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エッセイ5「ロボットのお話」

ロボット。
この言葉を聞いたとき、あなたはどんな想像をしますか?
もし仮にあなたが映画好きだった場合、ロボットが人間に牙を剥くディストピアを想像するかもしれません。
もし仮にあなたが読書好きだった場合、ロボットが人間に牙を剥くディストピアを想像するかもしれません。
結果は同じだね。
別にバグが起きたわけではありませんよ。
あなたが映画好きと読書好きの両方の性質を持ち合わせていた場合は、歯磨き粉のフタを閉める仕事をしているお父さんが機械にその仕事を奪われる場面を想像したでしょう。
ちなみに私はこれです。
はい、ただのチョコレート工場好きです。
I  love ジョニーデップ
I  love チョコレート
I don’t like 身体が膨らむガム

とにかく創作という点から見たロボットというのは、あまりにもイメージが良くない。
仕事を奪ったり、人類を滅ぼしたり、閉じ込めたり、爆発したり。
ですが私はロボットというのはそんな物騒なものではなく夢を見せてくれるものだと考えています。
別にマッドなサイエンティストというわけでは断じてありません。
私にとってのロボットとは人間と友好的な関係である藤子・F・不二雄的世界観のものだからです。

私は『AI特集』と書かれてしまうと自然と手が動いてしまいます。
たくさんの雑誌、小説、漫画などを読んできましたがそれら全てが近い将来のAIの脅威について記述しています。
2045年に技術的特異点が来るだのすでにAI同士がコミュニケーションを取っているだのSFファンにはたまらない情報が沢山載っていました。
2045年なんていったら30年を切っています。
その頃には私の年齢は50とちょっと。
正直職についての心配をする必要はありませんし「脅威」なんて言葉は大袈裟な気がしますが、生活の変化は多いと思います。
実際に今、生活の至る所にその片鱗が見え始めています。
そんなエピソードをここでひとつ。

これはこの間のバイトの休憩中の話です。
温かい飲み物を腹いっぱい飲みたい衝動に駆られた私はドリンクバーを完備しているファミレスへ行くことに決めました。
休憩時間は60分。
三杯以上飲めることは約束されています。
私は意気揚々とバイト先を出て、隣のファミレスへ移動しました。
人数を聞かれる前に私は指を1本立てると、堂々と「1名です」と答えました。
ソロでのファミレスは意思の強さが大切です。
店員さんに好きな席に座るように言われた私は一番端のテーブルを陣取りました。
端を取った方が強い。オセロの基本です。
「注文はタッチパネルからお願いします」
店員さんはそう言うと去っていきました。
私は言われた通りにタッチパネルを操作して、
軽食のチキンとドリンクバーを選択しました。
ご安心ください。
これがロボットの話には繋がりません。
さすがに私もタッチパネルが様々な飲食店に導入されていることは知っています。
タッチパネルでの注文に反応しているようでは令和は生きていけません。
私は立ち上がると足早にドリンクバーに向かい
ココアをチョイスしました。
注ぎ終わるまでは私は待機です。目をそらさずにカップ一点を見つめていました。
すると私の背後をなにかがスーッと通った気がしました。
明らかに人間の気配ではないなにかでした。
私は訝しげながらも席に戻るとココアをすすりました。
正面に座るエア石田ゆり子が私に向かってお疲れ様とキリンファイアの缶コーヒー片手に言ってくれました。
私は照れ笑いを浮かべながらカップを口に運びました。
そのときです。石田ゆり子とは別の声が突然真横で鳴り響きました。
「ご注文ありがとうだにゃん」
私が横に視線を移すとそこには某宇宙もの映画の金ピカじゃない方に酷似したロボットが私の注文したチキンを乗せて佇んでいました。
正面のモニターには顔が表示されており、耳が生えています。
耳と語尾の「にゃん」。この2つから導き出される答えはこのロボットはネコ型ロボットであるということ。決してたぬきではない。
私がチキンを受け取るとネコ型ロボットはスーッとバックヤードの方へ消えていきました。
私は衝撃を受けました。猫がチキンを運んだことについてではありません。
ロボットがチキンを運んだことについてです。
時代はここまで進んでいたのか!
普通に店員が配膳した方が早そうだな。
進路がかなり塞がれているな。
店長が心配そうに眺めているな。
この際こういったことには目をつぶります。
これは技術的特異点の第一歩になるのではないでしょうか。
あちらこちらで聞こえる「ご注文ありがとうだにゃん」という言葉と不具合がないか心配そうに後ろをついて行く飼い主のような店員を見ながら私は確信しました。

生活の変化。このエピソードは変化というにはしょぼいと言われてしまうかもしれませんが私はそうは思いません。
身の回りを世話してくれるお世話ロボットはまだいません。しかし掃除ロボットはいます。
ロボットと人間のように会話はまだできません。
しかし言葉を理解しこちらの望む情報を検索してくれるロボットはいます。
不思議なポッケで夢を叶えてくれるロボットはまだいません。
しかし料理を配膳してくれるネコ型ロボットはいます。
ジリジリと。私たちの思い描くSFの世界へ近づいている気はしませんか?
そんな世界を夢みることが今の私の楽しみです。
皆様もぜひ想像してみてください。
皆様が思い描くロボットが活躍する将来を。
私の思い描く理想のロボット。
そうそれは仕事終わり、缶コーヒー片手にお疲れ様と労ってくれる石田ゆり子ロボットです。

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