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働く女、毎日が「定時」との戦い。

ピースの小沢あやです。 ポットキャスト番組「働く女と◯◯と。」を始めました。30代共働き育児中の編集者、小沢による働く女性をゲストに迎えたトークプログラムです。番組内容の一部を、noteマガジンでもご紹介します。

初回のゲストは「わたし、定時で帰ります。」などのヒット作で知られる小説家の朱野帰子さんです。作品のテーマとなった「定時」をトピックに語っています。

ワーカホリックな自分と、本当は休みたい自分の戦いから生まれた小説「わたし、定時で帰ります。」

小沢:朱野さん、早速ですが簡単に自己紹介をお願いします。
 
朱野:朱野帰子です。小説家として今年で13年目になりまして、 代表作は今ご紹介いただいた「わたし、定時で帰ります。」。3作あって、このシリーズが代表作だと言われております。主に、労働をテーマにした小説を書いていて女性が主人公であることが多いです。
 
小沢:朱野さんは「女性と仕事」を軸にして、作品を書かれています。ウェブ制作会社を舞台にしたお仕事小説「わたし、定時で帰ります。」のプロット(構想)って、いつ頃書き出したんですか?
 
朱野:2016年ですね。実は、1月に第2子を出産したんですけれども、その出産前日の夜中に最初のプロットを編集者に送って、次の日の朝5時に分娩室に入ったのを覚えてます。
 
小沢:すごい!じゃあ、もうワーキングマザーとしても真っ只中というか、「今から産むぞ!」っていうところでお話の軸や設定とかを思いついて、まとめたっていうことですか?
 
朱野:そうですね。当時は定時で帰る話っていうプロットではなくて、 編集者さんから「会社を舞台にしてちょっと困った人たちの話を読んでみたい」って言われたんです。ちょっとしたたたき台みたいなものを送って、出産に入ったんですけれども。
 

 
朱野:その時までは本当に「働くことが私の命!」みたいな感じで。フリーランスなので、育休もほぼ取らずにガンガン働いてたんですけど、第二子出産を機にちょっとずつ、全力で働きながら、育児も回すことに、ちょっと限界を感じ始めて。出産して、どんどん苦しくなっていく中で、プロットが少しずつ変化していったんです。ワーカホリックな自分と、帰りたい、要するにちゃんと休みたい自分がいるように、両者が戦うプロットになってきました。
 
小沢:なるほど。今は2022年で、私は30代半ば。新卒の時は、やっぱり「会社を出づらいな」みたいな気持ちがあったんですけど、「わたし、定時で帰ります。」を久々に読み返して、そういう時の気持ちを思い出させられたというか。 今はもう「定時で帰っていいんだよ!」って、率先して言わなきゃいけない側じゃないですか。だから、年を重ねるごとに感想とか、視点が変わってくる作品なのかなと思いました。
 
朱野:そうですね。当時、やっぱ新卒から何十年も同じ会社にいる人たちからの反応は、やっぱりかなり極端だったなって思ってます。そんな中でもやっぱり「いや、私は本当は定時に帰りたいんだ」という人からも、反応があって。とか、霞ヶ関を体感した方からお手紙いただいたこともありましたね。
 
小沢:「定時」っていうトピック自体が、かなりいろんな人の心を刺激する話題ってことですよね。
 
朱野:そうですね。定時で帰るかどうかっていうのは、ワーカーホリックの人も、普段から定時で帰る人も、必ず毎日1回は考えると思うんですよ。「 今日の晩御飯何にする?」と同じように。毎日1回は「今日は定時で帰れた!」とか、「今日は帰れない、あるいは帰らないことに美徳を感じる」とか。「定時」をテーマにすれば、 組織で働く人全員が興味を持って読んでくれるんじゃないかっていう計算もあったと思います。

周囲を巻き込まないと、働き方改革は難しい。

小沢:「労働って短距離層じゃないよ、マラソンだよ」って、よく言うじゃないですか、本当に30代になって、ものすごく身に染みてきてるんですよ。
 
朱野:30代で!早いですね。
 
小沢:ブラック企業に勤めたことはないんですけど、どうしても夜や土日とかも稼働が必要だった時期があるので。 最近は「昼間はバランス取ってもいいんじゃないか」とか、結構のんびり考えるようになりましたね。ずっと全力だと疲れちゃうし。もちろん、その自分の裁量関係なく「いなきゃいけない仕事」っていうのも、世の中にはいっぱいある。その分抜くところは抜いて、お願いできることは、人に委ねて……と、適宜バランスを取って整頓していかなきゃいけないなって、すごく感じてます。
 
朱野:そうですね。健康で、ケアしなきゃいけない人がいなくて、誰かがご飯を作ってくれるっていう状況であれば、どれだけ力を最大に しても持つんですけど。まあ、そんな人生うまくいかないわけで。あと、突然健康を害したりとかね。大体40〜43歳くらいの間でそういうことが1度起きると、よく聞きますよね。
 
あと、突然家族の看病の可能性が出てくるとか、そういうことで、すぐ詰んでしまう。もう1つは、ずっと全力で走り続けていると、「学ぶ機会」がやっぱりなくなってくるんです。それがすごく大きくて。30代の頃は、まだいいんですよ。周りから新しいことがどんどん入ってくるから。でも、38歳ぐらいから急に入ってこなくなるんですよ。
 
小沢:ええ!?怖い!!
 
朱野:周りも多分、加齢してくるから。急に情報量がガッて減った時に、早朝から深夜までって働き方をし、ずっと古いやり方で押し通そうとしていくっていうのがすごく怖くて。
 
小沢:でも、それを意識して変えたんですよね。朱野さんご自身も、労働改革というか。
 
朱野:そうですね。「わたし、定時で帰ります。」が出る時に、 定時で仕事を切り上げて、土日は休もうとしたんです。それで随分改革出来たはずなんですけど、よく考えたら有給取ってないなとか、お盆とお正月休んでないなとか考えるようになって。
 
小沢:もっと休もう!となったんですね。
 
朱野:そうですね。だけど、もう仕事量は変わらないので、いかに圧縮して時間を作るかっていう戦いですね。
 
小沢:集中力ですよね。作家さんって一部の業務を外注、みたいなのももちろんできないわけですし、 仕事の取捨選択とか、ご自身の中の効率化みたいなとこになりますよね。労働改革するってなると。
 
朱野:まず「どんな仕事を請けるか」から始まるなって、最近は思っています。ビジネスパートナーを誰にするか、チームをどうするかとか。自分だけが土日休んで、 自分だけが18時に仕事をやめたとしても、 誰と組んでいるか、どういう働き方をしてどんな仕事のやり方をする人と働くかで、自分にはアンコントロールな理由で仕事ってババッと増えてしまう。今は、1人だけで頑張って働き方改革することに限界を感じているところなんです。
 
小沢:なるほど。私は、外部のクリエイターさんにお仕事をお願いする立場ですけど、最初の面談の時点で「育児があるので、何時から何時はレスが遅くなります。その分、合間に作業してることが多いので、こちらから夜にメールしちゃうことはあるんですけど、通知オフに するか、逆に連絡してほしくない時は事前に言ってください」みたいに、結構一緒に働く前に擦り合わせをしています。朱野さんは、その辺って宣言とかされていますか?
 
朱野:直接言いづらいからnoteに「私はこういうスタンスです」って書いていて、仕事相手の方もなんとなく読んでくれていますね。編集者さん側も、だいぶ働き方改革が浸透してきてはいますね。昔みたいに、夜2時に原稿を私が送ったら、4時にリプライが来る、みたいなのは減りました。仕事のやり方というか、 どういうスタンスで仕事に向き合うかっていうところが大事かなと。

続きはポッドキャスト番組「働く女と◯◯と。」でお楽しみください。毎週水曜日更新予定です。

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