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「三陸道全線開通」 ③対応 立ち寄り促進へ戦略会議

 三陸道(三陸沿岸道路)完成後の対応として、仙台河川国道事務所は昨年6月、県内での利活用に向けた戦略会議を立ち上げた。石巻地方を含む沿線12市町の副市長、副町長が参画。市町を超えた活性化策のほか、素通りによる交流人口の減少を防ぐ立ち寄り促進策を検討していく。

 地域活性化や観光振興を市町が単独でするだけなく、連携することで三陸道の整備効果を最大限に生かしていくための会議。東日本大震災後は特に10年での整備を急いできたが、昨年3月に県内の区間が全線開通し、局面は本格的な利活用へと移った。同事務所の担当課は「沿線がタッグを組んだ方が広報しやすいし、目にもつきやすい。情報を共有し、一つずつ連携した取り組みができれば」と話す。

 石巻、登米、気仙沼地方を含めた三陸沿岸エリアの観光入込客数は震災直後に半減したが、復興の進展や震災の教訓を学ぶ教育旅行の需要があり、新型コロナ前の令和元年には平成22年の1.2倍にまで増加。人口が減る中、交流人口の増加は地域経済を回す上でも重要になる。

 バスツアーも数あるが、最も気軽なのはコースが自由なマイカーでのドライブ観光だろう。三陸道から下道へ誘う工夫が要る。戦略会議で一例として挙げた岩手県では、本線上にサービスエリアがないため、インターチェンジ最寄りの道の駅やガソリンスタンドの情報をまとめた立ち寄りマップを作成。同県内の三陸道はトンネルが多く景色の変化が乏しいこともあって、寄り道したくなる。

 同事務所は施策の一つとして、地域住民や行政、NPOなどの協働による「風景街道」の取り組みを支援。地域の主要な道を舞台に自然、文化、歴史を生かした美しい景観を作っていく運動だ。県内ではすでに2ルートが登録され、三陸道沿線での展開も期待する。

 自転車で地域を周遊するサイクルツーリズムも注目される。三陸道と無関係のようだが、自動車の往来が三陸道に流れることですいてくる下道の活用である。県内では沿岸部の震災遺構や伝承施設などを巡るルートが設定されており、より安全に周遊できるようになる。その街の景観や風土を感じたいのであれば、下道の方がいい。

 石巻市内にも伝承施設が点在。新しい観光拠点や鯨など独自の食文化もある。石巻観光協会の後藤宗徳会長は「三陸道の延伸は関東以北から三陸沿岸を旅するきっかけを作った。母数は増えているので、地域ならではの資源をもっと掘り下げ、石巻に寄るべき理由、ICを下りる理由を示したい」と先を見据えた。【熊谷利勝】



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