ループ系勇者小説(素人版)
■上
勇者は旅立った
世界の平和を脅かす魔王を倒すために
旅先で2人の仲間を得ながら
一人は弓使い、強気な女性であり勇者に少しずつ恋心を抱く
一人は僧侶、信仰する神を持ち、神のために魔王を滅ぼすことを誓う、意思の強い男性だ
そんなおとぎ話ではありきたりな勇者一向
旅先ざきで魔王の幹部二体を倒し力をつけていく、当然名声も
彼らは魔王を倒すため、歴代勇者なら必ず訪れる、魔道士の館に訪れる
魔道士はこう語る
魔道士「貴方は勇者として世界に刻まれた」
魔道士「この石盤を見るがよい、ここには歴代勇者の名が神によって刻まれる」
石盤には数々の名前が記載されており、その最後に自分の名前があった
勇者は遂に神に認められた勇者になったのだ
そして、勇者一向は魔王に挑んだ
勇者「魔王!今日こそ貴様の最後だ!」
魔王「なんだ貴様は!私を世界の王と知っての狼藉か!」
勇者「問答無用!!!」
勇者一向と魔王の壮絶な戦いは、神の力により勇者の勝利と終った
■中
勇者一向は魔王を倒した
勇者はその栄光を称えられ王位の継承権を得た
そして、弓使いを妃、僧侶を大臣として新しい国作りを始めた
勇者の持つ力は凄まじく、魔王の残党を簡単に制圧していく
魔王によって虐げられた町を次々に解放していく
本当に素晴らしく強い王である
しかし、その力は別の災いも生んでしまう
貴族達すら頭が上がらなくなっていく勇者王の力は次第に膨れ上がっていく
当然のように軋轢も生まれる結果となった
だが、それすらも力で虐げていく勇者王
その姿に住民達はこのように言った
住民「勇者王は本当にいい王だと思うよ、魔王がいて大変だった時期よりとてもいい」
住民「ただ。。最近はやり過ぎなのでは?。。。」
その不安は現実の物となる
貴族集団が団結し抗議を行ったのだ
貴族「流石に独裁が過ぎる!貴方は自分の力がどれほど世界に影響を及ぼすのか分かっていない!」
勇者はその言葉を聞いて悩んだ
悩んで悩んで悩みきった結果一つの結論を出した
勇者「世界を救い神に認められた私が間違っている?」
勇者「そもそも、その発想がおかしいのでは?」
勇者「私の意思は神の意思であろう!」
勇者は貴族達を糾弾した
神の意思に背く愚かな民であると、この者共は悪魔であると
貴族達はその位から転がり落ちた
世界の頂点は勇者王だけとなり、その力は絶大
世界は勇者王の物となった
もはや、歯向かう物など居ない、そう思われた
■下
その若者は正義感が強かった
生まれつき力も強く、賢くもあった
世界のありようを見て彼は嘆いた
若者「あぁ、何て世界は窮屈で生き辛いのか」
若者「勇者王?いやあれは"魔王"だ」
住民「まて、その呼び方をおおっぴらに言ってはならん」
勇者はいつしか魔王というあだ名になっていたのだ
その王に若者は激怒した
若者「反旗を翻す!!」
そういって彼は生まれ育った町を旅立っていく
道中で気の強い弓使いを仲間にした、同じ意思を持つ僧侶も仲間にした
そのような"幸運"も味方につけ、手始めに大臣の息の根を止めた
その快進撃は凄まじく王妃さえも簡単に手をかけてしまった
そして、遂に若者は勇者の前にたどり着く
若者「魔王!今日こそ貴様の最後だ!」
勇者「なんだ貴様は!私を世界の王と知っての狼藉か!」
若者「問答無用!!!」
勇者も警戒はしていた
当然である、このような謀反返り討ちにしてきたのはいつものこと
しかし、何故か勝てなかった
一体何故かは分からない、しかし負けたのだ
意識が遠退く中、女の声がした
女「流石!神に認められた勇者ね!」
そうか。。。私は魔王になっていたのか。。。
■下の下
世界が真っ暗になる
そして目が覚める
勇者「ここは地獄か?」
??「いいや、これからお前が仕える王の前だよ」
謎の声に振り向く、そこに長い道、大きな玉座、そして大きな"存在"があった
道の脇には数人の人間が道を囲むように立っている
勇者「どういうことだ?」
??「お前は10人目だ、そこになおれ」
勇者「お前は誰だ?」
??「魔王以外の何に見えるというのだ?」
勇者「何を言って。。いるん。。だ。。。?」
目を一番近くの人間に移す
そこには確かに自分が倒した"魔王"がいた
勇者「お前は何をしてるんだ?」
答えはない
魔王「お前が生きてた世界はな、勇者や神が敗北した世界なのだよ」
魔王「お前は疑問に思わなかったのか?勇者が沢山いることに」
魔王「勇者が選定されている理由に」
魔王「神とは何のために勇者が必要なのかに」
魔王「そもそも、お前の仲間も都合が良すぎると思わなかったのか?」
魔王「お前のことを好きになるように設定された女、神を理由もなく信じる男、あんな物がそう簡単に出てくると思ったのか?」
魔王「全ては私の腹心の選定だったのだよ」
勇者「もう世界を手に入れている。。のに?。。。」
魔王「バカがたった一つの世界など何だと言うのだ」
魔王「全ての世界を手に入れるそれが我の目標ぞ」
スケールが違い過ぎる。。。
そう勇者は落胆する、自分のやっていた世界の狭さに絶望する
しかし、彼は勇者なのだ
自我が残ってる限り勇者なのだ
何故、自分だけ自我があるのか分からない
それでも体は自然と抵抗していた
剣を伸ばす、魔王に向かって
その時奇跡が
起こらなかった
剣は弾かれた
魔王の腕の人振りで弾け飛ぶ体
体の消滅を感じる
魔王「バカがそこで死んだらもう何も残らん」
魔王「ちっ、次を待つか」
消滅しかける体、しかし今更奇跡が起こる
神「この瞬間を待っていた」
神「お前の体が消滅する瞬間、魂の場所が曖昧になる」
神「今であれば我々はこの空間に接続出来る」
俺はまた使われたのか。。。
そう心で思った、もう声も出ない
神「お前にもやってもらうことがある」
勇者(え?。。。)
神「これからお前は一瞬だけ元いた世界に繋がる」
神「私達はこの空間を閉じることが精一杯だ」
神「だから。。お前は。。。」
そこで声は途切れた
意識が。。。覚醒する!!!
そこに見えるのは、死ぬ直後の光景、次の勇者の姿
勇者(やることなんて。。。分かっている!!!)
そう考えた刹那、体は宙に舞う
背後に気付いてない若造の首を切り落とすなど造作もなかった
どさっと首が落ち、力無く崩れる次代の勇者
弓使い「えっ。。えっ。。えっ!え!え。。えっ!」
弓使い「うああぁぁぁあ」
弓使い「ふざけるな!ふざけるな!しねしねくだばれしね!!!!!」
崩れ落ちそうな中、何とか首を落とした魔王と呼ばれた勇者の体は滅多打ちにされる
もはや、原型など残さないほどに
そして世界は平和になったのである
■後日談
その後、弓使いは発狂の後に担ぎ出されたが
目を離した隙に、大好きな人の元へ行くと言いながら、崖へ飛び降りたそうだ
僧侶は神を感じられなくなり
神を呼び戻す儀式として、自らを捧げ自害した
神とはつまり魔王とも知らずに