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関係データベース:計算理論を変えた革新/エドガー・F・コッド Edgar Frank "Ted" Codd (1923-2003)

いくら新しいタイプのデータベースが増えているといっても、リレーショナルデータベースは現代のITシステムに欠かせない。1970年にIBMでその理論的基盤である関係データモデルを発明したのがエドガー・F・コッドである。

といいつつ、自分は関係データベース以前のことが全然わからないことに気づく。データベースというものはあったはずなのにそれはどういうものだったのか。それだけこの発明はすべてを塗り替えてしまうものだったのだろう。


はじめに

イギリス生まれのこの人物は、コンピュータ科学の歴史を大きく転換させた存在として知られている。関係データモデルという斬新なアイデアを提唱し、今日のデータベース技術の基盤を築いた。

少年時代と初期の関心

1923年、イングランド南西部のドーセット州に生まれた。幼い頃から数学とパズルが好きで、同世代の少年たちよりも計算や論理的思考に強い興味を示していた。第二次世界大戦中はイギリス空軍に勤務し、そこで培われた緻密な思考力が後の研究に影響を与えたと言われている。

アメリカへの渡航とIBM

戦後、オックスフォード大学で数学を学んだのち、アメリカに渡ってIBMに入社した。ここで大型コンピュータの研究開発に携わり、データ処理や情報管理に強い関心を抱くようになった。1950年代から60年代にかけて、IBMはコンピュータ産業を牽引しており、その最先端の研究現場に身を置いたことが新たな概念を生む土壌になった。

関係データモデルの提唱

1970年に発表した論文「A Relational Model of Data for Large Shared Data Banks」は、データベース設計の世界に革命を起こした。従来の階層型やネットワーク型のモデルでは複雑化するデータを扱いきれない課題があり、この人物の関係データモデルはテーブル同士の関係を論理的・数学的に定義することで、より柔軟な操作を可能にした。
このモデルをベースに開発されたSQLなどの技術は、OracleやIBM DB2、さらにはMySQLやPostgreSQLなど多くのデータベースシステムに浸透している。関係データベースといえば、今やITシステムに欠かせない存在であり、その起点となった論文は歴史的価値が高いと評価される。

さらなる研究と評価

1981年にチューリング賞を受賞し、「関係モデルの父」という称号を得た。以後もIBMで関係データベースの研究を続け、データの正規化や高水準の問い合わせ言語に関するアイデアを提示した。
1980年代には12のルールを示して、関係型データベースに必要とされる要件を明確に定義した。これらの概念が後の商用データベース実装に多大な影響を与えたことは周知の事実。

人柄とエピソード

研究室では常に「論理が最優先」という姿勢で後輩や同僚を指導し、理論的に一貫しない仕様には強く異議を唱えたという。妥協を許さない性格ながら、周囲に対してはユーモアを忘れない一面もあったようだ。

後年と遺産

IBMを退職した後も、大学や研究機関で助言を行いながら新たなデータ管理の方向性を探り続けた。2003年にアメリカでその生涯を終えたが、関係データベースの基本理念は今もクラウドやビッグデータの時代に受け継がれている。
「関係」という単純なキーワードで巨大な情報を整理し、世界中のシステムの基礎を築いた功績は計り知れない。多くのエンジニアや研究者がその理論的枠組みに恩恵を受け、ネットワーク社会を支える要となる技術に育っていった。生涯を通して探求し続けたデータの本質への問いは、これからのコンピュータ科学にとっても永遠の課題といえる。


マガジン

前回の記事

参照

https://en.wikipedia.org/wiki/File:Edgar_F_Codd.jpg#file

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