着ぐるみ生地マスターガイド:ボアやファーを含めた選び方と使い方
響音カゲです。
着ぐるみの生地に迷ったりとかしてませんか?
特に肉球とかで困ってるというのをよく聞くんですよね。
というわけで、今回は着ぐるみによく使うような生地を一覧にして一気に紹介します。
フェイクファー
ストレッチボア、ストレッチファー
ベロア
グルミン2
エスパ
クリスタルボア、おもちボア
合皮・エナメル
フェルト
メッシュ裏地
カネフォーム
その他の生地(綿生地、シーチングなど)
順番に説明していきます。
フェイクファー
フェイクファーは、アクリルやポリエステルなどの素材で作られた毛を編み込んだ素材です。
色は単色のものから、複数の色が付いている柄物、リアルな動物の毛のように途中で色が変わっているものが混ぜてあるものなど、いろんな色があります。
着ぐるみでよく使われるのは単色のファーですね。
国内で入手しやすいのは、オカダヤ・トマト等で購入できるブライトフェイクファー(5310系)とその短毛(5311系)、オカダヤのソフトブライトファー、シープボア、ロングファー、シャギーあたりでしょうか。
ほかには海外でもファーを売ってるところがたくさんあります。
国内、海外ともにファーを扱ってる店はめちゃめちゃ多いのでリスト化してます。
バリカンをかけることで長毛のファーを短毛化できますが、毛の質感は損なわれやすいので、色があるならできれば最初から短毛のファーを使ったほうがベターではあります。
ストレッチボア、ストレッチファー
伸縮する生地(専門用語でニットと言います)で地の生地が作られたフェイクファーです。
伸びるので触り心地が良く、体型にもある程度フィットします。
顔などの凹凸が細かいパーツに使うと、縫い目を減らすことが出来ます。
その反面、あんこの形状などはそのまま浮き出てしまうので、ストレッチボアの場合は丁寧にあんこを作る必要があります。
普通の生地の場合、関節を曲げたりしても動けるように生地にゆとりを付けるのですが、ニットのような体型に対してフィットするような伸縮生地を縫う場合、場所によっては型紙にネガティブイーズ(Negative Ease)を付ける必要があります。
ネガティブイーズとは、型紙を縮小して逆にゆとりをなくす、小さくすることを言います。
どのぐらいの割合でネガティブイーズを付けるかは生地の特性や重み、形状によって変わってきますので、一概にこうとは言えません。ストレッチボアの場合は、おおよそ8~10%程度縮小すればいいケースが多い感じはします。
ストレッチボアを腹などに使うことで、ある程度体型の幅を吸収することができます。ある程度幅広い体型の人に着ぐるみを着せたい場合は考慮しても良いでしょう。
上に衣装を着る前提で、全身にフィットするインナーのような着ぐるみを作る場合は、関節等の動きに対応するため、必然的にストレッチボアを要所要所に使う必要が出てきます。
縫製が難しく、ミシンでもテロテロして縫いづらいです。縫うときも布を持つ手の押さえ方が悪いと布が伸びた状態で縫われてしまい、シワができたり、縫い目の長さが合わなくなってしまいます。上手く縫えるようになるためには練習が必要です。
ストレッチファー同士の縫製で普通の糸を使ってしまうと伸縮に耐えきれずに糸が切れてしまいます。そのため、
レジロンやエッフェルといった伸びる糸を使う
ジグザグ縫い、伸縮縫いなどの伸び縮みに対応できる縫い方をする
ロックミシンを使う
など、縫製で工夫する必要が出てきます。
ストレッチファーと普通のファーを縫い合わせる場合はその箇所は伸びないので、普通の糸で大丈夫です。
総じて扱いづらい生地ですが、顔に使って縫い目を少なくしたりなど、うまく扱えればこの生地でしかできない表現がたくさんあります。
国内だと、オカダヤ、ユザワヤ、松山パイル、サンプラスなどに置いています。生地幅が約90cmと普通のファーより狭いので、必要な生地量の計算には注意が必要です。
ちなみに、ストレッチファーの長毛は世界中を見ても私の知る限りでは松山パイルにしか売ってません。
ベロア
ベロアはなめらかな光沢のある起毛生地です。パイルをカットして作られています。
独特の光沢があり、クラッシュベロアなどは見る角度によって大きく色が変化します。
肉球や体のパーツ、角などにうまく取り入れられると魅力的な表現ができます。
ニット版のストレッチベロアもあります。
グルミン2
やや伸びる、起毛のフリース生地です。
もちもちとした触感が特徴です。人をダメにするクッション、と言えば伝わりやすいでしょうか。
オカダヤの輸入生地なので、若干入荷が不安定です。
肉球などに使う人が多いです。
エスパ
2wayストレッチ生地です。すべすべしていて、水着などに使われます。
肉球に使うとスベスベモチモチとした質感に仕上がります。ただし、耐久性はあまり高くないので注意が必要です。
こういう伸縮しやすい糸で、トリコットという織り方で作られている生地は2wayトリコットと総称されます。エスパ以外にも柄物とか色々種類があるので、探してみると吉。
オンラインショップではカトウさんが安いのに色々揃ってて強いです。
クリスタルボア、おもちボア
グッズプロが出しているボア生地です。どちらも多少伸びます。おもちボアのほうがさらに伸びが良いです。
グルミン2とよく比較されますが、グルミン2のほうが伸びが良く、サラッとした質感です。クリスタルボアのほうがふわふわしています。
合皮・エナメル
合皮は皮・革を真似て作られた生地の総称です。モノによって、製法も素材も全く違います。コーティング生地も少なくないです。
肉球やアクセサリー、口周りや鼻、口内等に使われる傾向があります。鱗のあるキャラや、爬虫類などのキャラの場合は合皮貼りをする子もいます。Gentouさんはエナメルでつるつるぷにぷにしたキャラクターを作るのが上手いです。
伸縮する合皮も少なくないです。
例えば、オカダヤなら、エナメル生地であるガンメタツーウェーはコスプレイヤー御用達の金属感を出しやすい生地で、ウレタンやコスプレボードにも貼りやすいです。
ストレッチレザーも鉄板。
合皮やエナメルは、とにかく実物を見ないと質感や生地の硬さ、伸縮性、耐久性、耐水性、どこまで伸ばしたら生地が割れるかなどが分からないので、現地に見に行って行って10cmサンプルとして買ったり、オンラインならサンプルを注文したりして、実際に手元に置いてみると良いと思います。
というか、サンプルを買ったほうが良いのはすべての生地に言える話ですね。
フェルト
布は通常編むか織るかして作られるのですが、フェルトは不織布とも呼ばれ、接着剤などで固めて作られる生地です。
独特のふんわりとしたマットな質感が特徴的で、ほつれにくく、適度に厚みがあって、光を反射しにくいという特徴から、眉毛やまつ毛、口周りに使われることが多いです。
特に、独特の深みのある黒は、フェルトや一部の起毛生地でないと出ません。
肉球に使うと、摩耗に対する耐久性がそこまで高くないので、毛玉が非常に出来やすく、また汚れやすいですのであまりおすすめはしません。作りたてはキレイなんですけどねぇ……。
メッシュ裏地
ネット状になった生地です。通気性や透湿性に非常に優れています。
日陰工房ではよく裏地に使っています。
カネフォーム
この中ではかなり特殊な生地です。
ウレタンにトリコット生地を貼り付けたものです。
伸縮性に優れ、厚みもあって丈夫で、ウレタンでも縫うことができます。
2mm, 3mm, 5mm, 10mmの4つの厚みがあり、色は厚みごとに数色あります。
あんこや衣装など、色々用途があるので使ってみてはいかがでしょうか。
その他の生地
その他、綿やら何やら柄物やら、大量に生地はあります。
肉球に普通に柄物の生地使ってる人もいれば、裏地にカラフルな生地を使ってる人もいます。
この生地はここ! って決めつけないで、自由な発想で作っていくといいんじゃないでしょうか。
保管について(2024/09/03追記)
フェイクファーは折りたたんで保管しておくと毛が折れて折りジワがついてしまいます。普通の生地と違ってアイロンがけができないので、完全に元に戻すことはできません。
これを避けるには、生地を巻いて保管する必要があります。
巻きで送ってくれるところには巻きで注文するとよいです。知ってる範囲だと、オカダヤとかは大量に注文すれば巻きで送ってくれます。
海外の店は巻きで発送ができるところとできないところがあります。
紙管は折れやすいのと、普通に生地買ってると足りなくなるのでコーラルオンラインショップで買い足すのがおすすめです。
自分の持ってる生地の幅に合わせて買ってください。例えば、ブライトフェイクファーなら155cm幅のものを買えばいいです。
ちなみに、オカダヤとかの実店舗で実際に手に取ってみるとわかりますが、クリスタルボアみたいなテロテロした薄い生地は紙管よりも巻板のほうが巻きやすいです。うまく使い分けてください。
まとめ
今回は、着ぐるみでよく使われる生地を紹介しました。
向き不向きあれど、この生地だとダメ! ってことはないので、色々試してみてください。
明日の記事は「【着ぐるみ制作】角の分離のしかた」です。
キャラクターの創作費に使わせていただきます。