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「シルクロード」の喜多郎さん演奏

旧友ニコルさんゆかりの宮野森小で

 グラミー賞受賞の世界的アーティストで、シンセサイザー奏者の喜多郎さん(71)が、東松島市で初のコンサートを開いた。深い親交のあった環境保護活動家、C・W・ニコルさん(1940―2020年)ゆかりの宮野森小学校を訪ね、代表曲「シルクロードのテーマ」や「キャラバンサライ」などの楽曲を映像に乗せて披露。バイオリニストで、東松島ふるさと大使の鹿嶋静さん(45)=同市出身=と共に壮大で創造的な演奏を届けた。

 コンサートは8日夜にあった。9月4―7日に防災体験型宿泊施設「キボッチャ」で開かれる「なないろの芸術祭」(同芸術祭実行委主催)に先駆け、「狼煙(のろし)上げ」と題して無料で開催。市内や石巻市などから216人が来場した。

鹿嶋さん(右)との協演で映像を投影しながら楽曲を披露した

 喜多郎さんは愛知県豊橋市出身。80年代放送のドキュメンタリー番組「シルクロード」やオリバー・ストーン監督の映画「天と地」(1993年)の音楽を手掛けるなど国内外で活躍する。平成13年には、アメリカの音楽界で最高峰とされるグラミー賞を受賞した。

東松島市で初のコンサートを行ったシンセサイザー奏者の喜多郎さん
東松島市内外から216人が来場した

 東松島市でのコンサートは、旧知の仲であるニコルさんが創設を支援した宮野森小が会場。環境保護に従事し、何度も食事を共にしてきた。ニコルさんの出棺時は、喜多郎さんが笛を奏でて送り出したという。上演前、喜多郎さんは「ニコルさんの作った(長野県の)アファンの森へ、『行ってきます』と声をかけてから来た。音楽と映像を楽しんで」とあいさつした。

 コンサートは同校6年生の和太鼓演奏で開幕。その後、喜多郎さんと鹿嶋さんのステージとなり、大きなスクリーン(縦10㍍、横15㍍)に楽曲にまつわる映像を投影し、音楽を届けた。「シルクロード」に加え、「古事記」と宇宙のつながりを描いた楽曲を披露。シンセサイザーとバイオリンが織りなす美しく壮大な演奏で会場を魅了した。

 来場した高須賀典子さん(79)=石巻市蛇田=は「息をつくのも忘れるくらい素晴らしかった。シルクロードを観ていたときの気持ちがよみがえるようで胸がいっぱい」と感無量で語った。

ふるさと大使・鹿嶋さんと協演

終演後の鹿嶋さん(左)と喜多郎さん

 コンサートは鹿嶋さんが喜太郎さんに声掛けして実現。本来、東日本大震災から10年の令和3年に行う予定だったが、コロナ禍でオンラインでの開催となっていた。鹿嶋さんは「やっと喜多郎さんの生の音楽を地元に届けられた。会場に来ていた子どもたちにとっても、本物の芸術に触れる機会となっていればうれしい」と話していた。

 終演後の取材に喜多郎さんは「ニコルさんの思いがこもった木のぬくもりあふれる場所でコンサートが開けた」とほっとした表情を浮かべた。その上で「初めて東松島を訪れたが、縄文村など歴史的に大切な資料を持つ土地であることを知った。震災の経験も踏まえ、自然とともに生きていくためのアイデアをもたらし、新しい生き方へ導いてほしい」と語った。【泉野帆薫】

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