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アルモンデごはん 9月の新月に向かって
自分のためにごはんをつくるのと同じくらい、いやそれ以上に好きななことは、誰かと一緒にごはんをつくることです。みんなで作ってみんなで食べる。それはいつだって私が100%幸せになれること。お互いを信頼しているからこそできることだよね。だって、食は人を生かすこともダメにすることもできるから。
9月の新月に向かうごはん
<9月11日>
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お互い個性的なボスのもとでアシスタントをしてた頃(彼女は今も継続中)に出会った友人とお仕事。お仕事を一緒にするのは初めてだから、とても楽しみにしていました。パーティーのケータリングなんていつぶりだろう。この日は仕込みDAY。畑もやっている彼女が地元から運んできた野菜はどれも生命力に溢れていて、触っているだけでもパワーチャージされるものばかり。こんな野菜を毎日食べていたら、健康になるしかないって感じでした。お陰様で色々な仕事をさせていただいていますが、その中でもアシスタント業をこよなく愛しています。アシスタントのメイン業務といえば下拵え。下拵えも大好きです。野菜の汚れを落として、適切な大きさに切って、必要であれば火を入れたり下味をつけたり。日常で何気なくやっていることを意識的に丁寧にやる。下拵え中は自分のエゴが消えて、ただただ目の前の素材と向き合う時間がとても贅沢だなぁと感じるんです。
<9月12日>
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パーティケータリング本番。会場でフォローしてくださるのはプロのシェフやパティシエさんたち。若い彼らの見事な働きっぷりに感嘆しながら、丸1日キッチンに立ちました。
集中している間は感じなかった疲労が、帰り道にどっとやってきて家について5分後には寝ていました。久しぶりのランナーズハイ!楽しかった!!!
クライアントのこだわりが強く、要望は無理難題だったにもかかわらず、全てに応えてそれ以上の感動まで与えた友人の料理。彼女の「愛」。バタバタ大忙しだったにも関わらず、共に料理をする間ずっと穏やかな気持ちでした。これだよね。ほんとにこれが美味しいの源なんだと思う。
私もそうでありたい。一緒に料理すると本質が垣間みえるんです。私は大丈夫かなって、ちょっと心配になったりもします。色々バレてそうで怖い。
<9月13日>
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友人の畑でとれたニラがたっぷりあるので、ニラを味わう一品を。餃子もニラ玉も大好きだけど、私が一番好きなニラの食べ方は煮込みです。
この日は冷凍庫の豚肉と一緒にニラのあんかけご飯に。焼き付けたひき肉にニラをたっぷり加えて、塩だけで煮込んだら仕上げに片栗粉でとろみをつけて出来上がり。ニラの甘みを味わうにはこのシンプルさがいい感じなのです。仕上げにこれでもかー!と胡椒をガリガリかけると味がきゅっと引きしまってますます美味しい!もちろん、おかわりしました。
ヴィーガンやベジの仕事をすることが多く、私自身も野菜ばっかり食べているので、肉を少し加えるだけで味を決めるのがこんなに楽なんだ!ということにびっくりしました。お肉様様。それと同時に動物性食材を使わない料理をもっと極めたいって気持ちも湧き上がっています。野菜の力、まだまだ知らないことばかり。
<9月14日>
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シェフや料理家さんと仕事する時間は学びの連続。新たな発見はもちろんですが、自分に欠けているものも見えてきます。必要なのに足りないもの。
今の私に足りなのは、味をビシッと決める覚悟。家でのご飯だけでなく、料理教室でもレシピを用意しないので、普段料理をしながら計量することはほとんどありません。細かく計量するのはレシピ開発の仕事の時くらいで、あとはその日の感覚です。よく言えば柔軟性があることなのかもしれませんが、別の側面からみればここが自分にとってベストな味!という線は常に曖昧なまま。「まぁこれくらいでいっか」を続けていると、感覚はどんどんぼやけてしまいます。お金をいただいて誰かに食べてもらう仕事。今日は最高で明日は微妙では話しにならないと、今更なことを今更勉強し直しています。ノリだけじゃダメよ。
<9月15日>
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久しぶりに丸々3日間休むと決めて友人と熱海へ。私たちがやりたかったことは「バーベキュー」「焚き火」「デジタルオフ」の3つでした。バーベキューは私の担当、焚き火は友人の担当。生憎、私たちがグランピング施設にたどり着く直前に降ったにわか雨で薪が湿ってしまい、焚き火は不発に終わってしまって友人は凹んでいましたが…。電波の届かない山の上で特に何をすることもなく、お肉を焼いたりお酒を飲んだり、ベッドに寝転がって話したり好きなタイミングで寝たり。そんな時間がすごく良かったな。
ジュージュー焼いたお肉をガブリと頬張ると、私の中の野生がちょっと目覚めて素材を自分に取り込む自我みたいなものを感じました。音や温度は味の感覚を研ぎ澄ませてくれるんだなぁ。くすぶる焚き火を見ながらそんなことを考えていたのでした。(友人は着火剤を片手に何度もチャレンジしては肩を落としていました)
<9月16日>
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「アルモンデ料理する人」なんて名乗っているので、アイデアや経験が豊富だと思っていただいているのですが、実はそんなことないんです。
まだまだ魔法使いもなれなくて奇跡も起こせません(偶然ラッキーはたまにある)。ただ自分なりのちょっとしたルールに沿って、トライアンドエラーを繰り返しているだけ。私の作る料理にゼロイチの発想はなくて、過去に食べた経験があるものや誰かが作っているものを見ていた記憶がアイデアの源です。
「ゴーヤとサボテンのきんぴら」は、先週のアルモンデパーティで余った食材で作った一品。サボテンの塩漬けなんてその日初めて見たから、持ってきた方に「普段はどうやって食べてますか?」って聞いたんです。その時、「きんぴらが以外に美味しいんです」って教えてもらったことを覚えていました。野菜室には元気がなくなり始めたゴーヤが1本。合わせてきんぴらにしたらとても美味しくできました。
「同じ色の野菜は仲良し+苦みと酸味のバランスをとってくれるのは塩味」
この一品をつくる時に発動した私なりのルールです。
<9月17日>
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恥ずかしながら人生に「推し」が存在するようになり、彼らが普段食べているものを私も味わいたい!と新たな味にチャレンジすることを楽しむようになりました。その一つが麺料理。韓国の麺料理といえば冷麺くらいしか知らなかった1年前でしたが、今ではその麺文化の多様さに圧倒されています。ラッキーなことに我が家の周辺には、韓国食材店が多く(これも全く知らなかったこと)、割と簡単に食材を購入することができます。
この晩は初めてのマッククスに挑戦。マッククスは小麦粉と蕎麦粉からできているので、日本の乾麺の蕎麦に近いのですが、食感も味もなんだか少し違うんです。それがなぜなのかは…わかりません(ごめんなさい)。エゴマ油と海苔をたっぷりかけて食べる甘酸っぱい麺料理。蕎麦を甘酸っぱく食べるっていうのも新鮮で、私はとても好きな味でした。ああ早く、渡韓して食い倒れたいなって思いながら、貯蓄に励む日々です。
今までノリと雰囲気で毎日料理をしてきましたが、仕事柄それではいかん!ってハタと気付かされることがあり(アドバイスもいただいて)、最近は自分がなんとなくしたことの理由を考察するようにしています。なんでサボテンとゴーヤはイケる!と思ったんだろうとか。なんでニラと挽肉は塩だけで美味しくなる!と思ったんだろうとか。うまく文字化できなくてうーんということも多々あるけれど、殴り書きでも暗号みたいな文字の羅列でも、目に見える文字にすることで気づくことがたくさんあります。
自分と向き合う作業は終わりがないけれど、ひとつ確かなのは私は本当にラッキーだということ。奇跡的にこれまで料理とネガティブな感情が結びつく経験がなかったから、新たな味にチャレンジするのも失敗するのも怖くないんですよね。
このラッキーを周りに少しでも還元できたらいいな。一緒に歩けば怖くないよって声をかけながら、一人でも多くの人と料理していきたいな。
※お知らせ※
noteに書いているアルモンデごはん。冷蔵庫開けてあるものでパパッと作るなんて、料理上手じゃないとできないよ!と思われるかもしれません。
でもこれ、誰にでもできます。本当に誰にでもできるんです。
それを体験する料理教室を、埼玉県草加市で月一開催しています。9月のクラスは23日、秋分の日です。今家にアルモンデ、レシピもなく食べたいものを作れるようになれたら嬉しくないですか?
アルモンデ料理の考え方やコツをお伝えします。ぜひ遊びにきてくださいね。