冬の魔法



二人で寄り添う理由を 冬のせいにできていたうちは
一緒にいることの意味なんて 探す必要もなかった
「寒いね」と白い息を吐けば
何でもわかりあえるような気がした

赤くなった鼻先や指先
まるまった背中
あたたかいコーヒー
ぜんぶ、おそろいで
それだけで僕は君にとって 特別みたいに思えたんだ

これから街は春の歌であふれかえって
桜の開花予想がはじまって
人波もどこか穏やかに流れていくんだろう
そして君もその中に紛れて 
何もなかったようにどこか遠くへ行く
僕だけがたどり着けないところへ

それでもいいんだ
また巡りくるこの季節のなかで また会えるなら
記憶のなかだったとしても また微笑んでくれるなら

理由もなく待ち続けるよ
冬の魔法にかかったふりをして 
ずっと、待ち続けてるよ

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