尾崎放哉先生の生きた足跡を辿る(京都編)
前回の旅行の続きですが、京都旅行の一つの目的が、かつて尾崎放哉先生がいた場所を巡りたい、というものだったので、まずはここにポイントを当ててまとめていきます。
放哉先生がいた場所で、今回行ったところが、知恩院の常称院と龍岸寺。
どちらも住んでいた期間はとても短いものですし、何ならお酒の失敗談の一つの地でもあるわけですが、ここを歩いていたんだなぁ、と思いを馳せながら、私も歩いてみました。
年譜は逆ですが、今回私自身が行った順で記録します。
龍岸寺
1925年(大正14年)の7~8月。
40歳の時に、寺男として住み込みしていた場所。
このとき同じく京都にいた、井泉水先生を訪ねています。台湾に最後の死に場所を求めてましたが、井泉水先生に反対されて「どこか探すから!」と紹介されたのが、この龍岸寺のようです。
ですが、すでに放哉先生は肋膜炎を患っており、尚且つこのお寺の方針が、いろいろな新しい事業に手をだしているときであり、一日中働く日々。当然体は耐えられずに、わずか一か月ほどで井泉水先生の住む橋畔亭に戻ってしまったとか。
京都駅から徒歩で行けます。私は大体15分くらいでたどり着けました。
朝早く行ったためか、境内には入れなかったため、外から中の様子を見てきました。
調べたら、9時半かららしいです。
先に書きましたが、ここのお寺、ホームページを見る限り、今現在も大変ユニークなことをしています。
どちらかというと、がっつり今の若者…というか流行の波を取り入れて、身近に感じてもらおうとする活動が多いみたいですね。にしても、今はYouTubeチャンネルも持つ寺があるのか…。
このあと、放哉先生は井泉水先生の手引きもあり、いよいよ最期の場所、小豆島へ発ちます。
個人的に、いっっっっちばん好きな二人のエピソードがあるんですが、放哉先生が井泉水先生の家に転がり込んだ時、季節が夏で蚊が多い。そのため蚊帳のなかで寝ますよね。そのときにせま~い場所で、二人で布団一枚の上で一緒に寝ていたという話があるそうで。
そして、ここからさらに続く『入庵雑記』には、二人で並んで歩いているときに放哉先生が井師に抱く思いが書かれてあって、なんとも愛おしいんです。
このときも、井泉水先生はどういったふうに放哉先生を受け入れたんだろうか。しょうがない弟子だとしても、こんなこと気の許した相手じゃないとできないんじゃないかなぁ…。井泉水先生が放哉先生のことを、すごく評価していた話も聞くので、きっと「やれやれ」と思いながらも、親のような面持ちで一緒に居てくれたんじゃないかな、って思うと、もう好き~~~~~(クソデカボイス)( ' ' )♡
ちなみに、井泉水先生の家のあった場所は、京都市今熊野という場所にあったようなので、今度機会があれば、そちらにも足を運んでみたいですね。
知恩院~常称院~
1924年3月 知恩院の塔頭の一つの常称院へ
一燈園にいるときに何度かきたことがあるそう
京都駅から市バスに乗り、「知恩院前」のバス停で降ります。そのまま知恩院へ向かう坂道のわきには、いくつもの塔頭がありますが、そのうちの一つです。
※初め自分ではわからなかったため、御影堂にて場所を伺いました。今は立ち入りができないようで、外からだったら見ても大丈夫だよ、とのことでした。実際に行きましたが、確かに表札らしきものはかなり文字が消えており、なんとなく目をよく凝らしてみると、「常称院」と書いてある…?というものでしたが、写真と見比べてもここだと思います。
ここでの生活もわずか1か月。4月3日に井泉水先生がここを訪れたときに、羽目を外し(お酒飲んだ)、そのあと酔ったまま帰路についていたときに、ここの和尚様と関係のあった女性の方に介抱してもらったあげく、気分を害するレベルの口をきいてしまったために…。寺を追われることになりました。そのまま和尚様に許されることはなかったため、すぐに一燈園に戻る羽目になったそうです。
※なお、井泉水先生との食事をした場所は四条大橋近くのお店らしい。
そんなやらかしエピソードのある場所ですが、ここの階段を上ったのかなあ、どんなところを歩いたんだろう、と知恩院をぐるっと歩いてみることに。
何度見ても、どの建造物も大きく迫力があって見ごたえがあるし、感動する。中でも、御影堂のなかは絢爛豪華な仏像が圧倒的です。
すごく余談なのですが、最近は海外からの観光客があまりにも多くて、オーバーツーリズムなんて現象があるみたいで。確かにここに向かうバス乗り場も、かなりの人数が並んでました。(ちなみに平日)ですが、私が行ったときは、みなさん清水寺のほうで降りて行ったのと、知恩院の境内のほうは人は少なく、とても落ち着いて観光できましたし、特に阿弥陀堂は誰もいなかったので、しばらく感動して魅入ってられました。
このあとは歩いて行けるので、八坂神社のほうを目指して徒歩で移動です。
さて、今回は2か所のゆかりの地を巡ってこれました。
やっぱり、実際に歩いた場所や過ごした地を訪れると、感傷に浸りますよね。
京都の旅はまだまだ続きます。
☆参考文献☆
・ちくま文庫 『尾崎放哉全句集』
・新典社 瓜生鉄二著 『流浪の詩人 尾崎放哉』
・小学館新書 金子兜太、又吉直樹著『孤独の俳句 「山頭火と放哉」名句110選』
・尾崎放哉記念館にていただいた「尾崎放哉年譜」