実存のパラドックス—生きづらさの源泉とは—
もっとも手に入れたいもの(X)こそ、すなわち、もっとも手に入れることの困難なものである。
例えば先天的な身体障害のため不妊を宿命づけられた女性がいたとする。この女性はおよそ理想的なパートナーにも恵まれ、金銭的にも環境的にもなに不自由ない結婚生活を送っている。さて彼女の唯一の望みは愛しいパートナーとの愛の結晶である子供を儲けることである。しかし彼女にはそれが叶わない。彼女の絶望の源泉はまさにそこにある。叶わない望みだからこそ、もっとも強く希求してしまう。一見して矛盾めいて見え