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「やりたいこと」に気づいた今、動こう

「ほんなら、気を張りすぎんように。無理せんと頑張りや」

駅まで送ってくれた父が、バスターミナル前で荷物を下ろしながらかけてくれた言葉。不器用だから目は合わせず、それでもかけてくれた言葉が暖かくて、背中をバシッと叩いてくれるような感覚になったのは長いようで短かった1か月の休養で色んなことと向き合ったからだろう。

住みたい街で暮らしたい

そんな想いを胸に、ゆっくり時間をかけて土台を作り、やってきた金沢の街。そこで始まった生活は想像もできないほど辛く、毎日大きな壁にぶつかりながら何とか前を向いて「ここで暮らし続けるためにはどうすれば良いのか」を考えた。

金沢への引っ越しはやっと掴めた夢だった。一度はもうすぐで叶えられるタイミングで逃しかけた夢。それでも、諦めずに手を伸ばしてなんとか掴んだ。だから、叶えた夢をの続きを見たいと思っった。

今までできなかった夢の先の道へ進むために、書くことを諦めてでも、生活を優先することを決めた。暮らしができなきゃ生きてはいけない。だから、掛け持ちでアルバイトを始めた。

そんな日々と心の奥底に隠したはずの気持ちにギャップが生まれ、だんだん体がついていかなくなり、1か月の休養を取ることになった。

実家に戻って、過ごす日々はゆったりしていて、朝から猫と戯れて、ワンピースを見返したり、散歩をしたり。そして、頭の中がモワモワしてきたら言葉を紡いだ。悩んでいる事、自分の弱み。全部を言葉にして、丁寧に紡ぐ。

そんな日々を過ごしていると、ふと「私がしたかったことは何だろう」と思うようになり、金沢に引っ越しを決めるもう少し前の自分を思い出してみると、「そうだ、ずっと書く仕事がしたかったんだ」と思い出した。

いつか自分の人生にも終わりが来る。だから、やりたいことをやる

そう決めた22歳で、登録をしたクラウドソーシングサイト。少しずつ案件をもらえるようになり、いつしか生活できるお給料がもらえるようにもなった。

心のどこかで感じていた「いつか終わるかもしれない不安」とは向き合わないようにして、とにかく「明るい未来」を考えた。納品数が多い量産記事を綴るためのモチベーションを上げるためだ。

そこで「暮らしを変えること」を目標にし、引っ越しのために、ひたむきに突っ走った。

あれ。本当に自分がしたかったことはこんなことだっけ?

自分が言葉に力をもらって人生を変えたように、誰かの人生に新しい風を吹かすような「出会いの言葉」を書きたかったんじゃなかったっけ。

もっと昔を思い出そう。小3のときに母に買ってもらった特別なノート。絵じゃなくてもっと何か特別なものが書きたいと、筆を走らせ紡いだ言葉。担任の先生の机に勝手に提出をして、つけてもらった花丸が嬉しくてたまらなかったあの日。

いつしか、書くことが「仕事」になり「生きるための作業」に変わった。

もちろん、生きるためにはお金が必要だ。でも、それ以上に必要なことに気づいたから、思い切ってクラウドソーシングサイトに登録をしたのに。

大事なことを忘れていた。私は、書きたい。紡ぎたい。言葉を丁寧に紡いで、いつか誰かに「出会えて良かった」と思ってもらいたい。

誰かのためになりたいとか、そういうのじゃなくて、「ああ、今のタイミングでこの言葉に出会えて良かった」と安心してもらいたい。私が言葉にたくさん支えられてきたように、誰かの1日を、いや一瞬でも良い。人生に灯りを点せる言葉を生み出したい。

そうだ、そうだった。と思い出した時には心は決まってた。

今自分がしたいことは、知識をつけること。何となく足を突っ込んでみた世界に偶然居心地の良い場所を見つけ、留まっていた。甘えてばかりの時間に終わりを告げよう。甘えはいつしか「不安」や「コンプレックス」になり、書くことは作業になった。

このままじゃダメだと気づいた今動かなきゃきっと一生動けない。


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響あづ妙
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