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子どもと大人のつなぎ役 復興の先見据えた教育支援 かぎかっこPJ代表 神澤 祐輔さん

 震災後、石巻市に住んで地域の若者たちと商品開発やまちづくりに携わってきた神澤祐輔さん。平成25年から復興を見守りながら地域の担い手育成に力を注ぐ。「震災を直接体験していない、記憶にない若者たちが増える中、新しい世代に伝え、残していく教訓や記憶が不可欠」と話す。

 神澤さんは兵庫県三木市出身で、小学生のころ阪神淡路大震災を経験。震源地から離れていたが、朝に大きな揺れがあってとても驚いた。その後、京都で内装などを担当するデザイナーとして仕事をしていたが、まちづくりに興味があり、震災からの復興に関わることができればと、大阪にあるNPO法人に転職して平成25年11月に石巻市を訪れた。

震災後、高校生が主体で運営したカフェ「 」(かぎかっこ)

 フィリップモリスジャパン(株)と日本財団などが共同で行っていた支援プロジェクトに参加し、高校生たちがつくるカフェ「」(かぎかっこ)の管理リーダーとなった。震災を経験し「石巻のためになにかしたい」と願う高校生たちと接し、神澤さんも「テレビで見ていた震災と現場で感じることは全く違った。聞いてみないと分からないことが多かった」と震災が地域に与えた大きさを痛感した。

 「私が石巻にきたころはすでにがれきもなかったが、そこかしこに空き地があって震災の爪痕を感じた。学んできたデザインで力になりたいと思った」と振り返る。その後、同27年にNPO法人かぎかっこプロジェクトとして独立し、若者たちと地域をつなぐ取り組みを続けている。

 地元企業と高校生が共同した商品開発、古里の課題を見つめる教育プログラムなど、その関わり方は多岐にわたる。過ぎ行く時間の中で変化していく意識も感じてきた。「震災を経験した子どもたちは、古里のため、復興の力になりたいという思いが強かった」と神澤さん。

今も精力的に高校生の教育に携わる神澤さん

 「10年を過ぎたあたりから、子どもたちが震災の話をすることが少なくなってきた。地域の今や未来に目が向いており、大きな変化だと思う」

 実際に目の当たりにした世代とは違い、震災は幼いころの記憶であいまいになっている若者も多い。神澤さんは「私も震災を直接体験しているわけではないが、教訓を持つ大人と子どもたちをつなぐことはできる」と橋渡し役を担う。

 震災後、地域外から多くの人がボランティアに入り、今まで見えなかった地域の魅力も発掘されたという神澤さん。「震災がきっかけで見つけたものをつないでいきたい。活動に参加した高校生が、いつか自分の言葉で石巻のことを話せる人になってくれればうれしい」と願う。

 最初は〝よそ者〟だった神澤さんも地域に魅せられ、住み続けることで地元民となった一人。子どもたちに学びの場を提供する活動は今後も続く。
【渡邊裕紀】





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