【泊まれる演劇】QUEEN'S MOTELに参加した3日間の日記
8月31日に千穐楽を終えたQUEEN'S MOTELへの扉が閉まった。
ネタバレが解禁されたので、参加するたびにポツポツと書き記していた3日分の日記を投稿しようと思う。
6月4日(木)→6月5日(金)
まだ蒸し暑いとは言えない6月の京都へ向かうために、家を出たのは16時過ぎのことだった。
自宅から京都までは電車で1時間30分ほどかかる。乗り換えの回数は1回だけど「やっぱり京都って遠い」と感じてしまうな。
こういう楽しみが詰まった日は、最寄り駅から在来線に乗ってとある駅で降り、そこから特急に乗ってビュンと向かうに限る。
目的地の京都駅に到着したのは18時30分頃だった。
ちょうど1年ほど前、雨と花束に参加した日の翌日に、プロジェクトの打ち合わせで合流した友人に「泊まれる演劇ってこういう感じで…とにかく雨と花束という公演が凄かった」と電車内で熱弁し、「いつか一緒に行こうね」と話していた日が懐かしい。
友人とはその後「Moonlit Academy(ムーンリットアカデミー)」に一緒に参加して、こうやって今、京都駅で待ち合わせをして「QUEEN'S MOTEL(クイーンズモーテル)」にも行くことになった。
「せっかく行くならVIPがいい」という私の提案を「そうしよう」と受け入れてくれる友人の懐の広さに感謝しつつ、他愛もない話をしながらモーテルへ向かう。
友人でもあり、プロジェクトの仲間でもある彼女とはここ4年ほど、よく連絡を取り、オンラインでもオフラインでも顔を合わせることが当たり前のパートナーのような存在だったので、ホテルまで向かう道中でこれから参加する泊まれる演劇に関する話をほとんどしないのが、なんだか面白かった。
互いにこの先に続いている時間が楽しみなことは間違いないけど、会うと口から出てくるのは「そういえば……」みたいな話ばかり。
HOTEL SHE,KYOTOに到着したのはチェックイン時刻の5分ぐらい前。既に他の2組のVIP宿泊の方が並ばれていた。
--
19時。赤いベロアカーテンの奥からスタッフの方が出てきて、1組ずつ名前を聞いてくれる。予約した名前を告げ、モーテルに入ると、3人のコンシェルジュが挨拶をしてくれた。(3人とも眼鏡をかけていて、キチッとしているのが印象的)
そのときに、女性スタッフと目が合った(気がした)。目が合っているというよりは、すごい眼力で見つめられているような気がしてドキッとする。すると彼女がこちらにやってきて、「そのバッグどこのでしたっけ?」と聞いてくれた。
「パメオポーズの……」と答えると「そうでした!どこかで見たことがあると思って見てたんですよ」と和やかにお話してくれるコンシェルジュさんの、急に打ち解けたようなギャップに少しときめきながら、部屋まで案内してもらう。
今回担当してくれたコンシェルジュさんはちづるさんという方で、このモーテルの歴史や、宿泊のルールなどについて説明してくれた。
ちづるさんが部屋から出る前に「空の扉」というものについて話をしてくれたのだが、そんなちづるさんが部屋から出ていく姿を目で追いかけながら、閉まる扉を眺めた後、同じぐらいのタイミングで目が合った友人と「怪しい……」とニヤリとした瞬間に、私たちの泊まれる演劇が始まったような気がした。
--
「たくさん喋ってしまうから、とりあえず20時にアラームをかけよう!」と決めて、また他愛もない話を繰り返し、バタバタと準備をして下に降りたものだから、友人がVIPのお土産でもらったカードケースのチェーンを部屋に忘れてきたことに気付く。エレベーターが1階に到着した瞬間に速攻で部屋に戻るというドタバタぶり。これもまた楽しかった。
そんなこんなで20時過ぎに1階のロビーへ降りると、ちづるさんに「忘れ物したんですか?」と微笑まれ、リザーブの札が置いてある席に案内してもらった。
アイスを食べながら席に座っていると、モーテルのオーナーである「こころさん」が声をかけてくれ、今日のお茶会で名乗るお菓子の名前を決めてくれた。
私は「プリン」友人は「カップケーキ」の名前を受け取った後、近くに座っていた参加者の方たちと招待状を交換しあったり、みなさんのお召し物をみながら「やっぱ赤い服ってかわいいな~」とブツブツ言ったりしていると、あっという間にお茶会の時間に。
こころさんが絵本を読み始めたことで、不思議なことに巻き込まれるのだが、この演出がとっても素敵だった。照明も、音楽も、急にどこかの世界に連れていかれる感じがすごくして、楽しかったなあ。
--
みんなでお茶会の準備をすることになったとき、心の中で「あ、これか!」と思った。と同時に頭浮かんでくるのは、「ハンドベル…ハンドベル…」という欲望。
参加前に夕方のニュースで泊まれる演劇の特集を見たとき、ゲストのみなさんがハンドベルを練習している映像を目にした。そのときからずっと「ハンドベルがしたい」と思っていた。一緒に参加する友人にも予め「ハンドベルがしたい」と連絡するぐらいやってみたかったのだ。
ただ、欲深くなると選ばれない、それが人生。
ハンドベルチームに名前が呼ばれたのは私ではなく、友人だった。
(こればかりはランダムで名前が呼ばれるから仕方ない!)
そんなお茶会準備のチーム分けで、「プリンさん」と名前を呼んでくれたのはウサギのぬいぐるみを肩からかけた一兎(イットさん)だった。えらくファンシーな出で立ち。
そして独特の雰囲気を持っている。そんな彼の部屋にお邪魔をすると、「ハートさんを喜ばせるためにサプライズをしたい」というので、みんなで準備をすることに。
そのときに、花瓶にハートの模様を書く役割をもらったのだが、少しだけドキッとしてしまった。とくに理由はないけれど、昔から人前で絵を書くことが少し苦手で、参加している人の視線もあったので、ちょっとドキドキとしながら、みなさんが書いてくれた可愛い花瓶にハートの模様を描き始める。
すると、一緒のチームになった方が、ひとつハートを書いたときに「かわいい」と声をかけてくれた。
これは私が生涯、語り継いでいきたい話ランキングTOP10に入る出来事となり、その方のおかげで、それ以降のハート模様を書くのがすごく気楽になった。本当の本当にありがたかった……。
これ以降はストーリーを追いかけながら書くと、色々とパンクしそうなので、ここからは印象的だったことを書いていこうと思う。
--
物語が動き、モーテルで長年開かずの扉だった「空の扉」の奥から泣き声が聞こえてくる。なんとかみんなで扉を開けると、そこにはワンダーランドからやってきた王子が寝そべっていた。
「ここにいさせてほしい」という王子をハートさんがやわらかく受け入れる姿に心がギューッとなったし、みんなで王子に名前をつける時間もよかったなあ。
ちなみにこの日の王子の名前は「ナタデココ」になった。
こころさんからの提案でモーテルを自由に散策できるようになり、今回は友人と一緒にウロウロすることになった。
ハートさんの部屋を覗くと、ハンティングトロフィーに話しかけるナタデココの姿が見えて、その姿にちょっと驚きながら、挨拶をして部屋に入る。
友人とナタデココと「お金」というものの価値について話をしていると、部屋にもう一人の参加者の方がやってきたのだが、そのときナタデココに「プリン、僕のことを紹介してよ」と言われた。
一瞬何がなんだかわからなくて、他己紹介をすることになったのだが、あの瞬間に少しだけ芽生えた疑問のような感情は、今でもぷっかりと浮かんでくるようなよく分からない感情だった。
あまりにも真っすぐに「紹介してよ」と言われたので、「あっ……自分で言う感じじゃないんだ……」と少し悶々とした気持ちを抱えてしまったんだと思う。
「この人にはちゃんと”王子”として生きてきた、いや、生きざるを得なかった人生があったのかもしれない。だからこそ抱える葛藤があって、でもこうした何気ない言動にこれまで歩んできた人生の一部分が滲み出ることがあって……」などと、思ってしまった。
きっとこれは私の捉え方の問題なんだろうけど、なぜかその言葉がずっと心に引っかかっていて、その後ちょっとだけ苦しかった。
その後、ナタデココがハートさんの部屋に置かれたアクセサリーを見て、「ハートに贈り物をしたら喜ぶかな?」という話になり、ハートさんに好きな色を聞いて、手首に模様が入っているのかを確認するお使いをお願いされたので、一人部屋を出る。
ハートさんを探しながらモーテルをウロウロとしていると、猫屋敷さんのお部屋から出てくるハートさんと遭遇したので、声をかける。
このときの私の頭の中は「ハートさんの手首を見る」ということしか覚えておらず、「可愛い服ですね。でも長袖だと暑くないですか?」みたいなことを言って、なんやかんやでハートさんに腕まくりをしてもらうと、そこにはトランプの模様が入っていた。
そこからハートさんとお話をして、一緒にハートさんの部屋に戻ることになったのだが、部屋に戻ると、なんとナタデココが部屋にいた方にお化粧をしてもらっていて、「ハート、どうかな?」と見せていた。
「えー!!!!見たかったー!!!!私、お化粧してもらってるところ見たかったー!!!!!!」と、ほんの少しだけ暴れそうになったけど、心のなかでグッと堪える。そんなナタデココのお化粧をハートさんが褒めてる姿に「(ハートさん‥‥)」とトキメキを感じずにはいられなかった。
--
みんなの大切なものが無くなり、裁判をするためにモーテル内を探索することになったとき、ハートさんが声をかけてくれて(やったー!!!)私と友人、そしてマカロンさんの4人で探索することになった。
ハートさんがエレベーターのなかで「チーム名を決めない?」と言ってくれたので考えてみる。ハートさんとマカロンさんが赤い服、プリン(私)とカップケーキ(友人)が黒い服を着ていたので、ダブルレッド…ダブルブラック……というところから「チームダブルR&Bは?」と提案してみると、思ってる以上にすんなり決まって、ほんの少しだけ恥ずかしかった。
そこからは最後までずっとハートさんと一緒にいたけれど、今回ハートさんと一緒に回れて本当に良かったなあと思うことがいっぱいあった。
モーテルのオーナーとしてみんなから頼りにされているハートさんだからこそ、ハートさんの部屋にいると、みんなが部屋を訪ねてくる。
尋ねてくる人たちは、みんなどこかちょっと不安そうで、このモーテルで起きていることや、自分の身の周りで起きたことを、こうやっていつもハートさんに相談しているんだろうな…という日常が伝わってきた。
そうやってみんなからの話を聞くハートさんに「信頼されているんだろうな」と思うのと同時に、自分のことも考えなきゃいけないからこそ、いっぱいいっぱいになっていくハートさんの姿が寂しくて、「ああ、この感情。どうしようもなく苦しい……」と思わずにはいられなかった。
それでもハートさんは自分の行動を振り返りながら、「もっとアリスの話を聞いてあげればよかった」と後悔したり、「どうしたらよかったんだろう」と私たちに相談してくれたりして、今を今で終わらせない姿勢に、とても心が熱くなるし、素敵なリーダーだなと思った。
最後、ハートさんがワンダーランドへ一人で行くことを決めたとき、ぽろっと涙が流れたから驚いた。「演劇を見て泣いている」というよりは、「さっきまで一緒にいた人の覚悟を見た」という感じがしてすごく不思議な感じ。
最後に録音されていたラジオが流れたとき、ハートさんの「チームダブルアールアンドビーの皆なら…」という言葉に、また泣けてしまった。
1泊目はハートさんへの想いが溢れた日。
--
7月18日(木)→7月19日(金)
思い返すのは約半年ほど前のこと。Moonlit Academyに参加していた夜。
泊まれる演劇名物の螺旋階段を上っているときにふと、「あの娘泊まれる演劇に参加したらどんな顔するだろう」と岡村靖幸みたいなことを思った。
頭に浮かんできた彼女は中学時代の同級生で、28歳になった今も旅行に行ったり、食事に行ったりと定期的に会っている。ここ数年は私が行きたい辺鄙な場所への旅行に付き合ってくれる友人に、なぜか突然、突然泊まれる演劇に参加してもらいたいと思った。
そういえば去年、雨と花束に参加したときに感じた興奮を、何人かの人に熱弁したのだけど、彼女もそのうちの一人だった。馴染みのあるご飯屋さんでピザを食べながら、招待状を見せて、話をした記憶がある。(いつも聞いてくれて本当にありがとう)
だから、誘ったときに「前に話してくれたやつ?」と覚えてくれていたのが嬉しかったし、「参加してみたい」と返事をくれたとき、頭のなかで螺旋階段を上る自分がガッツポーズをしていた。
--
「お互い仕事を頑張ろう」と友人に連絡をしてから8時間ぐらいが過ぎ、バタバタと用を済ませて電車に乗る。今日は前回みたいに特急には乗らず、友人と大阪駅で合流して一緒に向かえるのも楽しみの一つだった。
17時前後のJR大阪駅は新快速の乗車密度が1本違うだけで随分と変わるのだが、なんとかまだゆとりのある電車に乗ることができ、「今日のこと」について話しをする。
「緊張する」「大丈夫かな?」とどこか不安げな友人は、これまで演劇を観たことが記憶上ないらしく、初めての演劇が「イマーシブシアター」そして「泊まれる演劇」になるとのことで、なんだか私まで緊張しそうになった。
--
京都駅で少し用事を済ませて、18時40分過ぎにホテルへと向かう。
この日は友人が初めての泊まれる演劇というわけで、「せっかくなら」とVIPでの宿泊になった。
前回VIPで宿泊したときに、「入った順番で担当のコンシェルジュが決まるんだろうな~せっかくなら違う人のほうがいいかな」と思っていたのだが、なんだかんだしていたら、前回よりちょっと到着時間が遅くなってしまい、「最後に入ることになりそうだな」と思いながらホテルに向かって歩いていると、待っている人が誰もいないことに気付く。
時刻は19時ギリギリ前。なんと今日は前回よりも到着時刻が遅かったものの、入るのは1番目だった。こればかりはタイミングだから面白い。
19時。受付で友人が名前を言うと、コンシェルジュの方がついてくれる。名前は「ハトカワさん」というらしい。
部屋でモーテルの紹介と注意事項についてハトカワさんが説明してくれるのだが、話し方がすごく優しくて穏やかで、「いい人そうだな」と思いながら説明を聞く。
とある注意事項のときに、ゲストからキャストへの接触は禁止であることをハトカワさんが事例を出しながら説明してくれたのだが、友人が「え!絶対に大丈夫です。恥ずかしいし…」という感じでちょっとニコやかになっていて、その姿がずっと見てきた友人の姿と重なって、なぜかホッとした。
--
20時過ぎに部屋を出て、1階のロビーへと向かう。エレベーター前で友人と写真を撮ったのだが、友人の顔があまりにも緊張しすぎていて、「これはあかん」と二人で笑った。
座席に案内してもらった後、グッズを購入しに行くと、今日はまだピンバッジが全種類残っているようだったので、私は帽子柄、友人はポット柄を購入。
するとオーナーのこころさんが座席にやってきて、お茶会で名乗るスイーツの名前をくれた。私はアクセサリーとかネイルとか、色々と装飾が多かったので、「具だくさんなスイーツがピッタリ」と「サンデー」に。
そして、こころさんが友人に声をかけたとき、「緊張してますか?大丈夫ですよ、ここはすべての人がありのままの自分でいられるモーテルですから」みたいなことを言っていて、すごく感動した。
そんな友人にこころさんは「みんなに馴染みがあって覚えやすいスイーツ」と「プリン」という名前を渡していた。
--
お話会が始まり、「DRINK ME」と書かれたドリンクを飲むと、時空にゆがみがおきて30年前にタイムスリップ。
みんなでお茶会の準備をすることになったとき、「サンデー」という名前を呼んでくれたのは、コンシェルジュのハトカワさんに似ている「トキタさん」だった。(ハンドベルへの夢、ここでも散る)
普段お茶会の準備はアリスちゃんたちに任せているらしく「何をしていいのか…」と悩むトキタさんと一緒に、各部屋に準備を見にいったり、トキタさんのお部屋にあったお花を使ってテーブルの飾りつけをしたりした。
そういえば、トキタさんが各部屋を覗くたび、ノックをせずに結構な勢いでドアをガチャッとあけるのがめちゃくちゃツボで、すごく真面目そうな感じなのに、不思議なところがある人なんだなと勝手に思うなどしていた。
--
みんなの準備が終わってお茶会が始まりひと段落すると、空の扉の奥から泣き声が。
扉を開けるための鍵は、ダイヤルロックがついたボックスの中に入っていて、イットさんが「魔法の力を信じませんか?」と魔法が使えそうな人を探すのだが、トキタさんが声をかけてくれて、鍵を開ける協力をすることになった。
このメンバーはVIPのゲストから選んでいると思うのだが、じつは1泊目でも選んでもらっていたので、「魔法が使えそうに見えるのかな!!」とちょっとだけウキウキした。
無事にロックが解除でき、空の扉の前にハートさんが立ったとき、みんなに
「何があっても運命共同体だからね」と言うのだが、この言葉とハートさんの表情が本当にかわいすぎて、「えー!ハートさーん!やっぱり好き!」みたいな気持ちが湧きだしてくるもんだから困ってしまう。
空の扉が空く時、「そういえば前回ちゃんと扉の中を見れなかったかも」と思ったので、開く扉に注視していると、赤い靴と寝転ぶ人の姿だけがバッと目に入ってきて、心臓が冷えた。
ワンダーランドからやってきた王子の名前は「わたあめ」になった日。
シュークリームとかいろんなスイーツのなかからハートさんが独断と偏見で選んでいたのだが、あまりにも可愛いチョイスに「え!ハートさん!!!」と心が躍る。コットンキャディーじゃなくて「わたあめ」っていうのがとくに良い。
モーテルを自由に散策できる時間になったとき、近くにいた猫屋敷さんが「カラオケあるから部屋に来る人ー?」と誘っていたのだが、友人がスッと手を上げていて、なぜかすごくうれしくなった。
というわけで、一人になったので、「どこに行こうかな」と歩き始めると、ロビーから出ていくパンナコッタさんが見えたので、声をかけ、部屋に遊びに行かせてもらった。
部屋につくなりトランプを使ったシンプルなゲームをすることになったのだが、「俺が負けたら俺の持ってる秘密を教えてやる」といったかんじで、自ら勝負を申し込み、負けた時のお土産の提示に「エンターテイナーじゃん!」となぞの感銘を受けてしまった。
トランプを切ってるときに、「そのネイルは何色?」という感じで、パンナコッタさんが私のネイルについて触れてくれたのだが、そういえば前回泊まったときは、結構ゴテゴテしたネイルをしていたので、それを見たパンナコッタさんに「それじゃ、米はとげねえな」的なこと言われたことを思い出していた。
今回はそんなこと言われなかったので、パンナコッタさんのなかには、米とぎができそうなネイルとできなさそうなネイルの境界線があるのかもしれない。
トランプでの勝負はサラッと私が負けて、勝負事にはありえない「もう1回お願いします」をしたところ、快くOKをしてくれたパンナコッタさん(神)ただ、次も私が負けたら「お願いを聞いてもらおうかな」ということだった。
2回目の勝負は私が勝ち、パンナコッタさんから「本名」を教えてもらったのだが、その名前が口から出てきたとき、「アッ」となった。(あまり考察などはせず、前回公演のとき部屋のノートもあまり読めていなかったので、ここに来てやっとあなたがどんな存在であるのかを明確にしったわけです)
パンナコッタさんの部屋を出る前に。「1回負けたからもしお願いごとがあれば…」と聞くと、「トキタさんに経営についてちょっと聞いといてくれ」ということだったので、その足でトキタさんの部屋に向かう。
トキタさんは部屋で誰かと電話をしているようだった。入り口の前で「ちょっと待ってください(推測)」とジェスチャーをされたのだが、そのトキタさんの姿がとても刺さった。
部屋の入口で少し待っていると、電話を終えたトキタさんが部屋に招いてくれ、そこからモーテルの経営状況を聞いたり、一緒に企画を考えたりと、時間いっぱいまでトキタさんの部屋にいることになった。
途中、猫屋敷さんご一行がトキタさんの部屋にやってくるのだが、チャゲアスのヤーヤーヤーを1列になってオリジナルの振り付けで踊りながら部屋に入ってくるメンバーのなかに友人がいて、めちゃくちゃ笑いそうになる。
知り合って15年以上が経つけど、その友人の姿があまりにも新鮮だったので、大切に心の中に保存した。(猫屋敷さんありがとう!)
--
みんなの大切なものがなくなったことで、怪しい人を決めるための裁判をすることになった。前回はここからハートさんとご一緒したのだが、チラッと友人の方を見ると、猫屋敷さんに着いていったので、「さて、どうしよう」となる。
担当のコンシェルジュさんはトキタさんに顔が似ている方だし、さっきの時間はほぼトキタさんと一緒だったなあと、すこしワチャワチャッとなっているロビーを見ると、トキタさんの姿が見えず、「部屋に戻られたのかな?」と気になったときには体が動いていた。
歩き出すと、ちょうどイットさんとすれ違うぐらいのタイミングで、イットさんがわたあめに「探し物をしてください」みたいなことを言っていたのだが、そこを通り過ぎるタイミングでちょうどわたあめと目が合った。
その瞬間、私の口から咄嗟に「アッ」と声が出たのだが、わたあめが「手伝ってくれる?」と聞いてくれ、とくに断る理由もなかったので、「うん、行こう」と答えた。
「早くみんなが無くしたものを見つけたい」と言うわたあめはとにかく焦っていて、言動から「お茶会を楽しんでいたときのみんなに戻ってほしい」というのが伝わってくる。
まずパンナコッタさんの部屋に行って、わたあめと一緒に探し物をするのだが、棚の開け方も、物の触れ方も、ひとつひとつが大きくて、心がドキドキしてくる。
「読んで」と渡された紙に目をやると、どうやら何かの借用書っぽい。「なんだろう?」と思っていると、考える隙も与えないように「これは?」「探し物あった?」と矢継ぎ早に問いかけてくる。
次にわたあめが見つけたのがずっしりとした重みのあるカバン。中を開けると、かなりの量のお札が入っていて、「これはなに?」と尋ねてくるわたあめに「お札だよ」というと、「さっきお金の価値ついて教えてもらった」と言うわたあめが、とんでもない勢いでカバンからお札を出し始めるから、さすがに困った。
「ちょっと待って」と言いながらそのお札をカバンに戻していくと、奪うようにわたあめがカバンからお札を出して机の上に広げ始めるので、最終的には、「…せめて丁寧に」という謎の押し問答みたいな時間があった。
そこからの時間はどう書けばいいのか…と思う部分もあるけど、思い出しながら素直に書いてみようと思う。
アリスちゃんの部屋でわーっとなっているわたあめを目にしたとき、少しだけ思考が止まって、ふわふわとした感覚になった。
「二人も一緒にラジオに参加しない?」「座って」というアリスちゃんの言葉に甘え、椅子に座った瞬間にビターッとお尻が長椅子にくっついたんじゃないかとすら思ったほど、身体が少しだけ重かった。
だから、後ろに立つわたあめが、アリスちゃんの部屋にあるものを引っ張り出しながら、「これは何かな」と声をかけてくれるとき、お尻が椅子にひっつきすぎていたので、上半身だけがそれを追うような感じになって、自分の心と体が状況に全然追いついてないことに気付く。
アリスちゃんに注意されたわたあめが、部屋から飛び出していくとき、無意識にその姿をほんの少しだけ目で追ってしまって、それがすごくスローモーションに見えた。
ハッとしたときに、アリスちゃんから「ついて行ってあげられる?」と言われ、口からでてきた「うん」という言葉を飲み込んだ体は、ロボットが動き始める瞬間みたいにスローだった。
アリスちゃんの部屋を出た後、トキタさんの部屋に行ったわたあめはとても一生懸命にみんなの無くしものを探していて、それをほんの少し後ろから見つめながら「なんて声をかけよう」と思ってしまう。
体と心がちょっと乖離しかけていたのか、わたあめの近くにいるはずなのに、すごく遠いところからわたあめを見ているような感覚になったのだが、トキタさんの机をせっせと一人であけるわたあめが、引き出しをあけながら「サンデーが言ってくれたよね。"丁寧に"だったよね。丁寧に一緒に探そう」と言ってくれ、その瞬間にもとに戻ってきたような感覚を覚えた。
そのときのわたあめの後ろ姿は今でも頭の中にこびりついていて、膝立ちしながら一生懸命に無くしものを探す背中はとても優しくて、でもどこか寂しくて、そこでなぜか号泣しそうになってしまった。
「そう!丁寧に。一緒に探そう」みたいなことを言えたときには、ちゃんとわたあめの隣に立つことができていて、一緒に引き出しを開けることもできた。
そこからはエネルギーみたいなものが足の底から湧いてくるような感じで、「私が私としてちゃんとここに存在している」という感じが戻ってきたように思う。
少し話がそれてしまうけど、「雨と花束」に参加したとき、今回の状況と近しい気持ちになったことがあった。
当時のことをnoteにこう綴っていて、「もしかして私、イマーシブに向いてない…?」なんて気持ちも芽生えてくるのだが、たぶんそれだけ没入しているのかなあと、いい方向に捉えてみる。
そして、トキタさんの部屋以降、シナモンロールさん(神)とクロワッサンさん(神)がご一緒してくださったおかげで、肩の荷が下りて、もっとクリアな視界でわたあめを見ることができた気がする。
あの状況を一人で浴び続けるのは贅沢な時間と分かりながらも、あまりにも膨大なエネルギーをひとりで抱えきれなくて、「一緒に分かち合える人がいるってこんなに嬉しいことなんだ…」と、泊まれる演劇において、とても大切な感覚を味わうことができた。
猫屋敷さんの部屋で見たもの、感じたこと、4人でやった指切り。どれもが何かあっても手放したくない大切な記憶になった。
そういえば、4人でチームとして行動することになって、あらためて自己紹介をするときに、自分の名前を言ったら、わたあめがお二人に「ずっと一緒にいてくれる。優しい」と伝えてくれて、あの言葉で完璧に心が充電できたので、自分はとことん分かりやすい人間だなと思う。
その後、ラジオを邪魔しちゃったことをアリスちゃんの部屋に謝りに行ったとき、部屋には鍵がかかってて、中からハートさんが出てきたので、少し雑談をすると、部屋にはカセットテープが落ちていた。
落ちていたカセットテープを「ハートの大事なものだと思うから、渡しておいてらえる?」とわたあめから渡してもらい、受け取った。
カセットテープを受け取った後は、王子が探し物を続けて、私たちは「白紙投票ができること」を伝えるためにロビーへ戻ると、あっという間に投票終了の時間になった。
わたあめと過ごした時間のあとに、あの空気に触れてしまうと、本当にしんどくて、さっき一生懸命だったわたあめの背中が頭の中にたくさん浮かんできて、1回目の時には感じなかった「もう見ていられないかも…」みたいなヒリヒリする感覚を覚えるほどだった。
最後、わたあめがこの世界に残ることを決めたて話をするとき、ちゃんと目が合っていたような気がして、無意識にコクッと頷いてしまったのだが、そのときの首の感覚が今でも残っている。
私なり精一杯のアクションだったからなのか、それとも後半戦、気が張りすぎて首がガチゴチだったので、突然動かした反動なのかは難しいところ。
そういえば、すごく印象的だったことがあった。パンナコッタさんを調べるために睡眠薬をお酒に混ぜることになったとき、わたあめから睡眠薬を手渡されたのだけど、いざパンナコッタさんの部屋に行ったときに「やっぱり、これはダメだよ」という話になり、シナモンロールさんもその行動を止めてくれた。
すると、「じゃあ僕がやる」と結構な力でわたあめに瓶を奪い取られてしまったのだが、その時の力が結構強くて、私の手元から瓶が離れたときに、わたあめの悲しさとか怒りみたいなのが伝わってきて、心臓が抉られるかと思うぐらい痛くなった。
終演後、VIPの特典でわたあめと一緒にラビットホールに行くのだが、最後空の扉からロビーに戻るときに、とあるお願い事をされ、「それを明日教えてね!お休み」と言われ、「…寂しい……」という気持ちがメキメキと芽生えて、口から出そうになった。
そしたら隣にいた友人が「え、めっちゃ寂しい。明日会われへんよな…?」と尋ねてきて、共感×100を送りたくなった。本当に寂しかった。
そういえば、前回VIPで入ったとき、わたあめは結構な時間ロビーにいたような気がする。それこそ一緒に空の扉から出てきて、そのまま三人で椅子に座ってトキタさんと喋った記憶もあるので、待機する場所は少し変わったのかもしれない。
それにしても、こんなに寂しい「また明日」はこれからも経験しないんじゃないかなと思う。
あ、そうだ書き終えたタイミングで思い出したけど、10分ほどの休憩時間で友人がお手洗いに行き、周りの人もグッズとかを買いに行っていて、ポツンとひとり椅子に残ってしまった瞬間があった。
スマホ触る感じでもないので、「何かしてる風を装おう」と、ひたすら後ろの小道具を見つめていたら、パンナコッタさんが声をかけてくれた。有難過ぎて「なんかすみません。ありがとうございます」って自然とお礼を言いそうになった。だから今お礼を。大変ありがたかったです。
8月28日(水)→8月29日(木)
この日記を書き始めたのは8月24日(土)のこと、本来であれば「あと4日でクイーンズモーテルに行けるぞ!」とワクワクが止まらない時間を過ごしているはずなのだが、いかんせん今の私はソワソワしている。ときには祈るように、マウスをクリックして、「何回見たら気が済むねん」というぐらい見つめてしまうページがある。
どうやら台風10号「サンサン(パンダみたいで可愛い名前)」がこちらに向かって、ゆっくり、ゆっくりと歩みを進めているらしい。その進路は着実に関西に影響を与えそうな感じだ。
台風に気付いたときは「ギリギリ被らないか」と思えた進路も、今の時点では「オーマイガー」と言いたくなる感じになっている。
とにかく今は待つしかない。「3日間の日記」という仮タイトルをつけて、6月の頭からチミチミと書き進めていたこの日記も、もしかすると書き始めた頃は考えもしなかった、思いもよらぬ形で結末を迎えるのかもしれない。
--
相も変わらずゆっくりと進んでいるサンサン(台風10号)。
27日の時点で台風はまだ九州方面の近くにいる状態で、なんとか28日(水)のお茶会に参加できそうだった。
そういえば、今回の宿泊日を決めるにあたり、友人が「水曜日のお茶会だから、水曜日に予約する?」と言ってくれたことを思い出す。「そんなオシャレな泊まり方があるんだ…」と感動したなあ。
--
台風のこともあるし、せっかくなら九条駅でHOTEL,SHEKYOTOと最果タヒさんがコラボしてる展示を見たい!と意気込んでいたのは当日の11時頃まで。
あまりにも終わりが見えない仕事に頭を抱えながら、「私には特急という最終手段もあるから……」とブツブツ言いながらパソコン画面を見つめ、無事”最低限”のところまで業務を終わらし、本来到着したかった時間より1時間遅れで京都駅に到着。
仕事終わりの友人と合流して京都駅に向かう。
道中、去年雨と花束の公演に入る前「これってどんな感じ?」と何も知らない状態であの道を歩いていたことを振り返っていた。
19時40分ごろにモーテルの前に到着すると、赤いベロアカーテンの前にはスタッフの方が立っていた。
「台風が重ならなくて、こうやってお会いできてよかったです」といった感じで声をかけてもらい、「本当にそうだな」と、今当たり前みたいな顔をしてこの場所に辿り着いたことを少し頭に浮かべながら、「まずは来れて本当によかった」と改めて思った。
--
20時10分頃にロビーへ降りると、ちづるさんが席に案内してくれた。
一番左端の机がぽつりと空いていてそこに案内してもらったのだが、これまで2公演はVIPで入っていたので、「違う角度から見れる」と嬉しくなる。
杏仁マンゴーのアイスを食べながら席に座っていると、オーナーのこころさんが今日のお茶会で名乗るスイーツの名前をつけにきてくれた。
さかのぼること1ヶ月ほど前、2回目の公演が終わった後にネットの海を彷徨っていたところ、とてもかわいいピアスに出会った。画面越しに目が合った瞬間、真っ先に思ったのが「パルミエみたいだな」という感想。
そんな感想を抱けるのは、クイーンズモーテルで「パルミエさん」という素敵なお名前の人と出会ったからであり、そんなこともなければ思えなかった感想だと思う。値段がピアスにしてはちょびっと高かったけど、「そう思えたのも何かの縁」と言い訳をして購入ボタンをポチッとした。
座席に座ってこころさんが目のまえにやってきたときに気づいたことがある。それは手元のカードが減っていくこと。
あまりにも当たり前の話過ぎて本当に笑ってしまうんだけど、パルミエみたいなピアスをつけているからといって、パルミエのカードが残っていなければ選ばれないじゃん…!と理解した時にはもう遅かった。
緊張の名づけは私から。そして、カードを広げて私のことを見つめるこころさんの手元にはたった4枚のカード。
すると心さんが私のピアスを見てハッとした顔をして、「もう絶対にこのお名前がピッタリです」と言ってくれた瞬間に確信した勝利。パチンコでいうところの「確定演出」という言葉が頭に浮かんでくる。
こころさんがとってもかわいい笑顔で差し出してくれた「パルミエ」という名前は、今夜私が過ごすスイーツ名になった。
--
「お茶会の準備で名前が呼ばれないとこんな感じになるんだな~」と少し贅沢な気持ちを味わいながら、パンナコッタさんに着いていき帽子の準備をする。(1回目参加のときから掲げ続けていたハンドベルへの夢が散った瞬間)
私は猫屋敷さんの帽子にワッペンをつけることになったのだが、イメージがめちゃくちゃ明確にある方なので、作りやすかった。
それに一緒に帽子の準備をしていたみなさんが「これがギャルっぽい」と提案してくれたので、あまりにもスムーズに決まって、私だけのというよりは、みんなのイメージで作り上げた猫屋敷さんの帽子になったのもとてもよかった。
--
空の扉に異変が起き、鍵を見つけて、扉を開けるとき。やっぱり私はこの瞬間のハートさんが大好きだなと思った。
みんなから頼りにされてるハートさんが、ちょっと不安そうな顔で「いいわね?運命共同体だからね?」って問いかけるところが本当に可愛すぎるので、脳みそからこのシーンを見た記憶だけを切り抜いて、別のフォルダに生涯大切に閉まっておこう思う。
そして、空の扉の異変後、モーテルを探索する時間になったとき、私とクロワッサン(友人)そしてエクレアさんの三人はこころさんからお使いを頼まれることになった。
クロワッサンは猫屋敷さんに恋人がいるかの確認(恋バナ)、エクレアさんは空の扉からやってきた王子の確認、そして私はトキタさんにご家族がいるかどうか、関係性なども含めて聞いてくることになった。
何か有力な手掛かりを掴めたとき、こころさんに合図できるようにポーズを決めるのだが、エクレアさんとクロワッサンがさっきまでトキタさんと一緒にお茶会の準備をしていて、パンナコッタさんの部屋にクロワッサンが虫眼鏡を覗きながらやってきたので、虫眼鏡ポーズが合図になった。
こころさんが「わかりました!このポーズですね!」と虫眼鏡ポーズをやってくれるのだが、その動きがえらく俊敏で笑いそうになる。とってもかわいかった。
--
こころさんからのお使いを胸に抱き、いざトキタさんのお部屋へ。
部屋を覗くとトキタさんはお電話中のようだった。前回参加したときにも思ったけど、「電話してるときのトキタさん、なんかめっちゃいいよね」って話はこれから何度も言っていきたい。
部屋にお招きしてもらい、モテールの状況などについて伺いながら、モーテルのイベントについて考えることになった。前回は「どんなイベントがいいですかね?」って質問だったと思うので、「たこ焼きパーティ」とロビーでできるイベントをみんなが提案するような形になっていた。
だけど今回は「好きなものはありますか?それに関連するイベントを考えるといいかもしれません」という感じで、好きなものから派生させていく考え方にアップデートされていてすごく関心した。良いアイデアの出し方だ…。
私は本が好きなので、そこから何かイベントに繋げられないかと考えていると、「ロビーに1冊ノートを置いて、宿泊者の人に1ページずつ物語を紡いでもらうのはどうですか?」という我ながらナイスな案が出た。
その案をトキタさんがとても気に入ってくれて、「素敵です」と褒めてくれた。「パルミエさんはもしかしてお仕事で書き物などをされているんですか?」と質問されたので、「(えっすごい!)そうです」と答えると、「1ページ目はぜひパルミエさんに書いてほしいです」とまた嬉しいことを言ってくれたので、「もっともっと頑張って内容を詰めていくぞ!」みたいなプロジェクト魂に火がつく感じを覚えた。
次の瞬間、「ちがう、そうじゃない」と頭の中の鈴木雅之が歌い始めたので、「……あと、家族との特別な時間を過ごせるイベントとかもいいですよね」と、見切り発車もいいところだと怒られてしまいそうな提案をすると、トキタさんの顔色がガラッと変わり、そこから少しご家族のことについて話を伺い、「お子さんのことを聞くぞ!」というタイミングで、何かがこちらに近づいてくる音が聞こえてきた。
遠くから聞こえてくる音という名の声を耳が受け取った瞬間に理解した。「これはチャゲアスのヤーヤーヤーだ」。
なんていったって8月25日からサブスクで全楽曲が解禁されていて、解禁されてからの約3日間で5回は聞いた、今の私にはあまりにも馴染み深い曲。
そんな曲を素敵な振り付きで歌いながらトキタさんの部屋にやってきた猫屋敷さん、そしてクロワッサンと、サンデーさんにバナナパイさん。
それにしても私は友人が踊るチャゲアスに縁があるのか、前回に引き続き、今回も友人がチャゲアスを踊る姿を見ることができてうれしかった。
そのあとパンナコッタさんのお部屋に行くと、エクレアさんがいらっしゃって、三人でラビットホールの入り口まで行くことになったのだが、ロビーに戻ろうとしたタイミングで、ちょうどロビーには王子たちがいたようで、なかなか出るに出られず、三人で絶妙に暗い場所で待機してる時間がなかなかにシュールだった。
--
みんなの大切な荷物が無くなったことで裁判をすることになってからは、こころさんと一緒に行動することに。
こころさんがここにやってきた理由、トキタさんとの関係性、そして「知りたい真実」などなど。
いろんなことの話を聞きながら、真実に辿り着くために一つずつこころさんが抱く疑問を解消するために動くなかで、トキタさんの部屋に行くと、こころさんが赤ちゃんの頃に大切にしていたぬいぐるみが大切に保管されていて、それを見たこころさんの表情がとてもやわらかくて、本当にうれしそうな姿にグッときた。
そのタイミングでトキタさんが部屋に戻ってきたのだが、いかんせん雰囲気がピリピリとしている。こころさんが、今のこころさんだからこそ伝えられる言葉をかけても「お客様に何が分かるんですか」と言い返されてしまい、部屋から出ていくこころさんを追いかけた。
廊下の扉の前で肩を震わせて涙を流すこころさんの後ろ姿を見たとき、もう本当に心臓が抉れていくような感じがして、何か声をかけたいのに、なんて声をかけていいのかが分からない。咄嗟に「大丈夫ですか?」と言いそうになる自分に嫌気がさした。
それでもこころさんはとても逞しくて、真実を知るために、そして抱えている疑問をひとつずつ解消させるために、アリスちゃんやイットさんに会いに行く。
アリスさんの部屋では「トキタファンクラブ(その場で設立)」としてトキタさんの人柄やプライベートについての質問をし、イットさんの部屋では「招待状を送ったのはイットさんではないか」という話を聞く。
それにしてもイットさんの雰囲気は凄まじい。音楽が流れているはずなのに、ピキーンとした音が耳に届くような空気感を作るし、まっすぐな表情で穏やかに伝えられる言葉にじんわりと肝が冷えるような感覚さえ覚えるほど。
だけど、最後にこころさんの目を見て真っすぐに伝えていた「あなたが(招待状を必要としていると思ったからです」みたいな言葉に、心がぐらぐらと揺れ動くような感じがした。
--
ロビーに戻り、投票のために名前を書くのだが、今回は何も悩むことなく「パイ(この日の王子の名前)」と書くことができた。だってどう考えても「パイ」と書くしかないような話を聞くことも多くて、そりゃパイと書いてしまうなと思うことばかり。
裁判が始まるとき、こころさんの隣に座ることになったのだが、「トキタさん」と1票入ったときに、こころさんの表情が青ざめていくのを目にした。ハッとしたようにこころさんと目が合ったとき「トキタさんはそんな人じゃないから大丈夫ですよ」っていう言葉が自然と自分の口から出ていた。
パイに投票が集まるなかで、笑顔で大きな袋を持ってロビーに遅れてやってきたパイ。するとパイに「ちょっと来てくれる?」と声をかけられたので前に出ると、「これってみんなの荷物かな?」といった感じで大きな袋の中を見せてもらった。
中をみると、そこにはラジカセにヴィオラ、それに壁時計と、袋のなかにはみんなの大切な荷物がたくさん入っていて、その瞬間に心がズキズキと音を立てる。
袋の中に入っているのはみんなが探していた荷物であることを伝えると、それはそれは嬉しそうに「これでお茶会の続きができるね!席に戻ろう」と伝えてくるパイに、また心がズキズキとする。
荷物の袋のなかにトキタさんの帽子についていたダイヤモンドのワッペンが入っていたことを機に話は大きくと動いていくのだが、ここから最後まで、隣にいたこころさんの表情が変わっていくのが本当にくるしくて、拳をずっと強くグーで握っていた。じゃないと慰めたくなってしまうから。
パンナコッタさんのお金を使ってトキタさんが借金を返済しに行くタイミングで、こころさんとトキタさんが一緒にお辞儀をしていたのだが、自分の視界に入るトキタさんとこころさんの姿が重なって見えて、何かの糸が解けたらボロボロ泣いてしまいそうになったけど、さすがに堪えた。
ハートさんのワンダーランド行きが決まり、バーウェンズデーが開いたとき、こころさんがティラミスさんと私にお礼を言ってくれたのだが、そのときの表情が晴れやかで、「幸せになってほしい」と思うほかなかった。
そういえば、この日すごく印象的だったのが、パンナコッタさんとエクレアさんと私で空の扉に向かうとき、三人でパイの話をしていたら、偶然パイとすれ違ったタイミングがあった。
パンナコッタさんが「今ちょうどお前の話をしてたんだよ」と声をかけたとき、「僕の話を?どうして?パンナコッタとエクレアと…あと…名前は…?」という感じで私のことを困った顔でみるパイの表情が、あまりにも「はじめまして、どちら様ですか?」という感じですごく印象的だった。
モーテルにいると、いつの間にか自分の名前を知ってくれている人がいる瞬間に出くわすこともあるけど、パイの「初めて見たもの・触れたものには”初めて”と素直に言う」という姿勢がすごく好きだなと思う。
--
バーウェンズデーのオープン後、カクテルと念願だったキャロットポタージュを頼む。席で念願のキャロットポタージュを堪能していると、トキタさんがやってきてくれた。
「じつは他のゲストの方から面白い話を聞いたんです。1ページ目に書いてもらう物語の導入の参考になればと思い…」と伝えてくれたのだが、その内容が「ある人の真実を知るために、30年後の未来から過去にやってきて人たちが、その真実を見つけるために行動するといった話らしく…」みたいな感じで、クゥーーーー!!となった。
「そのお話を参考に書きます!」「主人公はトキタさんをイメージして書きます」と興奮が抑えられないなかで、トキタさんが「嬉しいですが、私に会いに来てくれる方なんていますかね…?」と絶妙に不安そうな顔をしていたのが大変良かった。トキタさんは、大切に想われる人です…ということを本当に心のそこから伝えたくなる。
パンナコッタさんの部屋でクロワッサンと楽しく写真を撮ってるとき、トキタさんが私がロビーに置いてきてしまった忘れものを届けにきてくれた。
そのときに”世界で一番大切なコースター”という言葉があまりにも普通に出てきて、それは本心ではあるのだけど、このペラペラとした感じに、私はあさぎりゲンみたいな人間なのかもしれないとほんの少しの不安を抱えた。
今回は5月17日から8月31日までのロングランということもあり、1ヶ月半に1回ぐらいのペースで参加したのだけど、あらためて、ストーリー自体は変わらなくても、自分が歩んだ道で捉え方も感じ方も大きく変わるなあと思うことが多かった。
なかでもとくにその感覚を覚えたのが裁判の時間。ハートさんと過ごしたあの夜は、ハートさんの「誰にも投票したくない(誰も悪者にしたくない)」という葛藤を見たからこそ、私も悩みながら結果的に無記名で投票をしたし、わたあめ(王子)と過ごした夜は「無記名で出す」という選択を一緒にいる人たちとしたから、何も書かずに出した。そしてこころさんと過ごした夜は悩むことなく、結構大きな字で「パイ(王子)」と書いた。
「結果を知ってるけど、こう書こう」みたいな気持ちがまるで出てこなかったのが印象的で、きっとそれは、私がそれぞれの夜に、30年前のクイーンズモーテルに存在していた何よりもの証拠なんだと思う。
本当に楽しい楽しい3ヶ月だったな。
それにしても泊まれる演劇は私にとって改めて生活の続きにあるものだと感じる。ギリギリまで仕事をしながら、準備を始めるためにセットしていたアラームを「あとちょっと、あとちょっと」って言いながら引き延ばして、前日に荷物の準備をしていた自分に感謝しまくる時間は、いつも通りの日々と何ら変わらない。
バタバタと家を出て、電車に乗り、学生時代から知っている友人やプロジェクトの仲間と合流する。そうやって生活の続きにある感覚で参加できるからこそ素直に楽しめている部分もあるのかもしれない。というか、それが偶然自分にハマったような感じがする。
だからこそ、開催場所が変わったり、一緒に行く人が変わったりすると、また違った見え方ができるのだろうし、それはそれで楽しそうだなとも思う。
それに、周りにはあまり泊まれる演劇の話ができる人がいないので、いつか一人で行ってみるとまた違った視点で楽しめるのかもしれない。
そしてあらためて、毎度泊まれる演劇の話を聞いて、一緒に参加してくれる友人たちへの感謝という名の愛が止まらなくなった8月最後の日。
2025年の大阪公演も心の底から楽しみにしています。
--
余談だけど、2024年は泊まれる演劇(ムーンリットアカデミー)→サンボマスターの全国ツアー(鹿児島、金沢、奈良、沖縄)→泊まれる演劇(クイーンズモーテル)と、月単位で好きなものに触れる時間があり、4月にムーンリットアカデミーに参加したnoteを投稿した後は、「各所のライブに行ったエッセイを書くぞ!」なんて意気込んでいたものの、そこをゴソッとサボッてしまったので、結果的に泊まれる演劇のnoteが投稿画面に2本続く形になった。
この後、またライブが続き、検定を受けたら年が明け、そしたらまた次の泊まれる演劇がやってくる予定なので、できれば次の泊まれる演劇のnoteをアップするまでには、エッセイやら日記やら、日々の生活のことを言葉にする習慣を作りたい。
じつは7月に、そんなことを想うキッカケになった言葉たちとの出会いがあったので、こればかりは有言実行といきたいところ。