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2か月前に観た、アイスと雨音
2ヶ月ほど前にアイスと雨音を見に行った。
その日に感じたことを言葉にしよう、しようと思いながら毎日同じような時間を過ごしていた。
そろそろ、書いておこうと、パソコンの電源をつけ、インターネットを開く。
「小林麻耶引退」の6文字を見つけ、まっさきにクリックした。
今日もそんな感じで、しなくちゃいけないことを後回しにして、何気なく知りたいことや、やりたいことを先にしながら生きている。
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アイスと雨音の公開をしったのはいつだっただろうか、
私はMOROHAがとても好きだ。
初めてMOROHAのライブを見た時、偶然いた最前列、アフロさんの目の前。
掴んでいたバーには力が入り、汗がにじみ、目からは涙が流れていた。
感動しているような、表現とも捉えられるかもしれない。
でも、その時は、感動していたのではない、ただ、突き付けられた現実に絶望をして、このバーから手を離したときに、私はきっと泣きわめき、膝から崩れてしまうのではないかと思っていた。
だから、必死に、目の前の現実と向き合ったあの時間は、今思い出しても、あまり良くはない時間。
ただ、それから何度もMOROHAというバンドは、私が好きなバンドの対バンに呼ばれ続けた。
私が生きている日々は、毎日退屈で、味気なければ、つまらなかった。
それでも、なんとなく描く「何かで成功する未来」に希望を抱き、だたひたすら、周りを見ずに歩き続けていた。
そんな日々に急に「待った」をかけたバンドがMOROHAだった。
アイスと雨音は、MOROHAが出るから知った、予告の動画を見た時に「この映画を見たら、どんな気持ちになるのだろう」と不安になるような映画だった。
登場してくる人たちみたいに、何かを頑張ったり、何かを目指した記憶はない。
それでも、ただ生きているだけで、挫折とも呼べないような、中途半端な挫折をしている人生。
だから、こんな映画を見てしまったら、私はまた、現実と向き合うことを自分から選択しないといけなくなってしまうんだ。と思った。
MOROHAのライブを見る時は、日常の中で唯一、現実と向き合う時間だ。
映画を見に行く日は、21時までアルバイトをしていた。
いつもなら、20時ぐらいからお客さんが来なくなる店だから、あとはお店が閉まるのを待ち続けるだけなのに、この日は違った。そう。この日だけは違った。
20時前に来たお客さんの接客を閉店後までずっとしていた。
とても良いお客さんだったな。でも、上がる時間はレイトショーに間に合うギリギリの時間で、ダッシュで退勤ボタンを押して、ダッシュで電車に乗って、映画館がある最寄り駅にまで急いだ。
私は、大事な日や、心を落ち着けておきたい日に限ってバタバタしてしまう。
これはもう、いつものことだった。
のどが渇いたから、映画館の近くにあるコンビニに立ち寄ったら、偶然、前のバイト先で一緒に働いていた中国人の女の子がいた。
レジで「元気!!?」なんて話しかけられて、本当は、もっともっと話したかったけど、映画が始まる寸前だったから、「またくるね」とだけ告げて映画館に急いだ。
色々バタバタしている気持で映画を見ることになった。
私らしくていいな。と思う事が、自分と向き合う唯一の方法だとは知っている。
映画は、時間通りに始まった。
もし私が、あの映画のレポートを書くとするなら、「とてもよかったです」とだけ、簡単な言葉で終わらすことだってできる、それでも、そんな簡単な言葉だけでは終わらせてはいけない映画だと思った。
だから、ここまで、この日、こうやって映画のことを文章にするまでに時間がかかった。
記憶をたどりながら書く文章、今私は、6月のしけった空気の中に居る。
外は23時、映画は90分で終わった。終わって、どうにかなりそうな気持ちが心にうずいた、誰か、知らない人に話を聞いてほしい気にもなった。
同じ映画観て、今、このエレベーターに乗ったこの人は、どんな気持ちになっているんだろう。
なんて思いながら、耳にイヤホンをし、三文銭をかけた。
いつもそうだ。何かあれば、心の中に抑えられないような出来事が起きれば、すぐに三文銭を聞くようにしているんだ。
電車に乗ってから、最寄り駅につくまでの30分ぐらい、ずっとフワフワしていた。
映画の内容は、全然といっていいほど覚えていなかった。
コンタクトが乾ききるぐらい、力を込めて観た映画。
途中で疲れてしまって、スクリーンから目が離れた瞬間、周りに座っていた人たちが真剣に映画を見ている姿が目に入った。
みんな、力が入っているようにみえた。
そんな映画は、今までみたことがなくて、この空間にいる人は、現実に向き合わないといけない人たちなのか。と思った。
そう思えると、少し安心して、力をぬいて映画をみることができた。
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アイスと雨音を見た時に、誰か私の友達に知って欲しい!なんて気持ちよりも。
この映画を見ないといけない人に、どうやったらこの映画を教えてあげることができるのだろう。と思った。
観れてよかった映画でもあり、観たくなかった映画。
それでも、誰かに、いや、この映画を観るべき人に、いつか出会ったら、金曜日の夜にお酒なんか飲みに行こうよってさそって、たくさん話ができる時間を確保して、この映画を薦めるんだ。