味噌R-1グランプリ2022
(まだ雨がパラついてんな)
鉛色の空の下、俺はまるで牛のような足取りで帰路についた。
帰途、何を考えていたかはあまり覚えていない。半ば絶望したかのような憂鬱な気持ちと、こん畜生という悔しさがぐるぐると渦巻いていた。
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約40時間前
10月某日、某公園、ティーン向けファッション雑誌から飛び出してきたかのようなイケメンたちが次々と集まってきた。
(これが本当のイケパラか。。。)
そんなアホなことを考えながら、俺はこれから始まる大会に文化祭前の中学生のようなワクワクした気持ちでいた。※非モテのまんま
ルール説明、自己紹介もそこそこに(俺含む)イケメンたちはそれぞれの狩り場へと散らばっていった。俺はそれこそ中学生のようにチャリ移動なもんで、パンクしたタイヤのまんまで桜通側のプラダ前へ向かった。
17:00、於m
さあ踊ろう。ミツバチが踊る8の字ダンスのような求愛ダンスだ。いつも通り、ゲートタワー側の東山線吐き出し口あたりを拠点に声を掛けていく。ガンシカ喰らおうが軽く受け流されようが、あまり気にならなかった。リズムに乗る。脳内BGMはメンデルスゾーン交響曲第4番≪イタリア≫の第1楽章だ。
褒めるときに使ったフレーズはこれだ。
「お姉さんその花柄めっちゃ素敵やん。俺はミツバチのごとく目の前の花に吸い寄せられたわけ。え、求愛の8の字ダンス踊っていい?」
「お姉さんそのアクセサリーセンスいいね。光り輝いてる。俺は蛾のごとく目の前の光に吸い寄せられたわけ。」
イベントを使ったフレーズはこれだ。調査済み。
「今日ポートメッセで小田和正のライブなんだよね。いやマジで。俺はこの日この時この場所で君に逢えなかったら、一生後悔してたね。」
「え、ケツメイシのライブ?桜ひらひら舞い散ってた?それはいきものがかりか。てかライブの打ち上げ行こ!」
他
「構内でもどうせ声掛けられるよ。そっちより俺のがイケメンだし面白いから今ここでついてきた方がいいよ。」
「寒そう。」→「あれミートテック知らないの?筋トレとかダイエットしてる人の常識だよ。」※当日は半袖1枚で出撃
まだいくつかあるが割愛させてもらう。
そんなこんなで時間が過ぎていく。次のステップまで進めない。即報が流れる。気にしないフリをする。序盤の3~4時間はテンションもやや高く、神経も張り詰めているせいか瞬間風速のようにあっという間に過ぎた。
10時~11時。疲れの色が見え始める。開始当初はサラブレッドのように力強くリズミカルだった脚も、ただの棒になりつつある。
(まだだ、まだ終わってない!)
ラインは3つ交換して1つも帰ってきてない。交換した案件の顔なんて覚えてない。交換したことすら忘れてた。
4人連れ出したが全敗だ。セブンイレブンに寄ってくれた子だけは、純粋無垢な子どものように可愛かった記憶がある。
自分の意志で出場を決意した大会だ。獲物はゼロでも、せめて最後まで狩り場で狩猟を続けよう。踊り続けよう。ケツまで踏ん張ろう。脚はもはや産まれたての小鹿のようにガクブルだ。どっちが草食動物だよ。
屈伸をして肉食動物の脚に戻す。まだ歩ける。
だが無情にもタイムリミットは来てしまう。狩猟の終了だ。
最後の最後で声を掛けた案件。どうやら携帯電話と財布を失くしたらしい。声色がすすり泣きだ。序盤だったらスルーしてたが、時間も過ぎたし付き合ってやることにする。泣きっ面に(ミツ)蜂とはこのことか。違う。
「寒くない?とりあえずコンビニでホットドリンクでも買って飲もうや。」
「とりあえず俺んちも泊まれるよ?徒歩圏内だし。あるいはホテル代出すし。」
案件はついてくる。あれ、これいけるんじゃね?時間過ぎてるけど。
だが無情にも俺の半ケツが震える。電話がかかってきやがった。案件が最後に乗ったタクシー会社に問い合わせをするため、携帯電話を貸していたのが仇となった。その電話をスルーせず呑気にも出てしまう俺は馬鹿だ。そして友達からかかってきたフリでもしてればまだ良かったものの、普通に「見つかったって」と教えてあげる俺は超馬鹿だ。判断力が鈍っていた。酷い言い訳だ。
結局、解散。ラインは教えて帰ってきてるので、後日回収しよう。
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翌深夜。
街のネオンに照らされた雨粒が足元を軽く湿らせる。そんな中、乙女ゲーから飛び出してきたかのようなイケメンたちが続々と集まってきた。
(これもはやイエメン共和国だな。。。)
某家族マート前、俺はそんなアホなことを考えながらビニール傘をさしていた。そんなこんなで参加メンバーが集まり、近くの空間へ移動。
さあ、今宵のダンジョンに一緒に乗り込んでくれる仲間は誰だろう。
ジーク氏。
(なんだこのイケメン!)
軽く打ち合わせをして、ダンジョン赤へ乗り込む。ガンガンと大音量で流れる音楽。けたたましい。やけにのどが渇く。ジーク氏の金魚の糞と化す。
ドリンクで喉を潤そう。ジントニックの炭酸と爽快さが身体を少しクールダウンさせる、なんてことはなく焼け石への水と化す。箱内の赤色のせいなのか。
氏が2人組案件へ声を掛ける。食いつきの熱視線は明らかに氏の方ばかりへ向いている。無理やり会話へ入ろうとする。絵に描いたような非モテ。まさに非モテの権化だ。非モテという概念の具象だ。
1階へ降りる。案件はいつの間にか消えていた。明らかに俺のせいだ。氏へ一言謝る。フロアにはBonJoviの「It's My Life」が俺を煽るように流れてる。うん、名曲だ。
ジントニックはただの氷水になっていた。飲み直そう。氏が頼んだのと同じものを。主体性がない。ロングアイランドアイスティーが出てきた。レディーキラーで打線組んだら4番を張るカクテル。
なんやかんやで何も出来ずに赤から青へ移動。箱内の状況を一言であらわすなら、カオスだ。この音楽は狂騒曲だ。
箱初心者の自分が効率的なムーヴをかませるわけもなく、後半は開き直って乱痴気騒ぎに便乗していた。平日昼間のへこへこした営業マニュアルや上司への気遣い、昨日の疲れなんか全て消し去って、一心不乱に身体を躍動させる。解放しろ。ナンパどころではない。
ふと我に返る。試合終了のお知らせ。まるでヤクが切れたかのような植物状態になる。俺は何をしてたんだ。ふらふらと箱を出ると、朝の清々しい空気と街のカビ臭い空気が肺を満たす。気持ち悪い。オールなんて久しくやっていない。身体にくる。
そういえばホテルを取っていた。目の前にある緑のホテルだ。部屋に戻って、ベッドに倒れ込む。この40時間以内の出来事やら色んな感情やらがグルグルを頭の中を回っていた。徐々に1つの感情が浮き上がってくる。
悔しい。
なんとか寝落ちせず、身体に鞭打ってチェックアウトを済ませる。
外に出ると、まだ雨がパラついていた。
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【反省】
●スト
・基本に立ち返ろう。僕の場合、ガンシカはそもそも認識されていないのでは。認識→声かけの基本を大切に。
・ローラーは出来ていた。トークを磨こう。褒めるトークしかできてないので、もう少しユーモアを交え、且つ多少なりとも強引なトークを。
・スト値を上げよう。食いつきを上げる努力をしよう。脱毛、眉サロンは通えてる。歯医者も通えてる。筋トレも継続できてる。美容院に行けてない。行こう。ファッションとメイクを勉強しよう。
・連れ出し前のグダを崩そう。彼氏、待ち合わせ、予定ガー、帰宅、バイト。定型文でいいからまず猿真似してみよう。
●箱
・まず慣れよう。酒に酔わない、箱の空気に酔わされないこと。自我を保つ。
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【御礼】
たいへん遅くなりましたが、この場をお借りして運営の皆様に深く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。結果は坊主でした。土俵にも立ててない。悔しいの一言です。
また、界隈のみんなは本当にまぶしかったです。一対一だとまともにコミュニケーションできるんですが、複数になった途端に喋れなくなるタイプのコミュ障なんで輪にはあまり入れませんでした。ツイッターなんかのやり取りも、いつも楽しく拝見してます。基本mにいるので、mインが被ったりmインのツイートを発見した際はこっそりとDMにて合流申請させてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
響