初めましての野菜を楽しむ5つのコツ〜農家さんから直接野菜を買ってみよう〜
農家さんから直接野菜を購入したことがありますか?買ってみたいなぁと思ったことはありますか?
私の教室で料理する野菜は、前日着で農家さんから直接送られてくるもの。だいたいこれがくるかなぁと予想はできても、すべては畑次第です。だから事前にレシピを用意するのはとうに諦めて、当日みんなと一緒にレシピを生み出しています。食材ありきで料理をするのが、アルモンデらしさ。
出来上がった料理を口にした瞬間、「野菜が美味しい!私も頼みたいな」という声が上がります。でも「私も買ってみたいけど、知らない野菜がきたらどうしよう」って躊躇する声が多いのも事実。
農家さんと繋がることは、素晴らしい野菜と出会える貴重なチャンスです。諦めてしまう前に、一度試していただきたい私なりの5つのコツをシェアします。料理教室でいつも話していること。アルモンデ教室の雰囲気も伝わったらいいな。
※長文注意。何度かに分けてお読みくださいませ。
まずは宝箱オープン♪
今回お野菜を送っていただいたのは、先日出会ったばかりの、長野市の樹木さん。みてください、ピッカピカ!箱を開けた瞬間、笑顔になってしまいます。
届いた野菜は上記の通り。ご近所の店ではお目にかかれないものも多いですよね。野菜好きが高じて、30代は卸の八百屋へ丁稚奉公していた私。その間にかなりの種類の野菜と出会いましたが、今回届いた野菜たちは年に何回も食べないものばかり。ワクワクしちゃうなー。
ということで、野菜が届いたら私が最初にすることからお話ししてきます。
①そのまま食べる
はい。まずは食べます。生でいけそうだなと思ったものは、食べてみます。初めましての野菜ならなおさら、食べないと味がわかりません。味がわからなければ、どんな風に食べたらいいか想像もつきません。味見はすっごく大切。レッスン中の私の口癖は「味見して!」です。
今回届いた野菜でいえば、ジャンボリーキとモロッコインゲン以外、全部一口ずつ食べました。(ジャンボリーキはニンニクみたいな味って知っていたから食べませんでした)
食べるとわかることは3つ。これは生でも美味しいな、これは加熱したほうがよさそうだな、これはどちらでもいけそうだな、ということ。当たり前じゃん!と言われそうですが、すごく大切なことです。
今回は、こんなふうに分類しました。
◯生で食べられるもの
コリンキー、ミニフェンネル、エシャロット、キャベツ、トレビス、ズッキーニ、スイスチャード、早生プラム
◯加熱したほうがよさそうなもの
ジャンボリーキ、スイスチャード、モロッコインゲン、ロマネスコ、金町こかぶ
◯どちらでもいけそうなもの
ミニフェンネル、エシャロット、キャベツ、トレビス、ズッキーニ、早生プラム
②塩揉みする
生で食べることはできるけど、そのままだとエグ味や辛みを感じたり、硬さが気になるものもあります。そんな時はまず塩揉み。塩を揉み込むことで水分が出ますが、その水分と一緒にエグ味や辛みが抜けます。そして柔らかくもなるんです。
今回はコリンキーとズッキーニを塩揉みにしました。切ってそのままサラダにすることが多いコリンキーだけど、今回は味見した時に少しエグみを感じたんです。ならばと、かぶの葉っぱと共に塩揉みしたら大当たり!甘みがぐーんと増してポリポリ食感も際立って、1/2個を瞬殺で食べ切ってしまいました。
キューブ状にカットして塩揉みした残り1/2個は、市販のきゅうりのピクルスと合わせて混ぜご飯に。コリンキーの塩味、ピクルスの酸味と甘味があるので、ご飯の味付けは少しの米酢のみ。塩揉み野菜は混ぜご飯に合うの法則です。
塩揉みって、普段何気なくしているけれど、程よく癖を抜いて美味しい変化を起こしてくれる、すごい技なのです。
②茹でる
これは加熱したほうがよさそうだなぁと思ったものは、まず茹でてみます。今回はロマネスコとモロッコインゲンを。茹で野菜+マヨにハズレなしということで、慌てて豆乳マヨも作りました。
茹でるのか焼くのか炒めるのか、加熱調理も選択肢はいろいろあります。なぜ最初に茹でるをお勧めしたかといえば、熱を加えすぎず、野菜そのものの味を楽しめるからです。お湯の沸点は100℃。茹でる調理では加熱温度が100℃を超えません。高温で美味しくなる野菜もあれば、熱を加えすぎると美味しさが逃げてしまうものもある。初めましての野菜で、その判断をするのは難しいものです。そして焼くや炒めるという調理には、基本的に油を使います。油は素材の味を引き立ててくれますが、まずそのものの味を楽しむなら茹でるがいいんじゃないかな。(栄養についてはまた別のお話)
茹でるときは決して鍋の前を離れないこと!初めましての野菜の場合は、硬めかな?くらいで一度味見するのもポイントです。茹で具合は好みもあるし、それぞれの野菜の良さがピークになるタイミングも異なります。ちょこちょこ味見をして、自分がここだ!と感じた瞬間に取り出す。心と時間に余裕がある時は、ぜひそんなことも試してみてください。茹ですぎたって失敗じゃない。私はもう少し硬いのが好きなんだな、この野菜は硬めの方が美味しいんだなと知ることができたなら、大成功です。
③単体で焼く
茹でるのお次は焼くです。ポイントは単体で焼くこと。今回はズッキーニ、トレビス、エシャロットをそれぞれ単体で焼きました。茹でるの時と重なりますが、初めましての野菜はそれ自体の味がしっかり感じられる単品調理をがおすすめです。
ズッキーニとエシャロットは、オリーブオイルと塩を手で塗り塗りしてからオーブンへ。トレビスは少し油をひいたフライパンで焼き付けて、最後に塩をぱらり。油を馴染ませてから焼くことで乾燥せず、塩することで適度に水分が抜けて味が締まります。ゆっくり火を入れることで、エグ味や苦味が和らいで旨味がぎゅっと濃くなります。
小ぶりなズッキーニは、200℃で40分しっかり焼いたら中トロトロで甘々。親指サイズのエシャロットも200℃で20分ほど焼いて、ちょいパリトロあまになりました。熱が逃げてしまうので頻繁に開けるのはあまり良くないですが、初めて焼く野菜は時々オーブンを覗いて味見してみましょう。茹でるの時と同様に、ここだ!というタイミングで取り出せば良いんです。歯応え重視の人もやわやわ好きな人もいます。ご自身のお好みで。トースターでも、魚焼きグリルを使って直火で焼くのもいいですね。
葉物野菜は火の通りがはやいから、トレビスはフライパンで焼きました。トレビスの特徴はその苦味。初めて食べた方は100%「苦っ!」って声が出ちゃう。サラダで食べるのも美味しいけれど、その苦味で一度に多くは食べられない。そんな時は焼くに限ります。油+熱のおかげで強い苦味が和らいで、ほろ苦な大人味に。焼いて塩味だけでも十分美味しいのですが、ルバーブジャムと醤油のタレと合わせてさらにマイルドに味わいました。苦味の強い野菜には、油、甘味、加熱調理のどれかを加えてみてください。苦味が素晴らしい個性へと生まれ変わります。
ズッキーニ、エシャロット、トレビス。これらは生でも茹でても食べられるもの。順番に試して、それぞれの味の違いを楽しむのもいいですね。
④単体で煮る
焼くの次は煮るです。これも今まで同様、まずは単品で煮ると味付けを迷わずにすみます。今回はインゲンをクタクタ煮に。塩味だけで煮るか迷いましたが、醤油と味醂で甘辛く煮た味が恋しくなったんです。
単品野菜を甘辛く煮るときに気をつけているのは、まず甘さを決めること。味醂と醤油を先に合わせて鍋に加える方法もありますが、それだと後から味を調整するのがちょっと難しい。野菜を煮こんだ時、野菜自体の味がどれくらい出るのかわからないからです。なので私は、甘い→しょっぱいの順にそれぞれ味付けしていきます。はじめは甘みだけを少しずつ加えて味見して、甘みが決まったらそれに合わせてしょっぱいを足していく感じ。途中で味を調整しやすく、味が濃すぎた、甘すぎたという失敗も防げます。
このインゲンは少量の味醂で甘みをしっかり感じられたので、みりんも醤油も控えめに仕上げました。美味しかったなぁ。煮込んでも野菜自体からあまり味が出なかったり、逆に味がかなりはっきり出たり。そんなときはしっかり甘辛に味付けすることが多いです。でもそれも好み。ご自身のここだ!を信じてください。
⑤味が強い×強い、味が優しい×優しいを組み合わせる
これまでは単体で料理してきましたが、組み合わせることで生まれる味わいも楽しみたいですよね。でも、どれを組み合わせたらいいかわからない…。そんなときは一度味見した時の感覚を思い出してみます。はっきり強い味の野菜とほんのり優しい味の野菜、大きく2つに分類してみます。スイスチャードやトレビスは強い感じ、キャベツやかぶは優しい感じ、それくらいのゆるさでOK。正解があるわけじゃない、ご自身の感覚で良いんです。
分類できたら、強いもの同士、優しいもの同士で、2つの素材を合わせてみましょう。似た雰囲気を持つもの同士を組み合わせると、どちらか一方の味が強すぎるという心配がありません。組み合わせる野菜は多くても3種類まで。野菜の味が複雑になると、味付け迷子になってしまうから。今回は、強い味としてスイスチャードとジャンボリーキを、優しい味としてかぶとフェンネルを組み合わせてみました。
ジャンボリーキはほぼニンニク。スイスチャードはいい感じの渋みもあり味がしっかりしています。作ったのはリーキとスイスチャードのペペロンチーノ。野菜の味が濃厚だから、味付けはシンプルに塩のみ。渋味は油が和らげてくれるというのは、焼きの時と同じです。
かぶとフェンネル(の根の部分)はどちらも根菜。根菜といえばスープ!どちらも同じくらいの大きさにカットして弱火でコトコト煮込みました。味見をしていたら「これはポタージュがいいかも!」と閃いたので、最後にハンドミキサーでビューン。こちらも味付けは塩のみ。お出汁を入れなくとも、ゆっくり煮込むことで野菜から芳醇なお味が出ています。
5つのコツなんて大げさなタイトルをつけたけど、考え方は至ってシンプル。基本のきです。でもね、初めて出会う野菜は基本から始めるのが一番です。その野菜の良さも、私はここがちょっと苦手かもというところも、シンプルに味わうからこそわかるもの。
人間だって初対面はまず自己紹介からですよね。野菜との出会いも同じです。あなたはどんな人ですか?って相手を知ろうとすることから、関係性を築いていくもの。もしかしたら二度と会いたくない!という相手もいるかもしれませんが、すぐに恋に落ちてしまうような、運命な出会いがあるかもしれません。
農家さんと畑次第の、産地直送お野菜ボックス。自分で選ばない、選べないからこその出会いがあります。今畑は、夏野菜真っ盛り。夏野菜は生で食べられるものが多いから、チャレンジするにはもってこいです。ぜひこの夏お試しになってみてください。楽しいですよ。