「堤防と水辺空間」 ⑤提言 住民の行動、協働、発想力
昭和の石巻、特に旧北上川沿いの中心地市街地は商業で目覚ましい発展を遂げたが、モータリゼーション(自動車社会化)進展に伴う都市構造の郊外拡大や200海里漁業水域設定などで商業機能が衰退し、人口も徐々に減少。平成以降は大型商業施設の進出で、経済の中心は中里や蛇田地区(新市街地)に移った。欲しい物は大抵手に入る新市街地の利便性にかなわないことは、認めざるを得ない。
(株)街づくりまんぼうの苅谷智大さん(36)も「川と共に歴史を紡いできた中心市街地は、石巻人にとってかけがえのない地だが、いま、ここを商業の要素だけで盛り上げるのは難しい」と話す。しかし「だからこそ〝物〟ではなく〝楽しい〟というモチベーションをまちなかに持ってくることが重要。極端な話、楽しさは金がなくても、住民の協働と発想で創出できる。川や堤防だけでなく施設や商店、そこに住まう人の魅力や歴史文化も含めて生かすべき」と説く。
住民が比較的自由にやりたいことをかなえられるのが中心市街地の特長であり、堤防空間にもある強み。マンガロードや石ノ森萬画館もあるため、観光客も呼び込みやすい。つまり資源は十分。石巻市の復興計画で中心市街地をコンパクトシティーにしようと話が進んだのも、ここに理由がある。
かさ上げや道路工事が進む中瀬地区も使わない手はない。活用はこれからだが、例えば川辺でデイキャンプやバーベキューなどが楽しめる場になれば面白い。山間のキャンプ場に行くよりアクセスも良く、景観も申し分ないので、内外から親子が足を運ぶだろう。
ここまで堤防空間や中心市街地の話を中心にしてきたが、地域活性において、ここだけを盛り上げるのではもったいないとも感じる。旧北上川流域の他地域ともつながり、相乗効果でにぎわいを広げる機運も大事だ。
苅谷さんは「上流の運河交流館やそこから見る景観も素晴らしい。新設堤防でマラソンや自転車大会を催すのも良い。堤防空間を起点に楽しさが広がるのが理想。観光客だけでなく、誰もがもっと広く川に親しみ、石巻の魅力を感じてもらえれば」と見据えた。
旧町を見渡せば、ホエールタウンおしかや道の駅上品の郷、硯上の里おがつなど中核施設が点在する。これらと中心市街地を車で行き来して楽しめる仕掛けを作り、相乗効果を生む方法もある。そう、楽しみの種は市内にたくさんまかれているのだ。これをどう使って地域活性につなげていくか。住民の行動力と協働力、発想に掛かっている。
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