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語らいと憩いの場 石巻市中央・喫茶店「加非館」 復活

元本紙記者が思い継ぐ

 石巻市の中心市街地にあり、昨年12月に惜しまれつつも閉店した喫茶店「加非コーヒー館」=同市中央二丁目=が11日、同じ場所で営業を再開した。前店主の須藤哲也さん(79)から店を引き継いだのは、石巻日日新聞社の元記者で、石巻名画座を主催する本庄雅之さん(65)。店に通っていた縁があり「どうしても残したかった」と須藤さんに直談判し、店舗を借り受けた。ブレンドコーヒーや各種トーストといった人気メニューも残した。営業時間は午前11時―午後6時。月、火曜定休。

本庄さん自らハンドドリップして、お客さんに提供しています。

 加非館がオープンは昭和49年。須藤さんが東京の老舗喫茶店「珈琲館」にアドバイスを受けた縁で、珈琲の漢字から部首を抜いた店名にした。木材を使った店内は落ち着きがあり、いつしか多くの市民に愛される喫茶店となった。東日本大震災も乗り越えて営業を続けたが、須藤さんは体力的に限界を感じ、昨年12月に店を閉じた。

 それを聞いた本庄さんは一念発起し、店を継ぐことを決意。同じく閉店を知り須藤さんに連絡を取っていた阿部祐司さん(57)=登米市=も協力し、須藤さんからトーストの作り方なども学んだ。その間、空調設備の入れ替えやトイレの改修も進め、営業再開に向けて準備を進めてきた。

 店名は今まで通りの加非館とし、外観や内装、テーブル配置も以前のまま。11日のオープンはほとんど告知していなかったが、口コミで耳にした常連客らが店に続く階段を懐かし気に登り、香ばしいコーヒーの香りを吸い込んだ。

社交の場となっていた名店が復活し、常連客を喜ばせている

 コーヒーの入れ方はサイフォンからハンドドリップに変わったが、喫茶店で焙煎技術などを学んだ阿部さんが豆を厳選し、高品質が売り。人気だった「コンビーフトースト」などの軽食類もあり、雰囲気はかつてのまま。

 本庄さんは、中心市街地の衰退に危機感を覚え、「人が集まって語らう社交の場を、まちなかに残しておきたかった」と引継ぎの経緯を語る。店は4人で切り盛りしており、阿部さんも「以前から須藤さんに縁も恩もあるため、この店で働きたかった」と話した。

 昭和の香りを残す名店に、人の縁で再び灯がともされた。【渡邊裕紀】

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