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【感想】泊まれる演劇:Moonlit Academy

「創立記念セレモニーへの招待。どういう服を着ていくべきか…」と悩んでいたときに、「あっ」と思い出した服があった。

当分着ずにクローゼットにかけていた黒のワンピースを手に取り、「もしかしたら今日は付けられるかも」とクローゼット内をがさごそすると、随分と前に買ったものの、普段着に合わせるたびに、フォーマルになりすぎて「今日はやめておこう」と諦めてしまうことでお馴染みのパールのサスペンダーと目が合った。

手に取った黒のワンピースに重ねてみると、「フォーマルってこういうのでしょ!セレモニーにピッタリ」と嬉しくなる。

インスタでパールサスペンダーを見かけるたびに、「着てみたい」とポチッとしてしまうのだが、驚くほど使い道がなかった。

着用例でTシャツに合わせているパターンを見たとはいえ、在宅で仕事をしていて、出かけるとなれば、近所の特定の場所に行くぐらいの日々を送る私にとって、たまの友人とのご飯にパールサスペンダーを着けて出かけることは、どうしても気が引けてしまう。

「今日の私には似合わない。ちょっとフォーマルすぎる…」と、服に重ねては諦めるような日々が続くなかで、タンスの肥やしになりかけていたアイテムをやっと外に出してあげられる日がやってきたことが、本当にうれしかった。

ミッキーの足

大好きな服や着てみたかった服を一番似合う場所に連れて行ってあげられる。これも泊まれる演劇に行くひとつの楽しみ方なのかもしれない。

泊まれる演劇『Moonlit Academy』に参加した日の感想を書いています。
雑記ですが、ネタバレも若干あります。

2024.01.24→01.25

かわいい

思い起こすこと、約半年以上前。

前回公演である『雨と花束』のチェックアウトをした日、『バースデーランウェイ』というプロジェクトを一緒に作っていた友人と大阪で打合せをするため、京都から大阪へ向かうことになっていた。

このモーテルのなかで起こった出来事に想いを馳せながらチェックアウトを済ませて外にでると、7月の京都はかなり暑くて、儚い雨に包まれた昨夜のことが嘘みたいだなと感じた。

京都駅のホームで合流をして、打ち合わせ場所までは、ほぼずっと泊まれる演劇の話を聞いてもらい、ひとつひとつのリアクションがとても新鮮で、聞き上手な人だなあと思いながら、「次の公演に一緒に行きましょう」とお誘いをしたんだった。

あれから半年以上が経った2024年1月24日。待ちに待った『Moonlit Academy』に参加すべく、弁天町駅へ向かう。なんといってもこの日は初めてVIP参加をすることが決まっていたので、どんな感じなのかが全く予想できなくて、楽しみで仕方がなかった。

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外観がかわいい

HOTEL SHE,OSAKAに到着後、入り口で待機していたスタッフさんに声をかけてもらい、予約していた名前を告げる。少しホテルの前で待機すると、準備ができたようで、呼んでもらった。

スタッフさんの後ろに着いてエントランスの階段を上がり、扉を開けてもらって中に入ると、真っ先に目に飛び込んできたのが、ムーンリットアカデミーの生徒たちが、「ようこそ!(みたいな感じ)」でかなり明るく出迎えてくれた。

たった1枚の扉の向こうに広がる現実とかけ離れた世界。ただ、そこに並んでいる学生たちは、着こなしは違えど制服を着ていて…なんだか馴染みもある。

何が何だか分からないまま、頭と心がこの状況を必死に理解しようとしているのがすごくよく分かった。

空間に漂うオーラが驚くほど「陽」だったので、ちょっとドキマギしていると、すぐに寮分け検査を受けることになり、リュックを背負ったまま反復横跳びをしたり、質問に答えたりすると、検査をしてくれた子が勢いよくキーボードのエンターキーらしきものを叩いた音が聞こえ、「赤月(レッドムーン)寮」になったことを教えてくれた。

レッドムーンだから顔はこの絵文字で隠す

すると、私の隣に立っていた「波波(ウェイウェイ)」という名前の女の子は、どうやらレッドムーン寮の3年生のようで、部屋まで案内してくれることになった。

彼女に着いていくと、1階の奥にある扉が開き、そこには赤い照明で照らされ、どこかモクモクとした雰囲気のある廊下が広がっていた。

いろんなことがまだ分かり切っていない状態で唯一、「この子は絶対にギャルなんだろうなあ」と確信を持てたウェイウェイちゃんは、私たちが今日今日泊まる部屋に案内してくれた。

部屋の中で宿泊やセレモニーについての説明をしてもらうなかで、波波ちゃんが部屋に置いてたレコードの上に記入用の紙を乗せて回そうと試みる姿を見ていると、その底抜けの明るさに圧倒されそうになる部分もあったけど、「今日のセレモニーを盛り上げたい!楽しみたい」って気持ちが声と態度から伝わってきて、「きっと素敵な人なんだろうな」と思った。

「じゃあ、また後でね~」と波波ちゃんが部屋から出ていくのを確認して、部屋の扉がパタンと閉まったとき、さっきまでウェイウェイちゃんが居た部屋のなかが一気に現実になり、部屋の外に広がる非現実的な世界と、今私がいるホテルの部屋の中には大きな隔たりがあるような感覚を覚えた。

今自分がいる場所には、たしかにムーンリットアカデミーの世界が広がっているけど、「ホテルの部屋」という隔離された空間は、さっきまで感じていたてんやわんやな心の状態を落ち着けてくれている気もした。

「チェックインが終わって少し部屋にいる時間はゲームのセーブポイントみたいな感じだな」なんてことを考えながら、ロビーに集合するまでの時間をゆっくりと過ごした。

セレモニー参加者の集合時刻の10分ほど前に、「そろそろ、行きますか」と部屋を出る。こうやって「よし、行こう」的な切り替えができるのも、一度チェックインしてホテルの部屋に入れる泊まれる演劇の魅力だと思う。

元気いっぱいのみんなに迎え入れてもらい、そのパワーに押されたままセレモニーに参加していたら、私みたいなタイプは途中でガス欠みたいになってしまう可能性もあるから素直に有難い。

ロビーに集合するとざっと30人近いセレモニーの参加者がいて、さっき会った先輩たちと話している姿が見えた。

ソファの席に座っていると、「まんが」と名乗る先輩が「何の授業受けるの?」とか、「クリームシチューはごはん派?」などと色々質問をしてくれた。

「私はクリームシチューは、ごはんで食べるものだと思っている」と話したら気が合うことが判明したり、ベータ先生の授業を受ける話をしたらちょっと引かれたりと、とにかく愉快な人だった。

そうやって、ワイガヤガヤと場の雰囲気を楽しんでいたら、「Moonlit Academy」の創立100周年記念セレモニーが始まり、そこからは怒涛の3時間弱を過ごした。

起きた出来事や感じたことを書き始めるとキリがないので、内容については割愛するけど、心の底から楽しかった。

ドラゴンドックをテイクアウトして部屋に戻ったとき、まず「楽しかった」と言葉が出たのは、雨と花束のときとはまた違う体験をした証拠だと思う。

それに、今回VIPで参加して、グッズの寮バッジを付けていたからなのかもしれないけど、「よく話しかけてもらったし、よく話した」という印象が何よりも残っていた。

泊まれる演劇以外のイマーシブ体験をしたことがない私は、公演の内容にどっぷり浸って、いろな人と対話をしながら次の行動を考えて…というよりは、空間に広がる雰囲気を存分に感じるのが好きな気がしているので、前回公演のときはnoteにも書いたけど、途中で少し休憩したり、ゆっくり廊下を歩いたりと、自分のペースでゆるやかに公演を楽しむような感覚が強かった。

だけど、今回の公演では、常に役割が振り分けられているような感じがして、それがすごく新鮮だった。

それぞれにやることがあって、みんなで一つの解決に向けて動いていたからこ、終わってから「今回はよく話したな~」と思ったんだと思う。

あとは、最後にウェイウェイちゃんから「校長に呼び出されてる」と教えてもらい校長室に向かったのだが、これがVIPができる体験のようで、本当に凄まじい時間だった。

どう考えても幻聴だけど、空気の張り付いた「ピキーン」という音が聞こえてきたし、何も悪いことしてないのに(多分)自分の心臓がいつもより早く、トクトクという音を立てていて、校長室から出たときは、「無事に生きて帰ってこれてよかった」みたいな安心感を感じるほどだった。

2024.02.28→02.29

この日はVIPじゃなく、通常で参加したので、他の参加者のみなさんと一緒にチェックイン。ロビーで注意事項などの説明を聞いた後、泊まる部屋ごとに寮分け検査があった。

水泳用のゴーグルをかけた子に「ギャルポーズをお願いします」と言われた瞬間、友人と私が咄嗟に一歩後ろに引いてポージングをするまでの流れがとてつもなくツボだった。「ギャルポーズ」といえば、ちょっと後ろに下がってポーズするという共通認識を持っているのが判明して嬉しかった。

検査の結果、なんと2度目の「赤月(レッドムーン)寮」に。

「せっかくなら他の寮にも入ってみたかったな~」という気持ちもあったけど、超感覚かつ隠し切れないギャルマインドがレッドムーンを引き寄せているのなら仕方がない。

泊まれる演劇に複数公演入るメリットはたくさんあると思うけど、やっぱりイマーシブシアターなので、「話したかった人・見たかった人」を意識して追えるのはとても良い。

1公演目に入ったときに、未確認物体の反応をキャッチして、セレモニーに紛れ込んでしまったUFOキャッチャー研究部(略してU研)のライカちゃんがとてもパワフルでかわいくて、「もっと見たいな~」と思っていた。そんなライカちゃんもレッドムーン寮の生徒だったので、ある意味ラッキーだったのかもしれない。

レッドムーンの生徒は、1限に校長先生の有難いお話を聞くことになっていて、ここでU研の3人と一緒に授業を受けることになるのだが、既に1公演入っているので、3人が座る位置がなんとなく把握できていた。

「たぶんこの辺に座っていたら、ライカちゃんが近いかな~」と思う席に座ったら、隣にライカちゃんがやってきたときは、さすがに心のなかでガッツポーズをした。

あとこの公演では、「絶対にラストのフキちゃんのシーンを真正面から見たい」と思っていたので、真正面の席に座れたのも良かった。(席の話ばっかりですみません)

ふわあとフキちゃんが落ちてくるところも、それを受け止めるみんなの姿も表情も、どれもすごく美しくて、「創られている」というのを感じられて心がじんわり温かくなった。1公演目のときに見た角度も素敵だったけど、やっぱり正面から見れたのがとっても良かった。

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ムーンリットアカデミーの千穐楽が3月末で、自分が参加を終えてから2ヶ月近く経った今、改めて「泊まれる演劇が好きだな」と感じている。

その理由をじっくり考えてみたときに、いろんな見方や関わり方ができるイマーシブ体験はもちろん魅力的だけど、それ以上に、泊まれる演劇の舞台美術が堪らなく好きなんだと思った。

足を踏み入れただけでワクワクする空間がそこには合って、目に入るものひとつひとつから「現実の世界では体験できない何か」を感じ取ることができる。

自分たちが泊まる部屋がいい意味で「現実にあるホテルの部屋」って感じがするから、廊下に出たときにより非日常感を感じられるし、泊まる部屋だけが無機質で、内と外ををごちゃまぜにしないところが個人的には没入のキッカケになるのかなと思った。

文中にも書いたけど、空間にいる全ての時間が体験ベースだと、心が休まる場所と時間がなくて、個人的には疲れてしまいそうなので、このメリハリがより楽しさを生んでくれている気もする。

まんが先輩の部屋、ワクワクした
琥珀ちゃんの部屋サイコウ

次回公演の『QUEEN'S MOTEL』も複数公演入ることが決まっているので、本当に楽しみだなあ。

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▶『雨と花束』参加後note


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響あづ妙
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