいなくなってから、何度も投げ出したくなっては近所の人や友人に助けてもらった。周りの支えに心から感謝している」と隆子さん。事あるごとに周囲に気にかけてもらったことが何よりの支えだった。
握手と笑顔で「ありがとう」店に残った酒振る舞う
昨年、50周年を機に店をたたもうと考えたが「もう少し」と営業を続けた。一方で体調は優れず、冷蔵庫など大型機器は寿命を迎えていた。「もう十分かな」。長女次女に背中を押され、4月に閉店を決め、5月末で店を閉じた。
この日は常連客や住民ら30人ほどが店に集まった。売れ残った日本酒や焼酎、ビール、缶チューハイなど約50種類から選んだお好みを片手に乾杯。初夫さんの幼なじみで夫妻と長い付き合いの黒須正孝さん(78)が音頭をとった。
隆子さんと長女、公美さんが作った巻きずしや煮物、とりのから揚げ、フライドポテトなど料理のおいしさもあいまって、中には酔いどれに歌い踊り出す人の姿もあった。
「初夫ちゃんが亡くなってから、隆子ちゃんはよく1人で切り盛りしてきたよ。これからもここで集まれたらいいよね」。そう語りかけた黒須さんが握手を求め、隆子さんは照れ臭そうに応じた。
会は2時間半ほどでお開き。隆子さんは手土産に酒を渡しながら全員を見送った。「湿っぽいのは嫌で、こうしてみなさんに『ありがとう』と伝えられてよかった。たくさん飲んで食べてもらい、明るく締めくくれてなにより」と笑顔で語っていた。【泉野帆薫】
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