震災遺構 大川小の公開始まる 教訓語り継ぐ校舎、伝承館
遺族「展示物は更新必要」と指摘
石巻市が東日本大震災犠牲者の追悼と教訓を伝える遺構として周辺整備を進めてきた旧大川小学校が18日、開場を迎えた。市や県の関係者と大川小遺族ら約60人が出席し、校舎前の献花台に花をたむけた。整備された大川震災伝承館も見学し、尊い命を失った10年の月日を振り返った。一般公開も始まり、訪れた人たちは被災校舎や展示物を目に焼き付けていた。【横井康彦】
大川地区は震災で418人が死亡、行方不明となり、大川小では児童74人、教員10人が犠牲となった。遺構は追悼の場、震災時の事象や教訓を後世に伝える施設として旧大川小敷地を活用。校舎は外側からの見学だが、南側からは教室の様子などが確認できる。校庭跡地が認識できるよう、朝礼台も設置し、児童たちの震災前の様子を思い起こせるよう配慮した。
校庭西側の伝承館は、木造平屋建て(300㎡)で、管理室や展示室、多目的区画で構成。展示は大川小事故、新北上大橋周辺地理、震災時の被害状況をまとめたパネルが中心となった。津波襲来時刻で止まった時計や子どもたちに人気のあった一輪車の実物のほか、地域を把握できる模型、裁判資料(判決文)や被災写真も閲覧できる。
語り部活動を行う佐藤さんが10年の歩みを振り返った
開場式で齋藤正美市長が「二度と同じ犠牲を出さないため、避難の重要性、学校での事前防災など自分事に考える場にしていきたい」と述べた後、代表者、出席者の順に献花台に花を添えた。出席者は被災校舎や伝承館を巡り、10年前の様子と歩みを思い起こしていた。
大川伝承の会共同代表で、遺構の基本設計プロポーザル選定委員を務めた佐藤敏郎さん(57)は「開場式には子どもたちや地域の方が集まり、『たくさん人がきているぞ』と窓から見ていた」と振り返る。「10年かけてようやく市と話し合いの体制ができ始めた。現状伝承館の展示は、説明不足やわかりやすさに欠ける面がある。これまでの10年の過程も大事であり、アイデアをアップデートしていく必要がある」と語る。
伝承館では震災当時の様子や地域の地理が学べる
大川小児童遺族の佐藤和隆さん(54)も「被災3県の伝承施設の内容量が10とすると、現状ここの伝承館は2。震災前の学校の防災マニュアルがどうで、なぜ検証委員会が設けられ、裁判になったのかというプロセスが欠けており、内容を更新する必要がある。将来的に校舎の中に入って見学できるようになれば」と願った。
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