犯罪、事故にもコロナ影響 事件この一年 意識と備えで治安維持
全国で刃物を使った犯罪や不特定多数を巻き込む凶悪犯罪が増加した。県内でも子ども園に刃物を持った男が侵入する事案があり、石巻圏域の保育施設などでは不審者対応の強化が迫られた。石巻署管内では、飲食店での酒類提供が再開されて以降、酒が絡んだ粗暴犯、飲酒運転が急増。特殊詐欺被害も相次ぐなど、下半期は慌ただしい情勢となった。
石巻署管内における刑法犯認知件数は、11月末時点で605件(前年対比145件減)と、昨年より治安が安定したように思えるが、その中でも9月20日に東松島市矢本地区で棟続きの借家で放火事案が発生し、近隣住民が未明に焼け出される事案が起きた。また、コロナ禍で経済的な影響を受ける市民の心の隙を突くように、自治体や金融機関職員を装った還付金詐欺が9月中旬から10月上旬にかけて集中。還付手続きと称し、実際はATMで送金操作を行わせる手口で、13件922万円の被害が出た。
なかでも登米市内の子ども園に刃物を持った男が侵入した事案は、地域に強い衝撃を与えた。近隣自治体での事案であり、模倣犯の発生も懸念されるとして、石巻圏域の保育施設から警察に対する不審者対策の指導を求める連絡が集中。このため警察は、保育所などの関係者を集め、合同での研修会を実施し、刺股を使用した制圧方法を指導した。自治体も防犯カメラの設置を強化するなど、抑止対策に動き出した。
一方交通情勢は、人身事故が約250件(前年316件)発生し、死亡事故は3件だった。物損事故は3300件(同3314件)と微増した。死亡事故のうち、石巻市大門町で発生した事案は、震災後の区画整理で道路幅員が変更され、走行時の優先関係も変更となっていた道路で起きた。道交法では、幅員の広い道路が優先道路となっており、幅員が狭い路線から合流する場合は、標識がなくても安全を確認する運転操作が求められる。石巻圏域では、震災後に新設道路が多く生まれており、震災前の感覚で運転しては、重大事故の発生を招く。運転免許取得の際に学んだ交通ルールにのっとらなければならない。
今年は、日本自動車連盟(JAF)の「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」で、昨年全国最下位だった宮城県(5.7%)が、全国4位(51.4%)にランクアップした。横断歩道を利用する人々を保護する意識が向上していることが数字で示された。一方で2台に1台が不停止という現状でもある。東松島市では、小中学校の通学路に歩行者保護を訴える横断幕を設置し、地域発信での取り組みを進めている。こうした取り組みが他地域でも増えることが鍵になる。
コロナ禍に伴う不安やストレス、経済的影響は、少なからず犯罪や事故にも影響を与えている。苦しい時代こそ、住民個々で防犯意識、安全運転意識を高め、地域の安心を維持する必要がある。圏域住民一丸で、令和4年の治安を確保したい。【横井康彦】
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