五輪開会式で聖火ランナー 青葉中3年 菅原千嘉さん 聖火台に夢への努力誓う
東京五輪開会式(7月23日)では、東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島3県の小中学生6人が聖火ランナーとして国立競技場内を駆けた。宮城代表の1人として大役を務めたのが石巻市立青葉中学校3年の菅原千嘉さん(14)。「震災の記憶と石巻市の復興、手厚い支援に対する感謝の気持ちを国内外に伝えようと頑張った。県代表として大舞台で走れたことは誇り」と振り返った。
震災復興 世界に発信
菅原さんは兄の影響で幼少期からサッカーに励み、現在は同校での部活のほか、マイナビ仙台レディースジュニアユースに所属。持ち前のスタミナとスピードを武器に運動量の多いサイドバックを担う。聖火ランナーの大役は自らの志願ではなく、県五輪推進室や所属チームからの推薦だった。
白羽の矢が立ったのは両親、学校関係者には事前に知らされていたが、サプライズ重視のため、菅原さんが知ったのは本番のわずか3日前。開会式のリハーサルでのことだった。
何も知らされないまま国立競技場に赴いた菅原さんは、大会組織委の橋本聖子会長から直々に「復興五輪を世界に発信するため、開会式の聖火リレーでランナーを担ってほしい」と求められ、本番で着るユニホームや靴、靴下などを手渡された。唐突な出来事に「驚きすぎて言葉が出なかった」と菅原さん。その後、3日間は東京と石巻を行き来し、入念な予行演習を重ねた。
そして本番。各国選手が集う中、121日間かけ、47都道府県1万515人のランナーがつないだ聖火が国立競技場に入場した。柔道男子の野村忠宏氏やレスリング女子の吉田沙保里氏、元プロ野球選手で国民的スターの王貞治氏、長嶋茂雄氏、松井秀喜氏らがトーチを手に走る中、最後は菅原さんを含む6人の子どもたちが最終走者のテニス女子、大坂なおみさんにつないだ。
ユニホームを着てトーチを手に式典の様子を語る菅原さん
6人は火が灯った1本のトーチをそれぞれ1回ずつ持ち、菅原さんは2番目に手にした。6人で手を振りながら走った距離はわずか数十㍍だったが、何にも代えがたく忘れられない時間となった。
10年前、震災の津波で釜地区にあった菅原さんの家は全壊し、暮らしは一変した。当時4歳だったが、津波が押し寄せてくる恐怖は今も目に焼き付く。家族は無事だったが、仲の良かった友だちが犠牲になった。
「亡くなった友だちの分も頑張って生きていかなければと、ずっと胸に刻みながら突き進んできた」。聖火台に灯った炎を間近で眺めつつ、菅原さんは「プロサッカー選手になる」と夢への思いを強めた。
来春以降は、高校生対象のマイナビ仙台レディースユースで活動する。憧れは女子サッカー日本代表〝なでしこジャパン〟でも活躍した澤穂希氏と坂井優紀選手。「私もトップリーグを目指し、いずれ世界で活躍する選手になりたい。日本に、石巻に笑顔を届けられるように頑張る」。大舞台を経験し、夢を広げていた。【山口紘史】
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