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ほとんどおばけ。


夏の夜は怪談話というけれど。こわーい話を聞いたくらいじゃ、この暑さはぬぐえない。
せめて空気が乾いていたらいいのに。この蒸し暑さ。
湿気→暑い→湿気→暑いのループに、恐怖するのはユーレイ、いや、つる草の存在だ。
藪となってからまり、枝の上からおおいかぶさり。刈っても刈っても、また伸びる。
やわらかい茎をしてたくましいのは、どのつる草も同じだけれど、葛はその伸び方、動き方にひるまされる。
接触先を探すかのように先端が揺れる。ほとんど動物っぽくて、じいっと見られてる、気配がある。
窓のむこうには、葛の一大群生地が広がっている。昼間眺めれば、山桜や小楢や杉やらに覆い尽くさんばかりに登り詰め、灰色の無機質な携帯電話の基地局を、緑の着ぐるみに変えている。
フェンスを乗り越えた葛が、道路をはさんで、こちらに触手を伸ばしてくる。夜陰に、さわさわ。みっちりと蒸し暑さに押し包まれるようななかで、葉っぱが動く・・・。ぞっ。
葛の茂みで、虫の音が響き始め、心なしか、今朝は空気が変わった気がする。
恐怖の葛に花が咲き、秋がやってくる。

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